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いのちの歌〜ハッピー・ママ

夏のある日、母は通っていた合唱教室から帰ってくると、1枚の楽譜を見せてくました。それで珍しく、母はちょっと真面目な話をしました。

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「今日はね、新しい歌を習ったの」と言いながら、ママが見せてくれた楽譜は「いのちの歌」。
この歌はNHK朝の連続ドラマの挿入歌で、ちょうど私もじっくりと歌詞を聞いてみたいと思っていたところだった。グッドタイミング。

数日後、CDを買ってきてママと一緒に聞いた。するとママは静かに語りだした。

ママ
「最近はこういう歌詞、多いわね、昔はこんな歌はなかったのよ。」

「いのちの歌」は生きていることの意味とか、今ここに生かされていることへのありがたさとか、命への感謝を歌っている。

ママ
「命ってなんだろう?そんなこと言われても、訳がわからなくてね。子供の頃、『戦死する』という言葉を聞いて、あの時みんなで「頑張ってきてくださーい!」って見送った兵隊さんが、肉体的に死んだという事しかわからなかった。

命の意味は教えてもらわなかったわ。命なんて、なぜ生まれてきたかなんて、そんな難しいこと、考えた事はなかった。今、ここに、ただいるだけ、という感じだったわ。

朝起きればご飯を食べて、さぁ、遊びに行こう!って、ただそれだけだった。朝から近所の友達が誘いに来るから、ご飯もそこそこに出かけて行ったものよ。」

ママ達は近所の川でパンツひとつになって泳いだり、山に探索に行ったりしたそうだ。のどかな風景が浮かぶ。

「もし、昔にこういう歌を習っていたら、人の命の大切さを少しは意識したかもしれないけれど、当時は意味もわからず『兵隊さーん、ありがとうー🎵』って歌っていたわ。

教育とか家庭のしつけとか、どんなに大事なものか、この年になってようやくわかったわ。」
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特別な出来事の話ではありませんでしたが、私の心に残った母の話のひとつです。さて、話し終えた母は、さぁ生きている今を楽しむぞー!という感じで普段の楽しい母に戻りました。
いのちの歌
(作詞 竹内まりや 作曲 村松崇継)
https://youtu.be/avPCGPgDOBY?si=Qykp7GNGsUnNhuQr


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