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【中国-6】深圳・娜塔莉亚女仆咖啡厅~華南で北海道を思い出す~(第36回)
イノベーションとマガイモノの街で
近年では❝紅いシリコンバレー❞とも称され、中国の技術革新の象徴とも言われてきた先進都市・深圳。広々とした街並みには数多くの高層ビルが林立し、場所によっては香港以上の発展を感じさせるエリアもあります。
一方で、昔ながらの中国製品あるいは偽物の多くも未だこの街で産み出されており、良くも悪くも現代中国の縮図が見られる街とも言えそうです。1980年代に改革開放政策が始まる前までは、人口わずか3万人の漁村であったというのも驚き(2022年現在の人口は1300万人)。
信じがたい速度で発展した都市・深圳にもメイドカフェがあります。2019年にオープンした『娜塔莉亚女仆咖啡厅』で、市内中心部に位置しています(2024年追記:現在は『深圳大学』付近に移転)。
香港・深圳と広州を結ぶ「広深港高速鉄道」が開通し、ますますアクセスが便利になった深圳。先進と混沌が共存するこの街のメイドカフェを早速見てみましょう。
見た目はやっぱり普通のマンション
移転後の娜塔莉亚女仆咖啡厅の最寄り駅は、地鉄2号線の「深大」。駅からは徒歩約15分弱です。香港からのエクスカーションとしては、先述した広深港高速鉄道の他に香港MTR東鐵線を利用し、羅湖、福田の各口岸(出入境検査場)から入る方法もあります。が、あくまでこのお店をメインの目的とするなら、少し運賃が高くても高鐵を利用し福田駅で下車するのがおススメ。
何しろ、お店は深圳市の比較的西側に位置しているので、香港MTRと深圳地鉄の組み合わせで東側から入境するのでは市内移動の時間が長すぎます。一方の高鐵なら、乗車前の待ち時間はあるものの移動は福田駅までたったの15分なのです。
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外観からは商業的要素が全く見られないので、正解だと思っても入るのに少し勇気が要りました。
3階に到着すると、英語で『Natalia Maid Cafe』と書かれたドアがありました。「明天見(明日会いましょう)」というプレートが掛かっており不安を煽られますが、呼び鈴を押すと普通に女の子が出迎えてくれました(笑)。ありがたいことに、この日いたメイドさんには日本語が通じました。
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一瞬打ちのめされそうになりますが、営業時間内なら一応呼び鈴を押してみましょう。
店内は小さくも個性的でした。客席は大きく2つの趣旨に分かれているらしく、一つはテーブル席、もう一つはゲーム部屋。ゲーム部屋は大・小、さらに中国らしい麻雀室もありました。値段設定としてはテーブル席→麻雀室→ゲーム部屋の順に高くなっていくみたいです。
私はテーブル席(麻雀もゲームも詳しくないのでね)に座りましたが、壁には色々な日本漫画(エヴァ、I's、カードキャプターさくら、ワンピース…)の一シーンがでかでかとプリントされており、インパクトが凄い。メイドさんあるいは経営者の趣味嗜好までが伝わってくる勢いです。
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キャラクターが発する台詞は全て中国語。色んな漫画が翻訳されているんですね。
この日のメイドさんは2人。うち、応対してくれた日本語ができる子に色々話しかけてみました。やはり日本のサブカルに精通している様子。
嵐(相葉君推し)を応援しており、オフィシャルのバッグやキーホルダーを見せてくれました。今度北京で開催されるライブにも行くと、嬉々として話していました(余談ですが、このライブはコロナの影響で中止に…)。他にもAKB48のファンだと言っていましたが、「AKBの全盛期は中学生の頃で、ライブがあっても来日できなかったの」と残念そうに語っていました。
ちなみに、これまで札幌、東京、福岡へ来たことがあるとのこと。年齢が若いことも考えると、一般的な中国人よりは旅行経験が多そうです。彼女の口からは長澤まさみ、戸田恵梨香、新垣結衣の名前が発され、ドラマもよく観ていると言います。なかなかの親日家のようです。
一旦はここで途切れてしまった彼女とのトークだが、後に私は「中国で見かける機会が稀有なあるモノ」を発見。再び会話が続くこととなりました。
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ところで、「元气の餐蛋面」とは(簡体字では面は「麺」の意味)? 値段は意外と安めです。
北海道の美味しさは天下一品です
「じ、じゃがポックルだあ…!」注文したオムライスを食した後、ふと周りのテーブルを見渡すとまさかの北海道名産、カルビーの「じゃがポックル」があるではありませんか…! 驚きのあまり、思わず声を上げてしまいました。だって、ここは北海道のメイドカフェ、日本のメイドカフェでもありません。中国のメイドカフェなんですよ。
「これ大好きなの♪」と笑顔を見せたメイドさん。私が欲しがっているように見えたのか、気前良く一袋を私に差し出してくれました。何か物乞いみたいになって申し訳ない…、しかし中国でじゃがポックルを食べるのは貴重すぎる経験、ありがたく頂戴します。
お礼として、今度ここへは北海道土産を持参したいものです。聞くとこのじゃがポックル、「淘宝(タオバオ=中国の通販サイト)」で購入したものらしいです。何もかも売られていると噂のサイトですが、本当にそうなんですね。
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勿論メニューにはありません。
彼女は北海道のお菓子についても博識でした。旅行した時に知ったのだでしょうか、「白い恋人」は当たり前のように知っており、ルタオのチーズケーキ、果てはややマイナーな部類に入るクッキー「札幌農学校」まで存じ上げていました…。下手な日本人より詳しいんじゃないでしょうか?
私が北海道出身だと告げるとさらに話は盛り上がりました。この時ほど自分の出身地に感謝したことはありません。
買い物の話になったので、気になる中国の支払手段にも聞いてみることに。今、中国では「支付宝」(アリペイ)や「微信支付」(ウィーチャットペイ)などのスマホ決済が主流になっており、現金を持ち歩く人が減っていると報道されています。彼女も現金はサブ的な支払方法にしているのかしらと思っていると…「財布は持ち歩かないよ!」と。予想以上の答えに一瞬言葉を失いました。
私が料金を現金で支払う際には「お札久しぶりに見た」とも…。つまりこれは、大きな買い物から日常の買い物まで、現金を必要とする場面が全くないことを意味しています。中国恐るべし。もっとも、日本がこの分野で世界に大きく後れを取っているとも言えますが。
なお、「自分がいくら持っているか心配にならない?」と聞くと「大丈夫。定期的に残高チェックしているから!」と答えてくれました。日本も徐々に、こんな時代にシフトしていくのでしょうか…? 奇しくも中国指折りの先進都市・深圳で「先進的な決済事情」を耳にし、ゲーム部屋へのオタクさんの来店で賑わい始めた辺りで店を後にしました。思いのほかコミュニケーションが取れ、個人的には大満足!
さすがに、このメイドカフェでも日本語が話せる子は限られているらしいです。彼女がいる時間帯にあたったら日本人としては僥倖と言えるでしょう。100元紙幣を珍しそうに見ていましたが、基本的に現金払いでも問題はないようです。但し、現金が流通していないということは、手持ちのお釣りも限られていることを意味します。支払手段が限られている我々外国人は、できるだけ細かいお金も用意してから来店した方が良いでしょう。
★お店の情報★
アクセス:地铁深大駅E出口徒歩14分
住所:深圳市南山区科技园社区科智西路5号科苑西25栋A618室
営業時間:平日14時~22時 土曜・休日12時~22時(訪問当時)