うちの犬がお散歩に行けるようになるまで
うちの犬4匹、トイプードル、ポメラニアン、パピヨン、ヨークシャテリアはブリーダー引退犬だ。
何年も狭いケージの中で過ごし、名前も無く、誕生日もわからず、人の愛情も知らずに育った。
縁あって4年前にうちにきたときは、
戸惑いの連続だった。
その一つが散歩だ。
犬というものは、お散歩が好きな生き物だと思っていた。
だがそれは思い込みだった。
まず外に出たことがないから、外の世界が怖いのだ。
未知なるわからないものは、不安で怖い。人間も動物も同じだ。
得体の知れない、広大で眩しい世界。
風の感触、海の匂い、木の葉が揺れた音だけで飛び上がって驚く。
後退りしたり
全身をブルブル震わせて、固まっている。
地面に伏せるように全身でボイコット。
尻尾は下げて丸め込んでいる。
4匹ともに恐怖をそれぞれ表現していた。
それが1日目。
2日目は土の匂いをクンクン嗅いで、何歩か移動できた。
4匹もいるから、順応力が高い子もいれば、なかなか外に慣れない子もいた。
雨に濡れるのも怖い。強い風の日も怖い。私の靴の足音も怖い。リードが絡まるのも怖い。車が怖い。
ただ幸いだったのは、4匹とも、人間が大好きだったこと。
厳しい環境で育ちながらも、人間からの暴力は受けていなかったようで安心した。
皆われさきにかまってアピールがすごい。お散歩中にすれ違う人に近づいていく。
人間なら誰でもいいのか、
とこちらがショックを受ける。
犬好きの人が
「かわいいね」
と、うちの子を撫でてくれると親バカみたいに嬉しい。
うちのわんこ達も笑っている。
定期的にお散歩を地道に続けた。
そのうちに
外が怖くないと知った。
人間がいつもそばにいることも知った。
毛が風になびいても怖くなくなった。
土も砂利も草の上も、平気で歩けるようになった。
ポメラニアンとパピヨンは、草むらに顔を突っ込んで匂いを嗅ぎにいく探索系。
顔にひっつき虫のお土産をたっぷりつけてくる。
ヨーキーは普段は自己中なのに、お散歩の時だけは人間を気にしながら、歩くペースを常に合わせる。
ボイコットしていた同一人物と思えない。
トイプードルはステップを踏むように軽やかに楽しそうに歩く。
容赦なくカラスを追いかけて逃げられる。
お散歩のリードを怖がっていたのが嘘のようだ。
みんな尻尾が上がるようになった。
トイレもできるようになった。
何度も歩いて、お散歩を楽しいと思えるようにやっとなれた。
ようやく犬らしい楽しみがひとつ増えた。
私も、犬の賢さと、順応性の高さを学んだ。
私もうかうかしてられない。
人間なら、彼らの方が年上なのだ。
これからも楽しいことを一緒に見つけていきたい。
お散歩から帰ってきた直後の玄関先にて、足拭き待ち