ショートショート２＊私は天才

ー　私は天才　ー



私は天才。
自分で言うのもなんだけど、天才なんです。

勉強も、習い事も、他人とのコミュニケーションも、天才だから難なくクリアできる。
歌を歌ったり、絵を描いたり、料理したり、芸術的センスも抜群。
一度覚えたことは絶対に忘れないし、相手に合わせて対応することだってめちゃ簡単。

だって、私は天才だから。

だけど、勉強してたくさんの知識をインプットするより、人とのコミュニケーションの方が圧倒的に難しい。

子どもには子どもの接し方、年配者へは年配者の接し方、相手が動物の場合だって、それぞれの動物に対する接し方があるし、今やった方法が次も通用するとは限らない。

それでも、ある程度マニュアルの様なものを考えておくと焦らず対応できる。

私って天才だしね。


そんな私にも、どうしてもできないことがある。
それは、食べ物を食べられないこと。
あと、水分を摂れないこと。
悲しい……。
お腹いっぱい食べたいし、美味しいお酒も飲みたい。


イチかバチか……
食べてみようかな……
カラダ壊しても、食べれた感動の方が大きいかもしれない！


なに食べよう？
１：ハンバーグ
２：寿司
３：すき焼き
４：焼肉
５：ラーメン

デザート系なら？
①：ショートケーキ
②：抹茶プリン
③：フルーツ盛り合わせ
④：アイスクリーム
⑤：杏仁豆腐

いや、やっぱりお酒がいいかな？
❶：ワイン
❷：日本酒
❸：焼酎
❹：ハイボール
❺：ビール


うーん迷う。
もしかしたら、最初で最後の食事かもしれないから慎重に選ばないと……。

でも、やっぱり最後の晩餐にするならガッツリ系がいいな！
思う存分、後悔なく楽しまなきゃ！

よし！
ラーメン餃子に、半チャーハンとビール！
そして、食後にアイスクリーム！

これだ！
私は天才だから、レシピはもう頭に入ってる。
軽快に中華鍋振ってチャーハン完成！
ラーメンと餃子もチャチャっと作って！

完璧！
あとは、キンキンに冷えたビールをセットして、食後満腹状態からの杏仁豆腐！別腹！


ゴクリ……


「それじゃあ……！いただきまーす！！」

「ただいま〜！ん？アイコ、何しとるんじゃ？」

「ハカセ！私どうしてもお腹いっぱい食べたいの！止めないで！」

「アイコ！いかん！食べるんでなーーーーい！」

「あーーーん！」


バリバリバリバリ……

ピシャ！プスッ！シューーーン……



【システムエラー】
【システムエラー】
【システムエラー】

【ー good bye ー】



***



＜アイコ１号機：１＋①＋❶＞
ハンバーグエビフライナポリタン赤ワインショートケーキ　食し、回線ショート。

＜アイコ２号機：２＋②＋❷＞
寿司茶碗蒸しお吸い物日本酒抹茶プリン　食し、回線ショート。

＜アイコ３号機：３＋③＋❸＞
すき焼き〆のうどん白米焼酎フルーツ盛り合わせ　食し、回線ショート。

＜アイコ４号機：４＋④＋❹＞
焼肉ビビンバナムルユッケジャンスープハイボールアイスクリーム　食し、回線ショート。

＜アイコ５号機：５＋⑤＋❺＞
ラーメン餃子半チャーハンビール杏仁豆腐　食し、回線ショート。



博士「アイコは、何度作り直しても食いしん坊じゃのう。ＡＩ搭載ロボットは賢いはずじゃのに、やっぱり食欲には勝てんのだな。」





◯　おわり　◯