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重陽の節句

9月9日は重陽の節句…
一年前に「今日の短歌」でよんだ歌はこちらです。


「枚方の小春日和の菊まつり」
ちちはは想う 重陽の宴


重陽の節句に菊酒をたしなむという風流は、この短歌をよむ時まで知らなかった。


9月9日は、旧暦なら10月中旬頃…

「ああ、あの頃はちょうど『重陽の節句』の頃だったのか…」
と懐かしく思い出したことがある。



昔住んでいたアパートの大家は農家だった。
土のついたネギやにんじん等の野菜をよく玄関前に置いてくださった。
駐車場は、農地の一部を簡単に整地したような土だらけの場所。
秋になると駐車場には、「イガのついた栗」がたくさん落ちているものだった。
都会近くなのに驚くほど田舎なその街が大好きだった。
実家周辺よりも自然を感じられる、そんな地域だった。


私のアパートによく来ていた母は、いつも夕餉の支度をしてくれた。
ある日のこと、ご飯茶碗を見て驚いた。
「うわー!」
黄色い大きな栗がゴロゴロ入ったご飯に私は歓声をあげた。
いつのまにか母は、栗拾いをしていたのだ。
私の知らない間に栗を拾い、栗をむいてくれて…
その頃の私には、その手間暇に心を馳せる余裕などなかった。ただ、美味しく食べただけ。

「栗ご飯」を食べたあの頃は、今思えば、ちょうど旧暦の「重陽の節句」の頃だったのかもしれない。
それから、しばらくして両親と「枚方の菊まつり」に旅もした。

何気ない日常の一コマ一コマ。
それが今となっては特別な映画のワンシーンのように心によみがえる…

戻ることはできない、かけがえのない時間が懐かしい。

現実生活の悩みはあるけれど、
後から思えば、それもいつかは夢のようなものと思えるかもしれない。

ここからの一瞬一瞬を大切にしていこうと心に思った。



あの時の感謝を込めて、旧暦の「重陽の節句」の頃には、
「菊酒と栗ご飯」を供えようか…

充分には伝えられなかった
「ありがとう」を込めて…

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