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別れと出会いとラーメンと〜四国遍路日記 4日目〜

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遍路中、鍵なしの部屋に泊まる場面が度々あった。

その場合、大抵おじさん(日によってはお兄さん)と近くの部屋である。

そもそも、女性の遍路はあまり居ない。


女子大生1人旅、周囲からその辺をかなり心配されたが、

まぁ、それでも気にせず過ごした。


少なくとも、私は無事だった。




朝ごはんを食べた後、宿のお手伝い開始!

皿洗いをし、ゴミを出しに行き、シーツを外し、布団を干し、ゴミ箱のゴミをを回収し、掃除機をかける。

4部屋の掃除を終え、残るはドミトリーのみ。

ドミトリーにはアメリカから来た真言宗のお坊さんが宿泊していた。

朝になっても爆睡していた為、後回しになっていた。

大将が起こしに行った。


その後ドミトリーの掃除を終えた後、大将とお姉さんがアメリカ人のお坊さんを見送っていた。


最後に自分の荷物をまとめて、もうすぐ出発。給料を手渡しされた。

「これですだち庵卒業生だからね」

すだち庵卒業生は次回以降の宿泊が無料(働くことが条件?)になり、年末年始に一緒に過ごせる権利が得られるとのこと。(※すだち庵は年末年始休業する)

特典を利用する予定は当分無さそうだが、ここまで遍路をしてきた時間自体がいい思い出だ。


すだち庵は来年、改装工事をするらしい。



改装後のすだち庵を見る機会はあるのか。

もしその機会が来たとして、私はどんな状況なのだろうか?



10:00になり、地域猫2匹に見送られ、車に乗り込み出発した。

すだち庵の外観


すだち庵から街中に出るまで、大体1時間くらい車を走らせなければならないらしい。

山と川と紅葉を眺めたり、雑談したりしながら、車に揺られる。


灰色の雲が山を覆っていた。

「今日は雪がふりそうだね。今日の宿泊者は大変だ」


私が焼山寺を超えた時は雨が降っていたが、雪が降らなかっただけ運が良かったのかもしれない。

ヤマザキパンのコンテナが林の中に打ち捨てられていたり、サンタさんのかかしがあったりした。

サンタさんと子供たち。全部かかし。とてもデカい。
かかし広場「ゆめの里」って名前らしい。
車内より


1時間後、大日寺に到達した。

道路がすぐ近くに


のんびり歩き遍路であれば、この辺りで一泊する程度の距離がある。


すだち庵の大将とお姉さんはこれから宿泊者の荷物送迎サービス対象の宿に荷物を届けにいくらしい。

別れを告げて、車を降りた。

少し歩くと川



納経後、遍路道を歩いていたら、学校の横でプラバケツを持った仙人が居た。

トングを使ってゴミを拾っている。


「こんにちは」

「こんにちは」

「深山さんですか?」


仙人は含み笑いをしながら、聞いてきた。


「どこの宿に泊まった?」

「すだち庵です」

「……歩き遍路さんだよね? 多分歩いていたらこの辺が痛くなってくることがある。(膝裏を指しながら)」


話が微妙に噛み合わない。

話を逸らそうとしている感じがする。


重ねて

「ここを押すと良くなることがあるよ(膝裏を押しながら)」


そんな会話をした後、私は先に進んだ。


しばらく歩き、に着いた常楽寺に着いた。

銀杏の葉がいっぱい


黄色く色づいた木々が印象的だった。

境内の雰囲気は入り口と違う。



納経後、階段を下ると車遍路中の夫婦に声を掛けられた。

逆打ち中らしい。

「女の子1人なんて心配だねぇ」

そんなことを言われた。

「一応、防犯ブザーとか持ってますし、おじさんの車接待は原則断ってますし……」

なんてことを言っていたら、

「そっち方面でも心配だけど、それだけではなくてな、これから太龍寺とかに行くだろう? ここに来る前にイノシシの穴を見かけたから、若い女の子がイノシシに出くわしたら危険だよ」

遍路に来る前に色々と事前に調べた時、イノシシ云々の話は多少見かけていた。

「四国には熊は少ないがイノシシに気をつけろ」

「11月下旬〜12月上旬はイノシシの発情期で出会ったら一貫の終わり」

こんな話をネット上で見かけていた。


イノシシ、改めて忠告されると恐ろしい。

焼山寺に向かった日は熊よけ鈴に加え、動物対策に歌いながら登山した。その日は人間以外の動物に出会わなかった。


すだち庵にて、音楽をガンガンかけながら登山すれば熊・イノシシよけになるとか言ってたし、人の気が無ければまた歌いながら登山か……?


そんな事を考えながら軽くお話しして車遍路の夫婦と別れた。


先に進もうとしたら、カメラを持った女性に引き止められた。

「すごーい! 若い女性のお遍路さんだ!」

めっちゃ写真を撮られた。

私のスマホでも写真を撮ってくれたが、写真写りが悪すぎてなんとも言えない気分になった。

……いいのか? 写真をいっぱい撮ってるけど、こんな写真でいいのか?

内心そんな事を考えながら被写体を引き受けていた。

ありがとうございました!

カメラを持った女性と別れようとしたその瞬間。


目の前で車が停車し、先程の夫婦が現れた。

「この先、遍路を続けたら愛媛県にくるよね?」

夫婦のうちの男性側が車から降り、名刺を渡してきた。

名刺にはそのように書かれていた。

『今治****大学 講師』

(※今後、この人は何度か再登場する)


「仙遊寺の近くに来たら、連絡してください。また会いましょう」

再び、車遍路の夫婦と別れた。


少し歩くと国分寺に着いた。

仁王門に菊の紋がある。

「聖武天皇勅令所」と書いてある。ゆかりの地かなんかだろうか。



国分寺を出た後、すだち庵でおすすめされたラーメン屋に向かう。

遍路道から少し外れるが、16番札所 観音寺のすぐ近くにある。

道に迷いそうになりつつも、13:40辺りで到着した。

大将から勧められたラーメン屋


何も考えずにテキトーに注文したら豚骨ラーメンが出てきた。

チャーシューが2枚乗っている。



今までの人生で食べてきたラーメンの中で1番美味しかった。

肉が美味しく感じる魔法は継続中である。

普段、スープは残す派だが、全部飲んでしまった。


徳島ラーメン、想像以上だった。


食べてる途中、店員さんがやってきた。

「お接待で料金を支払って頂いた方が居ましたので、代金は不要です」


徳島ラーメン580円分のお接待を受けた。

慌てて納め札を渡しに行った。常連っぽいおじいさんだった。

「十三八」で「とみや」と読む。



ラーメン屋を出ると、目の前で車が止まった。

飴玉を握らされた。

おじさんよ……飴玉、持ち歩いているのか?!



観音寺に到着し、納経する。

たぶん遍路中屈指の地味な……いや! そんな……あれ? 検索しても別の寺がヒットするぞ?!

札所だと69番も観音寺、徳島市内にも別の観音寺がある。


遍路界隈で食事が美味しいことで有名な宿、鱗楼の隣を通り過ぎる。

この宿、遍路結願後にもう一度泊まりに来た人が居るとか居ないとか。

この先、「食事の美味しい宿と言えば鱗楼」と度々耳にするのだが、食事が美味しいという噂だけが独り歩きしている印象すらある。


少し歩いて井戸寺に到着。

朱色の山門が印象的。

納経所でおまんじゅうを貰った。

お接待とのこと。

井戸寺で納経後、16時を過ぎた。
このまま歩くと日が暮れる。

バスに乗ることにした。

和田北 16:38 → 元町 16:55
◯徳島バス神山線 240円

これを目指してバス停まで早歩きで向かった。

遍路道を外れてGoogleMapのお世話になる。


バス停到着。


またもやギリギリになってしまった。

バスを使うにも関わらず。



4日目にして、私は薄々勘付き始めた。

遍路やってるじじい達は化け物揃いなのではないか?

巷で入手できる遍路プランニングは
日常的に運動する健脚(※市民ランナークラス)向けのやつなのではないかと。

自分は健脚だと思っていた。


それに対策しまくったので、膝痛や水ぶくれのハンデも少ないだろうと思っていた。


甘かった。


所詮、中学から大学まで文化部、運動部歴2ヶ月、趣味で散歩、たまーに登山、それも遍路で歩く山々と比較すれば、整備されててとても楽ちんな登山程度しかやったことない奴の足などたかが知れてた。


1日20km歩くなんてその時点でおかしい。


そして、自分は歩くのが遅いらしいと自覚した。


早く歩くのと遅く歩くのだと、同じ時間であれば疲労度は変わらないらしいという話を見かけたことがある。


早く歩こう。


そう思うのだが、これは遍路終盤まで何度も付き纏う問題となった。

徳島駅近くに到着。


本日の宿、ホステルPAQに到着する。

本日の宿はドミトリー

宿泊3500円。安い。


当時キャンペーン中で、5000円分のポイント(※使用期限1日な上、使用可能店舗は限られる)が貰えるという錬金術状態だった。

それを差し置いても遍路中に泊まったドミトリーの中でも良い方の宿だった。

そもそも、あんまり良くない宿自体そんなにないのだが。


ネット上で酷評されてる宿は大抵コロナ禍で潰れている。

同時に評判の良い宿もコロナ禍と宿主の寿命で潰れているらしいが……。


「洗濯400円、乾燥機300円」

洗濯機の前で、私はしばらく悩んだ。

やっぱり、実質2500円貰える時点でおかしかったんだ……。
(そんなことない)

周辺のコインランドリーを調べたが、同じ値段だった。


洗濯をしない選択をした。

近くのコンビニでショーツを追加で買った。

下着を買うときに、例の5000ポイントを使用し忘れた……。

てか、今思えばリュックの中のサニタリーショーツでよかった気もする。わざわざ買う必要なかったかも。

服自体は部屋着兼行動着で2セットある。靴下も3セットある。手拭い等は計4枚ある。

サポートタイツとジオライン(※アンダーウェア)さえ諦めればなんとかなる。

スポーツウェアは優秀なもので、1日汗かいても、におわなかった。もういいや。

うどん屋で夕飯

気を取り直して、うどんをタダにした。

勢いで、ホテルサンルートの温泉にも行った。
タダにはならなかった。(※ポイント使用対象外)

さて、ポイントが大量に余っているが、使い切れるのだろうか。
(残り4340円相当)

とか書いたけど、実は初日に5000ポイント消失してるんだけどね!

十楽寺公明会館でも5000ポイント貰えたけど、使用できる店舗が遍路用品店しかなくてな!! 

(初日の霊山寺で菅笠を買わずに2日目にスモトリ屋で菅笠を買えばタダだったかもしれないが、そんなの知るか。)

まぁ、2日目の損失はこの時点でも十分すぎる程に取り返せてるし、まぁいっか。


◇プランニング◇

すだち庵→13
◯車接待
14→15→とみやで昼食→16→17

(→和田北バス停
和田北 16:38 → 元町 16:55
◯徳島バス神山線 240円
元町バス停)

→【ホステルPAQ】


☆本日の歩数☆

23890歩


*本日の出費*

すだち庵給料 -2500

ラーメン 580
お接待 -580
うどん 660
Regionペイ -660
ショーツ 490

交通費(バス)  240

納経 1500
賽銭 75

温泉 1000
宿 3500 (ホステルPAQ 簡易朝食付き)

計 2885


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