テレビのつまらなさは、カット割りの多さ!②
カットと長回し
前回、日本のテレビドラマは海外に比べて、カット数が多いと説明しました。
カット数が多いと画面に疾走感を出すことができます。緊迫した雰囲気でパッ、パッ、パッと画面が切り替わると、息つく暇もないって感じが出ますよね。
また、短い時間で画面が切り替わるので、視聴者を飽きさせない演出もできます。
一方、カットの少ない長回しは1台のカメラで長い時間撮っていく方法です。ニュースの中継や映画『カメラを止めるな』などがその例です。
こちらはカメラが1台なのでどうしても画替わりがしていないような気がして、人によっては退屈に感じます。その分、役者を追って自由に動けるので、役者の動きの幅も広がります。
演出で魅せろ!
では、今よりカット数が少なかった昔のドラマは退屈だったといわれれば、決してそんなことはありません。カット割りができない分、演出やカメラワークで視聴者を飽きさせない工夫をしていました。その例をいくつか紹介します。
まずは、演出の例として、『ショムニ』シリーズ。ドラマを見てもらうのが1番ですが、一応説明させてもらいます。
『ショムニ』は会社の厄介者たちが集まる「庶務二課」に所属する女性たちが、社内で起きる事件を解決していくコメディドラマです。
・エキストラの使い方がうまい!
主人公たちを目の敵にする部長と小間使いがいつも部長室でこそこそ話をしていますが、他の社員であるエキストラもガラスにべったり張り付いて、その様子をのぞくシーンが度々あります。
また、渦中の人とすれ違ったあと、一列になって順番に振り返るとか、タイミングを合わせて視線を向けるとか、エキストラにもおもしろい演技指導がされています。
・計算された構図
ショムニは厄介者が集うところとされ、主人公たちの性格も決して良いとは言えません。
しかし、事件を解決して一言決めるところなどは、モデルのような立ち姿で各々の決まりポーズをとる、まるで戦隊ヒーローを彷彿とさせるカットがよく出てきます。
私が感動したのは、主人公はよく脚立に乗っているのですが、脚立に乗った足を少しずらすとその奥にいた人の顔が見え、その人がしゃべるというシーンがあります。これ、どの位置から撮って、どのタイミングで足をずらすか、1カットで撮っているのできちんと計算されてないとできません。
カメラワークで魅せろ!
次に、カメラワークの例として、『TRICK』シリーズを紹介します。『TRICK』は売れないマジシャンと大学教授が様々な怪事件の謎を解き明かしていくサスペンスです。
・効果的な手振れ
手振れというと、あまりいい印象を受けませんが、『TRICK』ではまるでホームビデオのような手振れをうまく取り入れ、オカルトバラエティーで流されるようなリアルな映像を演出しています。
・様々な心情
このドラマの特徴として役者の顔が全て入りきらないアップ、画面の角にいる主人公が挙げられます。
役者の顔のどこかが画面から切れていることで、何か隠し事があるんじゃないかなどキャラクターの一筋縄ではいかない心情を視聴者に印象付けることができます。
また、画面の右下、左下に主人公がくると、奥がぽっかり空いてしまいますが、その空間に主人公が押しつぶされている、つまり何かに抑圧されているというメッセージを視聴者に送ることができます。
足だけで魅せろ!
おまけに、『相棒』シリーズ3でおもしろいシーンがあったので紹介します。
カフェで語り合う男女。向かい合う2人からカメラは下へいき、足元を映します。
捜査が進まないとぼやく男は貧乏ゆすり。一方、女は話の途中にヒールで拍子を打ち、足を組む。この足元のシーンだけで、男の苛立ち、女の余裕が見て取れます。
このように、カット数が少なくても、演出やカメラワークがしっかりしていれば、視聴者を飽きさせないシーンを作ることはできます。
次回は、なぜカット数が増えたのか分析したいと思います。
ありがとうございました。