王様はいじめられっこ その1
こんな国があった。
「あんたなんか王様じゃない」
「あんたに王様を名乗る資格はない」
「この国から出てけ!」
この国の王様はすごく嫌われていた。
王様なのに、王様の家は街から離れた山奥にあった。
王様なのに、王様の家は小さな古びた小屋であった。
王様なのに、王様の家は誰がどう見ても貧乏人の住処だった。
「オーサマ、オーサマ、キョーハ演説の日、ジューイチから、ジューイチから」
「あー了解だ」
執事のぴーちゃんは、めざましのように朝早くから今日の予定を知らせた。王様の付き人はオウムだった。誰からも国民に愛されない王様は、オウムのぴーちゃんだけが一番自分をさらけ出せる相手だった。
「さあ、散歩がてら向かおうか」
支度を終えた王様は、オウムを肩に乗せて出発した。
「オーサマ、オーサマ、ドーシテニンゲントイナイ?オシエロ」
「ニンゲンはな、上に立てば立つほど憎まれて、ありのままに生きれば生きるほど、周りのニンゲンに嫌われるのだよ」
「オーサマ、ウケルウケル」
「はっはっは、笑わないとな」
ニセモノの笑い声に、王様は自分がもっと嫌になった。
人気のある町が見えてきたところで、王様は腕時計を確認すると、地面に一円玉が落ちていた。王様は拾い上げポケットにしまった。
「オーサマ、オーサマ、マンマルヌスムノカ?」
「盗まないよ。これはニンゲンを救う大切な物だからな。今日もこれをもらいにいくのだ」
「マンマルモラウ。。コクミンカラカ?」
「あーそうだ。だから私は嫌われる」
「マンマルデ?」
「あーそうだ」
「ダイジナノ二、オチテルカ?」
「落ちてはいけないものだ。これはニンゲンの命を救えるものだから」
町に着くと、聞こえてくるのは言葉の暴力だった。
「また俺たちから金を巻き上げるのかよ」
「早く消えろ!」
「顔も見たくないわ」
聞こえないふりをしながら町中を歩き王様は目的地に到着した。王様は演説の準備にとりかかり、終えた頃に一息ついた。
「オーサマ、オーサマ、キラワレルリユーワカンナイ、ワカンナイ」
「あーそうだ。人と鳥もまた、わかりあえないものよ」
「時間だ」
演説の時間となり、王様は人々の前に立った。
「出てくんな!」
「消えろ王様!」
「早くこの国から消えてしまえ!」
王様はいつも通り、言葉の暴力を作り笑顔で受け取ってから演説を始めた。