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私の感覚を理解するのは私だけ #12

太宰治『走れメロス』についてだけ #9


本を読んで泣いたのは後にも先にも『走れメロス』のみだ。
他にも感動的な本や、多くの人が涙を落とした話はたくさんあるが、私にとってはなぜかメロスだけ。
ストーン!と穴に落ちたようだった。

前回はその、泣き落とし穴の一つをお伝えした。
一人ではしゃぎ過ぎて何も伝わらなかったなと反省している。

自分で読み返してもよく分らない。テンションだけが高めだ。

小説の中で前後してしまうが、この場面で私の好きな単語がある。

「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁《はんばく》した。

太宰治『走れメロス』

刮目せよ!!!!!!
反駁《はんばく》

意味は以下のとおり。
◆反駁《はんばく》
意味:他の意見に反対し、論じ難ずること。論じ返すこと。

若干ニュアンスは変わるが、論駁《ろんばく》という言い方やごくごく日常的な言い方になると論破も多少かすっているかなぁ、と思う。
論駁は哲学書などを読んでいるとわりと出てくる言葉だが、反駁も論駁もこの、

”駁”

が、カッコいいと思わないか?!
カタカナの”メ”みたいなのが大小二つあるのもそうだし、部首が"馬ヘん"なのも無意味に心惹かれる部分である。
カッコいい。

”ばく”という音も珍しい気がするのでカッコいい。

この漢字は普段の生活の中では出てこない。
小学校~高校の期間で習っただろうか。残念だが私は覚えていない…
だからこそ、特別感がある。
カッコいい。

そして、日常会話では使わないこと。
本を読んでいないと出会えない事。
カッコいい。

秘かに、いつか日常会話のどこかで反駁か論駁を使ってやろうと身を潜めている。
いつでも茂みから飛び出す準備はできているのに、やはり使う場面はそうそうない。
使う場面が訪れても、なんだかちょっと恥ずかしさが出てしまい、茂みから出るのか出ないのか、モタつきモタつき…結局出ない。

さすが”駁”
簡単には使わせてくれない。
カッコいい。

カッコいいの大渋滞。

渋滞のせいで、なかなか『走れメロス』の話が前へ進めない。

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