つぶやき物語【看取1~10】のまとめ(冒頭に中書き②追記)

【看取11】~は、10/28(月)スタート(o^-^)b ※物語の最初からお読みの方は【中書き②】を、初めてお読みの方は【前書き】から、ご一読頂けると大変嬉しいです。

【中書き②】
 母を始め私を含めた子供全員が、父の余命宣告を聞いても悲しまない状況から、歪んだ家族関係が伺える。
 そんな中、病気の正体を知らない彼は生保給付金の皮算用をしながら、傍迷惑を考えず喋り捲る不平不満。
 その父が病室で大声を出して騒ぎを起こしたと連絡が入った事から、私は恩師へ相談すると、詳しく話を聞いて来る様にと指示が出る。
 見舞いに行き恩師の話を伝えると、生気の無かった彼の表情は一変し、自分の見た情景を滔々と捲くし立てた。
【看取11】
へ続く。
~・~・~
【前書き】

 若い方でも居られるかもしれませんが、ある一定の年齢以上になると、両親共に逝去されている場合が多いと思います。
 私は16年前に父を、4年前には母を亡くしましたが、還暦を迎えるとそれも珍しくは有りません。
 しかし介護もしておらず、現役の会社員だった私が、両親共に看取る事が出来たのは、息子としては有り難く果報者。
 そこで今回は、父との関係性や長男としての複雑な思いを、つぶやき物語として綴って行きます。

看取1【生き仏の如き様】
ベッドの傍らの椅子に腰掛け、眠る父の胸を摩り続けていた。
「この人はどうして、私をあんなに嫌ったのだろう」と、心の中で呟くと、ふと漏らす深い溜め息。
半年以上も意識は戻らず、呼吸器には繋がれているが、目を閉じたその表情は穏やかで、元気な時に見た記憶は殆ど無い。

看取2【合点し当然の報い】
遡る事4年前、父が入院したと母から連絡が有り、息子3人が召集される。
肺に癌が出来ていて、検査結果から早期発見であると診断されたが、取り急ぎ摘出手術が必要との説明。
1本でさえも吸わない人なのに、パチンコ屋に通い詰めた挙げ句の、受動喫煙の弊害が齎されたのだ。

看取3【仇となりし画策】
父が厄介だったのは、自分勝手に振る舞う反面、気が弱い臆病な性格の持ち主。
彼のすぐ下の弟が、「癌と判ると兄貴は落ち込むから、言うなよ」と戒厳令を敷き、完璧に実行された。
この頃は告知が義務化されておらず、本人へは只の腫瘍と伝えたが、結果的には見事に裏目と出る。

看取4【後は野となれ】
医者嫌いの為に手術初体験となったが、「生命保険から金が出るから、もらったら競馬に使える」と上機嫌。
そして摘出は成功に終わったが、給付額を増やそうと退院を渋り、先延ばしを図る。
結果的にリンパ節へも転移は見られなかったが、父は治療を続ける事を微塵も考えなかった。

看取5【因果応報の狼煙】
手術の2年後、「肺癌が再発し、今回は胃にも転移している」と、母からの緊急連絡。
父は退院以降、診察や検査を一切受けず、好き放題に過ごしていたが、紛れも無い天罰は末期へと誘う。
医師は私達へ「もう帰宅は叶いません、そのつもりで」と言い放ち、余命数ヶ月と宣告した。

【中書き①】

 「今日が峠です」と、往診に来た医師の言葉から息子3人が呼び集められたが、母と弟たちは2つ向こうの部屋へ移動し、父の傍らには私が1人残された。
 意識の無い父の胸を擦りながら、私を嫌い続けた父への恨みとは裏腹に、眠る寝顔の穏やかさに抱く安堵感。
 この2年前に父は肺癌を発見されるが、叔父の強引な主張に押され、癌の告知をしなかった為、入院してお金がもらえる状況にはしゃいでいる。
 その結果、手術は成功して転移も無い状況が逆に災いし、退院後は診察や検査を一切受けない為、肺の癌は再発し胃へも転移した揚げ句、余命数ヶ月と宣告された。

看取6【悲しみ無き終焉】
病院の廊下で母と息子達が集まり、医師の告知からは、持って年内の命であると理解した。
ここで下の弟が、「親父が先で良かったな」と言い出すと、みんな一斉に大きく頷き、誰も挟まぬ異論。
もし彼が後に残ったら、面倒を見るのが厄介との意味だが、関係性の歪みが露わになる。

看取7【継承されし悪癖】
前回と同じく父は自分の病状を知らず、また給付金をせしめる事が出来る位に軽く考えている。
私が見舞いに行くと元気一杯で、周囲へ聞こえるのも憚らず、喋りまくる医師への文句。
この調子では、かつて祖母がされた様に、強制退院を宣告されるかもしれないと、不安に襲われた。

看取8【零れし魂の喘ぎ】
見舞いの翌日、父が病室で騒ぎを起こしたと、母から連絡が入った。
その模様を聞くと、「建物の下敷きになるぞ、早く逃げろ」と、部屋中に響く怒鳴り声。
主治医は、「幻覚を見たのでしょう」との診断をしたが、私には少し引っ掛かる事が有り、恩師に相談してみようと思い立つ。

看取9【授かりし使命】
御霊様を祀って頂いている教会へ参拝し、病院での騒動についてお尋ねした。
一部始終を聞いた恩師は、「見られたのは予知夢であろう」と、賜るお言葉。
「あなたは今日お父さんの所へ行き、話を詳しく伺って、私へ伝える際は自分の感想は加えずそのままで」と、指令を発せられた。

看取10【息吹き返すが如き豹変】
見舞いに行くと、こっぴどく叱られたのか、父は借りて来た猫の様に大人しい病人然。
私は「教会の若先生から詳しく話を聞かせて欲しいと言われた」と告げ、ベッド脇の椅子へ腰掛けた。
すると憔悴し切った彼の表情は赤みを帯び、その際の情景を一気呵成に捲くし立てる。

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