【#39 : 自分らしく、楽しく生きる】

自分らしく、そして楽しく生きる。その言葉の響きは軽やかだけれど、その実、答えは目に見えないところに隠れているように思う。誰もがその「自分らしさ」を追い求めるけれど、はっきりとした定義はどこにもない。それは風のように形を変え、時には掴みどころのない存在だ。自分らしさとは何なのか？そして、それを楽しむとはどういうことなのか？まるで問いそのものが旅のようだ。

もしかしたら、「自分らしさ」というのは、何かを追い求めることではなく、むしろ手放すことなのかもしれない。社会や他人から押しつけられた期待やルールを、一つずつそっと解いていく。自分の中にある「こうでなければならない」という鎖を、少し緩めてみる。すると、ふとした瞬間に、自分が本当に望んでいるものや、心が動く瞬間に気づけるのかもしれない。自分らしさは、心の静かな波の中で、自然と浮かび上がってくるものなのかもしれない。

そして、「楽しく生きる」とは、きっとその瞬間を味わうことだろう。未来を計画することや、過去を振り返ることではなく、今ここにある一瞬一瞬を丁寧に感じ取ること。それはまるで、一杯の温かいお茶の湯気をじっと見つめるような感覚かもしれない。何も急がず、何も強制せず、ただそこにある「今」を受け入れる。楽しく生きるとは、単に笑顔で過ごすことではなく、自分の中に流れる静かな喜びを見つけることなのだろう。

他者との比較も、結果への執着も、この旅には必要ないものだ。私たちはつい、他人と自分を重ね合わせ、どちらが「正しい」か、「うまくいっている」のかを考えてしまうけれど、人生に正解はない。ただ、歩む道がそれぞれ違うだけ。だから、比較することで得られるのは迷いでしかない。自分らしく、楽しく生きるためには、その迷いをそっと手放し、自分のペースを受け入れることが必要だ。

そうやって、ゆっくりと、自分の感覚に耳を澄ませることで見えてくるものがあるだろう。それは、外からの刺激ではなく、内側から湧き上がるような感覚だ。楽しいというのは、派手で明るいものばかりではない。時には静けさの中に、自分の心が本当に求める喜びが潜んでいる。静かに本を読むことや、ゆっくりと歩くこと、ただ空を見上げること。それが、自分らしい「楽しさ」であるなら、それを大切にすればいい。

だから、自分らしさや楽しさを無理に探しに行かなくてもいい。何かを達成しなければ得られないものではないし、他者から与えられるものでもない。ただ、自分の心の声に気づき、その声に素直に従ってみること。それが、何よりも大切なことだろう。