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金曜ロードショーが「天使にラブソングを…」オリジナル吹き替え版を放送した歴史的な意義とは?

さて、2022年12月2日、金曜ロードショーで「天使にラブソングを…」が放送された。吹替オタクとしては、金曜ロードショーが「オリジナル吹き替え版」を放送した歴史的な意義について言及せざるを得まい。


まず前提として、吹替は多くの場合、DVD、BD、配信、テレビ局などの媒体によって声優や翻訳のバージョンが異なる。「タイタニック」石田彰版、「ホーム・アローン」矢島晶子版、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三ツ矢雄二版、「グーニーズ」藤田淑子版などがその筆頭で、子供の頃テレビで親しんだ映画を大人になってDVDや配信で観ると声が違うのはこのためである。

そしてその多くがソフト収録されておらず、テレビ放送でしかお目にかかれない激レアなものなのだ。また「インセプション」浪川大輔版や「ジュラシック・ワールド」山本耕史版のようなファン垂涎の吹替が一度きりしか放送されず以後どこかの倉庫に眠っていることはあまり知られていない。私のような吹替ファンは、テレビ放送の度にどのバージョンで放送されるのかドキドキしているんですよ!


さて、ここ数年ディズニー(ディズニー・キャラクター・ボイス・インターナショナル)は、吹替の「オフィシャル化」を進めている。「オフィシャル化」というのは、数ある吹替のバージョンをディズニーが定めた「公式版」に一本化し、ほかの吹替版のテレビ放送、配信、ソフト収録を認めず、事実上「封印」してしまうこと。

シュワちゃんの声はこれ、トニー・スタークの声はこれ、という風にキャラクターや映画のイメージを定着させ、あらゆる言語の吹替を責任をもってコントロールするためだと思われるが、本当の理由は定かではない。

たとえば現に、2022年に21年ぶりに金ローで放送された「クール・ランニング」は計4回の放送で初めて「オリジナル吹き替え版」いわゆる日本テレビ版が使用されず、ディズニーが公式と定めるソフト収録の吹替が放送された(往年のファンはがっかり!)。


さらに、ワーナー・ブラザースの「マッドマックス怒りのデス・ロード」のAKIRAによる吹替の不人気に際してプロの声優・宮内敦士で新録したザ・シネマ版なども次々に封印されている。こちらは権利元の問題なのでディズニーとはやや詳細は異なる。


そして2020年、ディズニー映画の「天使にラブ・ソングを…」も日本テレビが作った「オリジナル吹き替え版」ではなくソフト版の吹替で放送された。24年間にわたる計6回の放送で初めてのことである。10年ぶりの放送とあって15.2%というジブリ並みの高視聴率を打ち出したが、同時にファンからはいつもと声が違うと批判が相次いだ。

その声を受けてか、なんと去年(2022年)、実に12年ぶりに「オリジナル吹き替え版」が放送されたのだ。「ディズニー非公式吹替」が放送された理由は現時点では不明だが、おそらく金曜ロードショースタッフがウォルト・ディズニー・ジャパンと掛け合い、本国ディズニーの方針を動かして「オリジナル吹き替え版」を放送したのだと思われる。

この例外的な処置を生んだ条件は、前回の放送で高視聴率だったこと、長らく当番組で親しまれてきた作品及び吹替であること、番組の終わりに「ストレンジ・ワールド」のプロモーションを放送することだったはずで、今回以降も同じようにディズニー非公式の「オリジナル吹き替え版」が放送される可能性は薄い(残念すぎる!)。


まあというわけで、とりあえずディズニーの吹替「オフィシャル化」について映画評論家が解説している記事を読んだことがないので、ここにざっくり記しておくよ。

そうそう、吹替解説できる評論家がいないのが大問題。ちゃんとしたプロの評論家やライターよ、ディズニーや日本テレビに取材して記事書いてくれ。いや書きやがれ、クソ野郎。タレント吹替や昨今の粗悪な吹替の責任の一端は、お前たちが吹替を軽視し評論しないことにあるぞ。

最後に吹替ファンを代表して、ここに金曜ロードショースタッフとウォルト・ディズニー・ジャパンに感謝申し上げます。まじでありがとうございました。今後もどうか、封印される吹替を救って下さい。おしまい。

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