【雑感】定款認証:起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しに関する検討会第1回・第2回会議

本稿のねらい


2023年11月21日、法務省に設置された「起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しに関する検討会」(本検討会)の第2回会議が開催された。
(本稿執筆時点では第2回会議の議事録は未公開)

本検討会は、以前2回にわたり紹介した株式会社等の定款認証の見直し認証を要する場面の縮小・廃止)に関する有識者会議である。

規制改革実施計画において、次のとおり、令和5年度中の検討・結論、遅くとも令和6年度中の定款認証の見直しの実施を迫られている。

法務省は、令和4年度に実施された定款認証に係る公証実務に関する実態を把握するための調査について、その結果を分析し、定款認証が果たすべき機能・役割について評価を加えるとともに、その結果に基づいて、定款認証の改善に向けて、デジタル完結・自動化原則などのデジタル原則を踏まえた上で、面前での確認の在り方の見直しを含め、起業家の負担を軽減する方策を検討し、結論を得た上で、必要な措置を講ずるとともに、定款認証に係るサービスの改善や利用者の満足度向上にもつなげる。
【実施時期:評価・検討・結論については令和5年度、必要な措置については遅くとも令和6年度】

規制改革実施計画(令和5年6月16日閣議決定)7頁

本検討会の検討事項は次のとおりである。

  1. 定款認証の機能・意義について

  2. 定款認証の現状と課題について

  3. 起業家の負担軽減に向けた運用上・制度上の改善策について

  4. 定款認証制度の必要性・抜本的見直しについて

  5. 本検討会における検討の進め方について

  6. その他

本検討会第1回会議では主に上記1〜4に関して自由な意見交換が行われた。

本稿では、主に本検討会第1回会議の議事録をもとに、定款認証の必要性の論証がされていないことを紹介することを目的とする。


はじめに


まず、対立構造をわかりやすくしておくことが議事録を読む上で有用と考え、定款認証の廃止ないし縮小あるいは選択制の導入に賛成する立場の委員とそれらに反対する立場(方法論は別として定款認証自体は一律で残す派)の委員に分けると次のとおりとなる(一部推測が含まれる)。

委員名簿

定款認証の廃止ないし縮小(あるいは選択制)に賛成(賛成派)

⚪ 後藤委員(会社法学者)
⚪ 関委員(新経済連盟事務局長)
⚪ 堀委員(弁護士)

定款認証の廃止ないし縮小に反対(反対派)

☓ 原田委員(行政書士)
☓ 鈴木委員(司法書士)
☓ 増田委員(全国消費生活相談員協会)
☓ 梅野委員(弁護士)
☓ 神作委員(会社法学者)
△ 佐久間座長(民法学者)

定款認証の機能・意義


(1) これまでの経緯の大筋

前回記事の振り返り)

定款認証の機能に関する法務省の見解は次のとおりである。

本検討会第1回会議参考資料2

法務省は、規制改革推進会議(令和4年10月から)第7回スタートアップ・イノベーションワーキング・グループでの回答(同資料6-1)以降、一貫して同様の定款認証の意義・機能を説明してきた。

2023年11月28日筆者作成

しかし、これらに対しては、令和5(2023)年7月31日付けで書面議決された規制改革推進会議「法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び定款認証の改善による起業家の負担軽減について」の意見書本意見書)において、次のとおり、経済界・規制改革推進会議委員から、定款認証の意義・機能に疑問が呈された。

【経済界】

  • 定款認証の面前確認が、日本の法人設立手続の完全なワンストップ化、デジタル化の阻害要因

  • スタートアップの定款認証については、モデル定款とマイナンバーカードによる本人確認を活用して、デジタル完結可能な、ファストトラックの選択肢が強く要望される

  • 令和4年度に法務省が実施した定款認証に係る公証実務に関する実態を把握するための調査の結果を見ても、公証人による面談と定款認証が必須であることを端的に示す結果は確認できず、むしろ、公証人の指摘事項を見ると、モデル定款のブラッシュアップ等で対応できるのではないか

  • 公証人による面談、定款認証がなくても差し支えないことを示す結果が多くモデル定款を修正・改善し、今後のモデル定款の活用方策を検討していく方法が良い

  • 一定の定款については公証人による認証を必要とすること自体をゼロベースで見直し、不要とすることを早期に実現していただきたい

  • 短時間の面談での実効的な人物評価や不正防止は不可能

  • 不正防止は一律に行う事前チェックではなく、リスクの高さに応じた事後チェックで行うべき

【委員】

  • 公証人による面前確認という手段には非常に大きな社会コストがかかっているが、他の手段が生まれ始めてきており、ゼロベースでどういうやり方が望ましいのか、制度目的を実現するために、公証人による定款認証が最適な手法であるのか、一番望ましい取るべき方法は何かを検討するべき

  • 法務省の説明からは、デジタル臨時行政調査会で議論しているデジタル完結や自動化原則といったデジタル原則に沿った検討がなされていないように思われる

  • 民間調査によれば、現在提供されているモデル定款を工夫して独自の内容を追加する必要がないという回答が約7割

  • 大多数はシンプルな定款の構成であり、全ての会社形態をモデル定款でカバーする必要はなく、モデル定款の方と弁護士なども活用して独自の定款を作成する方とツートラックを設ければよい

このように、経済界からは「モデル定款」を用いたオンライン・デジタル完結(定款認証の例外)が強く要望され、定款認証の撤廃も含めたゼロベースでの検討も要望されているところであり、規制改革推進会議委員からも同様の意見が出ていた。

このような状態の中、法務省は、上記のとおり、定款認証の縮小や廃止に否定的な委員を多数招集し、規制改革推進会議での成果を台無しにしようと目論んでいるかのように見える。

(2) 本検討会第1回会議賛成派の意見

▶ 問の立て方にバイアスあり!?

定款認証の機能・意義についてという問題の立て方がされているので、定款認証にはこういう機能があるのですということになってしまうのですが、本来のアプローチはそうではなく、まず達成すべき目的が何なのかということを考えた上で、それを果たす手段として定款認証、公証人の面前確認による認証が最適なのかどうかという観点からの議論であるべきと思っております。つまり、定款認証に一定の機能と意義があるということから始めるべきではない、ということです。

本検討会第1回議事録5-6頁(後藤委員発言)

もともと昭和13年の商法改正とそれに伴う昭和14年の公証人法改正により、株式会社の定款につき公証人の認証を受けなければその効力を有しないこととされた。

第百六十七條 定款ハ公證人ノ認證ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ有セズ

昭和13年法律第72号

公證人法中左ノ通改正ス
第一條中「公正證書ヲ作成シ及私署證書ニ認證ヲ與フルノ權限」ヲ「公正證書ヲ作成シ、私署證書ニ認證ヲ與ヘ竝商法第百六十七條及其ノ準用規定ニ依リ定款ニ認證ヲ與フルノ權限」ニ改ム

昭和14年法律第13号

この点、定款認証の趣旨に関して、行政事業レビュー事務局による次のような説明がある。つまり、①定款案の文面審査を通じて事業目的等から判断して法令上違法な株式会社の設立を防止することと②公証人による面前確認を通じて発起人の意思の真正性を確保(なりすまし・名義貸しの防止)することにあるとされている。

行政事業レビュー事務局「行政事業レビュー」『事務局(主な論点)』2頁

他方で、少なくともドキュメント上は、法務省からは定款認証の機能の説明以外に趣旨の説明はなされていない。(秋のレビュー2023において口頭で法務省大臣官房審議官から説明があったに過ぎない)

法務省「行政事業レビュー」『法務省』1頁

行政事業レビュー「秋のレビュー2023」法務省大臣官房審議官の説明

  • 昭和13年商法改正・昭和14年公証人法改正の背景には、①定款記載事項の不備、②定款の代理作成の場合における委任状の不備、③発起人による故意の定款の紛失等に起因する発起人の責任追及の困難性があり、要は無過失責任を負うべき発起人を確定するところにあった(発起人を確定するためには原始定款のみ認証されれば足りる)

  • 公証人の面前での認証を経なければ、特に定款の代理作成の場合、最終的な代理意思の確認ができず、代理権消滅を主張される可能性がある

  • 定款の作成や登記に関する代理権の有無は設立無効の問題と密接に関係

発起人の意思の真正性を確保することが上記②に繋がるのかもしれない。
しかし、現状も定款認証手続に代理人が就く場合、公証人と面談を行うのは代理人であり、代理意思の確認は委任状等の書面や電磁的記録により行われる以上、印鑑証明書やマイナンバーカードを用いて商業登記所が確認を行えば足りるように思われる。また、定款を商業登記所が保管すれば上記③も対処可能ではないか。

これに対して、定款作成後、定款を紛失したことにして定款を添付せず登記申請し、あえて会社設立を不成立にする者がいる可能性がある、つまり、その者が登記申請済みであるとして登記申請書を第三者に呈示のうえ資金を調達し、発起人としての責任追及を免れようとする者がいるというのが法務省の説明である。これは、このケースでは定款がどこにも保管されないため、発起人が誰なのか証明困難であることに由来する説明かと思われる。

2023年11月27日筆者作成

しかし、このようなまわりくどい不法行為を行う者がいるだろうか。
仮にそのような非効率的な者がいるとして、それを会社法の事前・包括的な規制として用意する必要があるのだろうか。リテラシーの問題である。

また、2点目(代理権消滅)については民法の代理権消滅後の表見代理(同法第112条)の考え方により対処すれば足りるように思われる。
なお、表見代理では紛争を予防できないという点ではそうかもしれないが、定款認証を経たとしても紛争を起こそうと思えば当然可能である(公正証書遺言の例に思いを馳せれば明らか)。

行政事業レビュー事務局「行政事業レビュー」『事務局(主な論点)』4頁

【参考】行政事業レビュー「秋のレビュー2023」とりまとめ

①株式会社等について、設立時にのみ公証人が定款認証しても、会社設立後の定款変更については認証が不要であること、②実態として最終的に認証に至らなかったのは0.5%にすぎないこと、③名義貸し等の不正防止や責任追及は商業登記等の記録整備、事後的な民事、刑事面の制裁の手段で対応することが可能であること、④発起人が司法書士等に定款作成を委任する場合は面前確認が不要となっており、発起人自身が定款作成する場合にのみ、公証人による面前確認が必要となっており合理性が十分ではないこと、などを踏まえると、定款認証制度が有効に機能しているとは言い難い。 

当面、まずは、起業家の負担軽減のため、モデル定款を用いる場合であって、第三者(弁護士等)が確認した発起人の場合やデジタル技術を用いて発起人の実在・設立意思が確認されている場合については面前確認を不要とする。その上で、手続効率化にあわせて手数料を無料に近い金額とすることを年内に決定するべきである。さらに、将来的な定款認証制度の廃止を含め、制度の在り方を年度内に早期に検討すべきである。

行政事業レビュー事務局「行政事業レビュー」『とりまとめ

▶ ゆくゆくは全廃!?

一つは、参考資料2の3つの機能について、会社設立時にこれを担保すべきということに異論はないのですけれども、定款認証でこれを担保するということまでは言えないのではないかということを念のため申し上げます。定款認証でできるケースもあればできないケースもある、それは先ほどの座長のまとめにもあったかと思います。
その上で、今すぐできるかどうかは別として私は定款認証制度をいずれ廃止していくべきだと思っています。その第一歩として、今、デジタルが進歩していますので、デジタル技術を活用してできるだけスタートアップ環境を推進するために廃止できる部分は廃止、具体的に言うと、例えば、モデル定款のようなものが考えられれば、その場合については定款認証を経なくて良いとするのも一つの考えだと思います。

本検討会第1回議事録15頁(関委員発言)

会社設立時に法務省のいう定款認証の3つの「機能」は担保すべき?

たしかに、定款としての実質を備えない不適法な定款が作成されたり、発起人のなりすましにより定款が作成されたりすることは、取引の安全性を確保するため、会社設立時に排除されることが求められる。また、実質的支配者についても、商業登記所等に申告される必要がある(レジストリアプローチ)。

しかし、法務省がいう定款認証の「機能」のうち、違法・不正な目的での会社設立を排除すること(事前規制)が会社設立時までに必要だろうか。そもそも、現行法上、違法・不正な目的での会社設立ができないという建付けになっていないのではないか(公序良俗無効!?)。定款認証を必要とした昭和13年商法改正当時の趣旨は、発起人への責任追及の確保を図る点にあり、仮に違法・不正な目的での会社設立が行われても発起人等に責任追及できればよいという思想であったのではないだろうか。

仮に会社設立時までに違法・不正な目的での会社設立を排除すること(事前規制)が必要だとしてそれをどのように排除するのだろうか。あくまで内心面であり、発起人ないしその代理人が「自白」すればわかりやすいが、通常そのようなことを望むことはできず、何らか客観的な指標が必要となるが、現状そのような指標はあるのだろうか(アンチマネロンの文脈で疑わしい取引として一般に認識されているものが参考にはなる)。

【自白した例!?】

① いきなり公証役場に来訪し、「今日会社を作りたいから手続をしてくれ」と発言したので、定款案や来訪者の身分証明書の提示を求め、発起人との関係を質問すると、「上から会社を作ってこいと言われたので、詳しくはわからない」と回答があった。さらに、発起人が暴力団員等である場合には定款認証の手続ができないので、事前審査をするから、発起人の氏名、よみがな、生年月日の情報の提出を求めたところ、「そんなことはできない」と言って役場を退出した。
コロナの給付金(休業補償と思われる)をもらうために会社を作る必要があるとして、公証役場に来訪した者に対し、不正請求のために利用する目的ではないかと考え、定款案、発起人との関係、暴力団等の団体加入者でないことの審査を行うので、運転免許証など身分証明書の提示を求めたところ、身分は明かせないとして、役場を退出した。
⑩ 目的に「信託の受託」が記載されていたため、信託業免許を取得する予定があるのかを嘱託人に確認したが、その予定はないとの答えであったので、無免許で信託業を営むことは違法であることを指摘して記載の削除を求めたところ、嘱託を取り下げた。

本検討会第1回会議参考資料5−2・13-14頁

▶ 「モデル定款」等デジタル技術の活用!?

デジタルを活用することによって、果たして公証人という、人が面前で確認をするということが不可欠かどうかという点については、定款は会社の根本規範でございますので、内容の適法性、明確性を確保することは非常に大事でございますけれども、それを担保できるような措置がとられるのであれば、公証人の定款認証というのは一定の場合に限り不要とするという判断もあり得るのではないかと思っております。
一つは、定款の内容については、モデル定款などを利用して会社法上の違法がないような形で列記されたものの中から選択できるであるとか、会社名、事業目的などの可変の項目をかなり少ないものにするということで定款の適法性を確保できないか。
また、成りすましや違法性のある目的を排除するということでありますけれども、マイナンバーカードも含めてデジタルの認証手段というものがこれだけ発達してきておりますので、そういうものを活用できる余地はないか。
最後のマネー・ローンダリング対策につきましては、実質的支配者の申告ということでございますので、こちらも公証人に申告しているのと同じく、チェックボックスなどを用いることなどによって申告して確認書類により担保することが、今の担われている機能を著しく損なうことになるのかどうかということについては、デジタルでも代替できる余地があり、それを付した上で商業登記手続に持ち込まれるということでも、ある程度担保はできるのかなと思っているところでございます。

本検討会第1回議事録16頁(堀委員発言)

違法性のある目的をデジタルの認証手段で排除可能!?

それはさすがに困難と思われる。
だからこそ、法務省は「不正な起業・会社設立の抑止」や「違法・不正な目的での会社設立の抑止」を前面に出してきているのではないかと思われる。

そうすると、問題の本質は、公証人による発起人ないしその代理人の面前確認であれば違法・不正な目的での会社設立を抑止できるのかという実効性の点にあることになる。

行政事業レビュー事務局「行政事業レビュー」『事務局(主な論点)』3頁
本検討会第1回会議参考資料5−1・11頁
行政事業レビュー事務局「行政事業レビュー」『事務局(主な論点)』5頁

(3) 本検討会第1回会議反対派の意見

▶ 許認可行政と定款の目的の記載!?

私は行政書士なので、許認可に関する視点で少しお話させていただければと思います。まず、定款の目的の記載の重要性についてです。許認可行政でありますので、定款の目的等について、関係業法を確認しながら進める必要がございます。許認可の手続のところで滞ってしまうことがないように、法的な観点や事例の蓄積から的確なアドバイスをすることは非常に重要ではないかと思います。定款認証において、公証人の先生から指摘をいただくというケースもあります。様々な許認可について、全てを行政書士が把握できているわけでもありませんが、関係法令等にしっかり対応した目的の記載をしないといけません。スタートアップの時点で間違った目的の記載になってしまうと、起業家の方にとってもスムーズに事業を行えないということになると思います。定款認証の機能・意義については、このように考えております。

本検討会第1回議事録5頁(原田委員発言)

意味不明

許認可の取得の有無や取得可能性の問題と定款の目的の記載は別問題である。定款の目的は、あくまで法人の権利能力の範囲を画するものに過ぎない(民法第34条)。

(法人の能力)
第34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

民法

つまり、許認可等を取得する前に、許認可等が必要な事業を定款の目的に記載することは何ら問題がない(設立後に許認可等を取得することでよい)。また、許認可等が必要な事業を行うことが(ほぼ)決まっているのに定款の目的に記載がないことも何ら問題がない(設立後、許認可等の申請前に、定款変更の手続により定款の目的の記載に追加すればよい)。

目的たる事業が官庁の許可・免許等を要するものであっても、当該許可等は、通常は営業の許可等であって、会社設立の許可等ではないので、設立には事前の内許可等は要しない(昭和26・8・21民事甲第1717号民事局長通達)。

江頭憲治郎「株式会社法〔第4版〕」67頁

▶ 実務家としての機能評価!?

起業促進、起業家の負担軽減という点におきましては、大いに賛成するところであります。実務家として、現行の定款認証制度につきましては、設立する会社の適法性をチェックする、いわゆるゲートキーパー的な機能、そして、スタートアップ段階における相談・助言の機能を有していると理解しております。そして、これまで、不当な会社の設立を抑止してきた歴史的な経緯はあるのではないかとも考えており、ご存じのとおり、昭和13年の商法改正で導入され、一定の評価がされているものとも理解しております。また、社会の健全性を維持するという観点からも、法人格を取得するという重要な局面においては、一定のハードルがあってもしかるべきではないかと考えているところです。さらに、先ほど、後藤委員からも言及がありましたマネロン対策については、後発的、付随的に加わったものかもしれませんが、現在、実務的には大いに有効なものと理解しているところです。

本検討会第1回議事録8頁(鈴木委員発言)

機能と目的(趣旨)の違いが理解できていない

ゲートキーパー的な機能や相談・助言の機能はどういう目的で必要なのかが問われているのであって、「その機能がある」といったところで何ら意味がない。

なぜ、定款認証というプロセスが必要なのか、必要だとして、定款認証のプロセスの中で適法性のチェックや相談・助言の機能が一律、すべての発起人等株式会社の設立を意図する者に必要なのかを問うべきである。

また、実務家としての機能の評価などは聞いていない(そもそも一司法書士が法の趣旨・機能など理解して実務を行っているのか大いに疑問)。

法人格に何か幻想を抱いている!?

神作委員(後述)に似たものを感じるが、株式会社をはじめ法人は所詮Vehicleであり、器に過ぎない。同様にVehicle・器として倒産隔離機能を有する信託でも、自己信託でなければ、公証人による定款認証など不要で私人間の契約のみで設定できる。(なお、自己信託は公正証書等の作成が必要)

おそらく「社会の健全性を維持する」という発言から、法務省が挙げる「不正な起業・会社設立の抑止」や「違法・不正な目的での会社設立の抑止」を念頭に置いてのことと思われるが、果たして定款認証により社会の健全性が維持されているのだろうか。

▶ 消費者による「株式会社神話」!?

同時に消費者被害の防止や株式会社に対する信用低下の防止についても配慮していただきたいと考えております。消費者は、有名な企業以外の企業について、信用性を把握する方法を知りません。定款や登記簿を確認した上で取引をすることは考えられませんので、信用できるかどうかの一つの指標が株式会社であるということだと思います。株式会社は定款を作成して内容の確認を受けるなどの一定の手続を経た上で公証人の認証がされているはずであるから、そうでない会社や個人事業主等よりも信用して良いのではないかという考えが基本的にあると思います。資本金が1円でも株式会社が設立できるようになりましたけれども、そのこと自体を知らない方が多くいますし、株式会社に対しては国民から高い信頼が寄せられている状況にあります。(中略)
一般消費者、特に高齢者や若者は、多角的に情報収集する手段を持ち合わせておりませんので、株式会社という形態を信用しやすいと思います。
(中略)
オンラインでも結構ですが、公証人による面談が、社会的責任等を理解してもらうことができる機会であって欲しいと思っているところです。

本検討会第1回議事録8頁(増田委員発言)

もはや意味不明過ぎて・・・どこから手を付けたらいいか・・・(呆)

法務省が頻りに言及している消費者系の意見とはこれか・・・(呆)

反対させるならもう少し事前の教育が必要・・・

▶ 案の定見えない敵と戦っている!?(リスク過大視)

①については、定款の作成の有無、定款の存否、あるいは定款の内容をめぐる争いを未然に防ぐという機能があるということです。現在、定款認証制度があるので、そういう紛争が多発しているわけではないのですが、果たして定款認証制度をなくした場合に本当にそういった紛争を防げるのかどうかという観点から検討する必要があるのではないかと思っております。会社を設立した後に、内紛とかが起こり、定款の内容がどうなのかという争いになることが今でもあると思いますけれども、20年に限ったとしても、公証人が定款を保存しておく意義というのはある程度あるのではないかと思っております。そういった観点から、この機能・意義については、もう一度検討すべき必要があるのではないかと思っております。

本検討会第1回議事録9頁(梅野委員発言)

少なくとも定款作成の有無や存否については商業登記所で管理可能

定款の内容をめぐる争い!?

仮にそのような争いが潜在的に起こりうるとして、定款認証の有無により顕在化の可能性に影響を与えるのだろうか。つまり、内容自体に発起人間の意見対立等がある場合、定款認証を経ても検出困難ではないだろうか。

次に、②不正な起業・会社設立の抑止ということですけれども(中略)株式会社は、法人格が付与されることによって、人間とは別の財産上の権利義務の主体となるものでございます。先ほど増田委員からご発言いただいたとおり、日本社会の中では株式会社は重要な役割を果たしています。逆に、そのような信用が悪用されて、消費者詐欺犯罪、劇場型犯罪というような詐欺犯罪だと、株式会社がぞろぞろ出てくることがございます。あるいは詐欺的投資勧誘とか、マネー・ロンダリング等の犯行ツールとして、株式会社が隠れ蓑として利用されるということがあるのが実態だと思います。後藤先生は、不正による起業がどういうものかわからないとおっしゃいましたけれども、私どもとしては、そういった犯罪に利用されるような目的で設立されることを、不正な起業と捉えています。やはりそういった不正な起業がなされることを防ぐために、会社の設立は、人間が一人誕生するのと同じことですから、ある程度慎重なプロセスというのも必要であり、起業のための負担軽減とは合致しない面があることは確かなのですけれども、バランスをとりながら考えていく必要があるのではないかと考えております。

本検討会第1回議事録9頁(梅野委員発言)

株式会社への信頼性/信用性など本当にある!?

詐欺等犯罪を行うグループが株式会社であるか合同会社や個人であるかで騙される可能性に有意な差が生じるのだろうか。被欺罔者はグループが株式会社かどうかではなく、他の部分で騙されていることが大半ではないだろうか。

会社の設立は、人間が一人誕生するのと同じ!?

会社の設立は人間が1人誕生するのと同じとは・・・(呆)

公証人はこのようなプロセスを通じて発起人の実在についても間接的に認証していることになるので、実在しない自然人・法人を発起人とする会社の設立であるとか他人の氏名を騙った定款の作成等を抑止する機能というのがあるのではないかと思います。要は、定款認証プロセスの中で、公証人という人間がチェックをすることによって、ある程度不正な目的で会社を起業しようとする人に対しては抑止的な機能を果たしていると考えています。特に対応が必要だと考えているのは、第三者による成りすましの場合であるとか、あるいはあまりに多くの会社を一斉に設立するような場合になります。現在オンラインで会社設立を簡略化することが考えられていますけれども、パソコンの前に座っただけで10も20も簡単に会社ができてしまうことが仮にあるとすると、そういった会社がまた悪用されるようなリスクも多いのではないかと、そのような観点で、あまりに多い会社の設立については、チェックをする必要があるではないかと考えています。

本検討会第1回議事録10頁(梅野委員発言)

実在しない発起人による設立!?

実在しない発起人による株式会社の設立など認めるはずはなく、発起人の実在性を公証人が面前で確認する必要はなく、マイナンバーカード等のデジタル技術で確認すれば足りる上、それは設立登記の段階でもいいのではないかという議論をしているはずである(誇大妄想!?被害妄想!?)。

第三者によるなりすまし!?

どこまでいっても防止はできない。現行制度であっても真の実質的支配者が誰かなど確認できないし、マイナンバーカード等を用いることで一定程度は防止可能だとしても完全に防止することは不可能である。所詮程度問題である。

多数の会社の設立は公証人によるチェックを要する!?

たしかにあまりに高頻度かつ多数の会社を設立することは疑わしい部類には違いない。しかし、ビジネスごとに会社を設立することには合理性がある場合も多い(税金面や社会保障面をよく考えよう)。

もし、一定の頻度(期間)において多数の株式会社の設立にリスクがあると考えるのであれば、設立登記申請の段階で形式的に弾くルール(株主提案権に個数制限を課すのと同様)で足りるのではないだろうか。
なぜ定款認証のプロセスで行うべきなのか、この発言からはまったく意味不明である。おそらく、形式的には弾けない設立登記申請を実質的な観点から弾きたいという趣旨だろうと思われるが、どういう権限でそのようなことをチェックするのだろうか(現行の定款認証でもそのような権限はないはず)。

【越権行為が疑われる例】

⑨ 中国人2名(中国在住)を発起人としエネルギーの輸入業等を目的とした会社の設立のためとして代理人の日本人から定款の事前確認の依頼がなされた。定款案に記載された出資金が20億円と多額であったことから、振込事実(ないし振込準備事実)を確認することのできる書類の提示を求めたが、そのようなものはなくても認証はできるはずだとしてこれに応じず、その後、代理人は来なくなった。一連のやり取りの中で、確証まではつかめなかったものの、設立後当該会社を目的どおりにまともな会社として運営する意思が本当にあるのか疑いを抱いた。

本検討会第1回会議参考資料5−2・13-14頁
※たしかに怪しいが振込事実等の確認などという公証人の役割外の確認をしている

▶ 定款認証が株式会社設立規制の最初の第一歩!?

会社法の基本的考え方は、定款認証が会社法における株式会社設立規制の最初の第一歩であるという捉え方だと思います。つまり、定款というのは、まさに会社の根本規範であって、それに基づいて、様々な設立手続もそうですけれども、会社が設立された後は定款に従って会社が運営されていくことになります。設立手続の最初に定款の認証が組み込まれていることの意義を認識することが大事であると思います。逆にいうと、なぜ英米法系では定款認証はないかというと、設立手続が非常にシンプルで、大陸法系とはそもそも設立手続が大きく異なります。これは翻って、定款認証制度を見直すのであれば、定款認証のところだけではなくて、設立手続全体を見直す必要があるという議論につながる可能性が大きいことを示唆しています。

本検討会第1回議事録10-11頁(神作委員発言)

定款認証は株式会社設立規制の最初の第一歩かもしれないが(第一歩は定款作成だがそれは措くとして)、昭和13年商法改正により、現にそういう制度になっているだけである。昭和13年商法改正以前は定款認証は「第一歩」ではなかった。

会社法学者ですら定款認証の趣旨・目的について語らない・・・(謎)

定款に従って会社が運営されることと定款認証を要することがまったく繋がらない。定款認証を経ても、設立後直ちに定款変更が可能な点はどう捉えているのだろうか。

小括①

まず、スタートアップ支援は必要であるということは、どなたも否定されておられず、そして現在の定款認証はスタートアップ支援の観点から最適であるとおっしゃった方は一人もおられず、見直しは必要であろうとおっしゃられたと思います。他方で、全ての株式会社の設立について、定款認証に意味はないのだとおっしゃられた方もいなかったと思います。一部の、一部というのは少ないという意味ではなく、全部ではないという意味ですけれども、一部の株式会社について、定款認証は不要ということは言えるのではないかとおっしゃられた方はおられましたが、残してはいけないとおっしゃられた方はおられなかったと認識しております。

本検討会第1回議事録13頁(佐久間座長発言)

たしかに定款認証を残してはいけないと発言した委員はいなかった。
(なお、関委員は当初「選択制」を提案していたが、将来的には定款認証の全廃を要求した)

小括② -3つの「機能」の維持は重要!?-

大きな焦点になるのは、後藤委員がおっしゃられた、3つの機能を満たすというか、きちんと今後も維持するということが重要なのであって、定款認証がこの機能を果たしているから定款認証が必要なのだというのは違うだろうというのは、その後の皆様のご発言を伺っておりますと、一定程度受け入れられているのではないかと思います。定款認証において、この3つの機能の全てが意味を持っており、実際に機能を満たすものになっていると考えられている方はおそらくおられず、部分的な効果に止まっているということも共通認識なのだろうと思います。

本検討会第1回議事録13-14頁(佐久間座長発言)

法務省のいう定款認証の3つの「機能」を維持することが重要?

もちろん3つの「機能」が効果的に果たされるのであれば、それらを維持することは重要であるが、ほとんどは別の手段で代替可能であるし、また法務省が推している「不正な起業・会社設立の抑止」や「違法・不正な目的での会社設立の抑止」は効果的に果たされているのか実証されていない。

この部分的効果に止まっているというところから、おそらく考え方が分かれていて、部分的な効果なのだから要らないのではないかという方向に進まれる方と、部分的な効果であっても、少なくとも現状は他にこれらについてきちんと受けられる制度があるという見通しが立っているとはいえないので、その程度であっても確保する意義があるのではないかとお考えになっている方がそれなりにおられたのではないかと思います。そうだといたしますと、この議論を進めるに当たりましては、この3つの他にも機能があるかもしれませんが、少なくともこの3つの機能については、損なわれることがあってはならないというのが共通認識だと思われますので、損なわれないようにするために、仮に定款認証を廃止した場合、あるいは、ある部分について行わないとした場合に、どういう制度というか、ほかの代替措置を講じていくかということが大事なのだろうと、その議論が欠かせないのだろうと思いました。

本検討会第1回議事録14頁(佐久間座長発言)

以上


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