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ロシアンブルー風 グレの物語

保護猫団体の猫川さんと 、ある飲食店の敷地内にいる子達を地域猫にすべく、奮闘中であることは、前回の記事で書いた通り。

前回の記事

ニャンコたちが人間の言うことを聞くわけもなく、想定外に計算外。
すんでのところで赤ちゃん産んじゃった、キジママ。
暫く見かけないなあと思っていたら、大きなお腹で舞い戻ってきて、あれよあれよと言う間に、ベイビー生んじゃいましたよ、あーすっきり!
みたいなすました顔で、ご飯もらいに来る。
あーあ、と猫川さんとためいきの二重奏。
敷地内のどこかにベイビー達がいるはずだが、まだ特定出来ず。

キジママ


くーちゃんこと黒猫ママは、いつも穏やかだし慣れてくれてるし、なんて簡単に捕獲できるとたかを括っていた私だが、見事に振り切られてしまった。
猫川さんは慰めてくれたが、敗北感と後悔、半端ない。
迂闊すぎた馬鹿な私。

くーちゃん


キジママはまだ乳飲子がいるゆえ、手術には連れていけないが、何度も捕獲器に入ろうとして、猫川さん大慌て。一度捕獲器に入ってしまうと、学習してその後は入らないらしい。

結局、捕獲器にかかったのは、4月生まれのキジ白のナイトと、その兄弟のロシアンブルー風のグレ(この子たちのママはくーちゃん)。
私のお気に入り、キジ男子キーたんの合計3匹。
枠は3匹。
男の子ばかり。
だが仕方ない。

きーたん
ナイト


猫川さんが、隣県の獣医さんのところまで連れて行ってくれる。
NPO法人の動物診療所で、格安で不妊手術が受けられる。

ここにいる子たちは、私が責任を持ってさくら耳にしてあげよう、との決心の上で、猫川さんに相談した。
やはり気がかりだったのは費用の面だが、かなり負担が減ってありがたい。

そして私の一番の懸念は、ロシアンブルーのような毛並みのグレのことだった。
グレは多分生来と思われるが、右後脚が不自由だ。
初めて見た時は、後脚を引きずっていた。
その後段々目立たなくなったが、右後脚だけ細く、動きがぎこちない。
グレが廃材の中に埋もれて、もがいているところを見たことがある。ようやく抜け出たものの、見ていてハラハラし、不安が募った。
またある日、よく見ると目に膿のような白い目やにがたくさんついている。
拭いてあげたいがグレは臆病なので、すぐに隠れてしまう。
何日か、グレを見掛けることはなかった。
猫風邪か目の病気だろうか。
もう生きていないのではないか。
心配した。
生後2ヶ月ほどのことだ。
暫くして、グレは姿を現した。
目は、綺麗になっているように見えた。
くーちゃんがケアしたのだろう。
ほっとしたものの、薄暗いところで写真を撮ると片目が光らない。写真を拡大してよく見ると白い濁りがある。ひょっとしたら見えていないかも知れない。
お外で生きて行かなければならないのに、大丈夫だろうか。足も目も不自由なんて。
1人でヤキモキした。
兄弟のキジ白ナイトは、チュールを袋ごとガシガシ食べようとするくらい元気で、私にも慣れてくれたが、グレはいつもくーちゃんに引っ付いていた。
母性溢れるくーちゃんは、グレが不憫なのだろうか。グレを抱き抱えるように舐めている姿を、何度も見かけた。とても微笑ましくあると同時に、グレは独り立ちが出来るだろうかと心配でもあった。

くーちゃんとグレ

そのグレが捕獲器に入った。
私の古い知識では、ナイトと共にまだ手術はできない月齢なのではと思ったが、今では安全に出来るという。
グレとナイトときーたんは猫川さんが、直ぐに連れて帰ってくれた。
ナイトときーたんは手術を終えて、翌々日の朝、戻ってきた。私が出迎えた。
そしてグレは。
2度とその場所に戻ることはない。

猫川さんが、里親を探してみましょうと言ってくれたのだ。
兄弟のナイトと分けてしまうのは、心苦しいのだけれど。
猫川さんは言った。
よくわかっている。仕方のないことだ。
全ての子達を、お家に入れられるわけではない。

ハンデのあるグレもお家の中なら、大丈夫。
本当に良かった。
猫川さんから名前の相談をされた。
グレの毛色にちなんでいくつか提案した中から、猫川さんが命名してくれた。
ラピスラズリ(ラピス=石、ラズリ=青)から、ラズ君。
グレからラズ君へ。
またその先に、違う名前があるだろう。
くーちゃんママとくつろいでいた、グレの姿を思い出す。
もう2度と会えないんだなあと思うと、実はとても寂しい。
でも、
ラズ君、幸せになれるね。
本当に良かったね。

どうにも歳をとると、涙もろくなっちゃっていけないなあ。

あ、まだ女子チーム残ってました。
キジベイビー達もね。
まだまだファイト!の日々が続く。

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