祈り part1
実はこの半年余りの短い期間に、いくつものお別れがあった。
お外猫たちとの、である。
お外猫たちの生きる環境は、厳しい。
短命は、外で生きる子たちの運命と言ってしまえばそれまでではあるが、信じ難いような出来事もあった。
そのことについては、気持の整理がまだついていない。ひょっとしたら、ずっとつかないかもしれない。私の記憶がある限り、忘れることはないだろう。
改めて人間の愚かさと、残虐さを知った。
これ以上は書くことが出来ない。また泣き続けてしまうから。
金目銀目の白猫のしろちゃんとも、5月にお別れとなった。
以前書いた、飲食店の敷地内にいたしろちゃんに会いたくて、毎日のようにその近所をうろうろしていたが、このままでは怪しいおばさん確定だろうと、思い切って友人と一緒に、そこの飲食店に潜入?した(客として)。
ママさん1人で、切り盛りしていると言う。
気さくなママさんで、取り敢えずは安心した。
ママさんは、しろちゃんはお腹が大きいのだと言う。
確かに近くで見ると、そのように見受けられる。
何匹かいるそこの猫ちゃんたちは、皆、避妊手術を受けていない。
勿論、思うところは多々あるが、よそ様の敷地内でもあるし、私に意見する権限もない。それとなくさくら耳のことも話したのだが、スルーされてしまった。金銭が絡む問題でもあるので、迂闊なことは口にできない。
動物愛護センターの人も訪ねてきたことがあるらしいが、地域猫の申請は断ったと言っていた。どういう理由かは釈然としない。
80歳とご高齢でもあるし、お外の猫に対する認識は、私とは大きく隔たりがあって如何ともし難い。
取り敢えず、敷地内に立ち入らせてもらうことについては、快く許可していただいた。
複雑な気持ちのまま、毎日のように猫たちを見守っていた。
小柄なしろちゃんのお腹はどんどん大きくなって、4月の初め頃から姿を見かけないようになった。
多分、どこかで赤ちゃんを産んだのだろう。ママさんも、どこで出産したのかは知らないようだった。
その後、2週間後くらいに久しぶりにしろちゃんを見た。
呼ぶと寄ってきて、寝転がった。
お腹はぺたんこになっていて、ひどく痩せているように見える。きっとお産した後、体力を使って大変なのだろうと、その時は思ったのだが。
さらにその10日後くらいだろうか、仕事の帰りにしろちゃんをまた見かけた。
呼ぶと寄って来たが、涙と鼻水で顔が汚れていて、くしゃみを連発している。
チュールをあげると食べてはくれたが、背中を撫でると、ゴツゴツとした骨が手に当たった。
かなり痩せてしまっていた。
猫風邪と見当はついたが、どうしたらいいのだろう。
春だというのに、梅雨時のような本格的な雨の日が続いていて、気温も低めだった。
赤ちゃんは、どうなったのだろう。
お産で体力が落ちているところに、不順な天候が拍車をかけて、体調を崩したのだろうか。
家に帰っても、落ち着かなかった。
次の日は日曜日。
私は仕事だし、動物病院もお休みだろう。
どうしたらいい?
次の日の朝、出勤前にまた会いに行った。
しろちゃんは、飲食店の左隣のビルの1階にある、駐車場にいた。
肌寒いような気温の中、じっと座っていた。
真っ白だった毛並みは、見る影もなくひどく汚れてしまっている。
チュールを差し出しても、食べたくないと言いたげな顔で、私を見上げて小さく鳴いた。
身体をタオルで拭いたが、嫌がって逃げてしまった。
仕事に行っても、落ち着かない。
ふっと、ある獣医さんを思い出した。
往診を中心に診察をしている獣医さんで、どこにでも来てくれるらしい。
外の猫も診てくれる。
以前、公園の猫が怪我をした時にも、公園に来てくれたと聞いたことがある。
確か、日曜日も診察してくれたはずだった。
仕事の合間をぬって、獣医さんに電話をして、夕方にその飲食店に来てくれるよう、頼み込んだ。
近くに住む友人に連絡して、私が行くより一足早く、ダンボールと洗濯ネットをしろちゃんのところまで持って行ってもらい、私が行くまでそこで待っていてくれるよう頼んだ。
仕事が終わる前、友人から連絡があった。
ママさんと話したらしい。
ママさんはしろちゃんの姿を、お昼以降は見ていないと言ったらしい。
ひょっとして間に合わなかったのだろうか。
獣医さんとの約束の時間まで、1時間あまりしかない。
しろちゃんは、姿を現してくれるのだろうか。
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