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英国パブの話をしよう

日本人はお酒を愛している
もしかすると日本の場合酒を必要としている、といった方が適切なのかもしれない笑
まだお酒が飲めなかった2回生の頃、平日の昼間に大阪の梅田の地下街で見た光景は今も忘れられない
サラリーマンたちがぎゅうぎゅうに席に座り大きな笑い声とビールで地下街全体が包まれていて地上とは雰囲気も時間帯もまるで違うように思えた
つまり私はお酒を必要とする国からお酒を愛する国へやってきたわけで、彼らの文化をせっかくなので書き留めておこうと思う
イギリスとお酒の関係は、歴史、文化、社会の全てに深く根差している
私はバーでアルバイトをしていた経験もあってなのか、お酒に対してもそこそこの愛着を持っている
でもこの国のお酒に対する熱には目を見張るものがある
既にこの2ヶ月で彼らのその熱意に圧倒されている
週末は特にすごい
冗談だと思われそうだけれど私はここ2ヶ月の金曜、土曜の夜、彼らの酔っ払った声やパーティーの騒音で不眠になっている
もう慣れたし金曜日と土曜日に飛ばしすぎた町中が日曜日には静けさに包まれて、「彼らにもちゃんと仕事や学校に備えるっていう考えがあるんだな」と愛おしくすら感じるようになった


週末、パブと化す電車


寮の共有キッチン


スーパーのお酒売り場
これが3レーンある、3つで1200円とかワインが1000円台で買える


ロンドンでは「ジンの川」が流れている

18世紀にジン法という飲み過ぎ防止の法律を作ったほど酒好きな国民
イギリス人にとってパブに行くことはハードルが低い
イギリスではパブは「第2の家」と呼ばれ、昔から人々の情報交換の場所、友人との話に花を咲かせる場所、そしてフットボールを見て全力で歓声を上げる場所
またパブでの出会いをきっかけに仲良くなる人ができたり、フレンドリーな紳士からありがたいお話を聞ける場所でもある
様々な用途で社交場として機能し人々に愛され続けている
日本でいう居酒屋だろうか
最近では伝統的なエールやラガーだけでなく、クラフトビールが若い世代を中心に人気になっているらしい
ちなみに学生の間では「セックス・オン・ザ・ビーチ」も人気
確かアメリカで流行ったお酒でなかなかパンチのある響きで初め聞き間違えを疑った笑
ウォッカをピーチ、オレンジのリキュールで割って楽しむ
まだみた事ないけどセックス・イン・ザ・ジャングルっていうココナッツアレンジもあるらしい



これは確かチョコレートとオレンジのカクテル


これはシードル
私のお気に入り「怒った果汁園」、不思議な名前


毎日がハロウィーン

イギリスにいると本当におかしな格好をしている人々を見る
特に学生なのだけれどハロウィーンでもないのに鶏や有名歌手、ときにはダンボールの仮装(本当になんの仮装もする笑)をして歩いている光景を見る
彼らの目的地は紛れもなくクラブかパブである
誰かの誕生日や婚前パーティーの場合、仮装をしてパブ巡りをするのが定番
新郎や新婦がヘンテコな動物の衣装を着て友達にからかわれるのが恒例になっている
さらに面白いのが大学生のパブクロール(Pub Crawl)という文化
学生が何軒ものパブを巡るパブクロールでは、ユニークな仮装が必須という暗黙のルールが存在する
テーマを決めて仮装することも多い
とにかく何でもあり!!


週末仮装をしてクラブに並ぶ学生
1°でも平気で肌を露出して並ぶ

パブ激減

最近パブの数は急激に減っていてパブの閉店が社会問題になっている
地元紙によると一部の州では3日に1店舗の頻度で店がたたまれているらしい
「パブが閉じると、その地域の魂が消える」というようにパブはその地域のアイデンティティや長年の歴史を写すものであり、それ故「たかがパブの閉店」では終わらせられないのである
この背景には様々な背景がある
理由のひとつに健康志向の高まりがある、以前よりもノンアルコールビールやアルコールフリーのカクテルが以前よりも広く受け入れられるようになった
またコロナ禍の不況から立ち直れていない店舗が多いこと
さらにパンデミックをきっかけに家飲みが流行り、それが習慣化してしまったことなどが挙げられる
さらにお酒には重い税金がかけられていてパブの値段も上がり続けている
これも人が離れる要因の大きな部分を占めているといえる
ちなみに、もし閉店の時間までパブに滞在すると「あと一杯だけ」を必死に注文する客を見られる
イギリスのパブには「ラストオーダー」という文化があって閉店時間前の金の音と同時に多くのイギリス人が慌ててカウンターに押し寄せる光景が広がっている
こんな感じで若者の購買行動の違いから伝統としての存続が危ぶまれるパブ
とはいえ週末には信じられない数の人がパブを目指して歩いていくところを見る
何があっても週末のパブがやめられないのがイギリス人
週末に近づくにつれて街全体がそわそわしてきて皆んな全力で週末を待つ、そんな雰囲気

ビールを片手に赤い顔で人生を語り合うイギリス人の姿は、まさに「お酒とともにある国」の象徴
イギリス人は冷たく硬い印象を持たれることもある
1度パブに入ってみると、彼らのお茶目さに出会えると思う
お酒にまつわるユーモアやトラブル(目を瞑りたくなる失敗談も含め笑)はイギリス文化の一部、そこにある温かさとユーモアも、この国の魅力なんだと思う


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