いじめを受けて限界に達し、警察を呼んだ。いじめの中心人物は学校から消え、クラスメイトから恐れられるようになった。しかし、風紀委員や学級委員、生徒会などの美少女から好まれ、興味を持たれた第12話 言い争いは続く
「そろそろ白中から離れたらどうだ?」
「それはこっちのセリフだよ」
架純と祐希は未だに言い争う。
流石に教室の中ではない。
しかし、両者ともに晴斗の左右の腕へ抱きつきながら言い争いを行う。
つまり、3人横に並んだ状態で言い争い中だ。
3人は時間を掛けて昇降口で肩に履き替え、ようやく校門に差し掛かったばかりだ。
「このままでは拉致が明かないな。それなら白中に聞くのはどうだ? 」
「雫さんにしては妙案だね。賛成」
2人の意見が一致した。
「「それで」」
「「どっちと一緒に帰りたい?」」
上目遣いながらも、架純も祐希も凄みのある顔で疑問を投げ掛ける。
表情や声のトーンから圧を感じる。晴斗にプレッシャーのように押しかかる。
(えぇ〜〜。どうしてこうなる?)
助けを求めるように、晴斗は周囲を見渡す。
幸か不幸か周囲には人1人存在しない。
人払いの術が発動中ではないか。そんな愚かな疑いを掛けたくなる。
それほど修羅場に晴斗は遭遇する。
ジーー。
真剣な顔つきで下から、架純と祐希は晴斗を見つめる。まるで気持ちを伝えるように。
(どうすれぼいいんだ〜。誰かヒントを授けてくれー)
胸中で激しく嘆くが、救世主は誕生しない。残念ながら漫画や小説のように現実は都合よく展開しない。
必要な時に必要なものが揃わない。これが人生でもある。
「どうやら白中は困ってるようだな」
「うん。そうみたいだね」
晴斗の困り顔から、架純と祐希は心情を把握したようだ。
晴斗にとって素晴らしい気遣いだった。
「今回はお預けにしないか? 学級委員の野末」
進んで、架純は晴斗の右腕から距離を取る。
「仕方ないね。白中君を困らせることは私も避けたいから」
呼応して、祐希も晴斗の左腕から離れる。
ようやく晴斗の腕は架純と祐希から解放された。
だが、胸や手の柔らかい感触が消えた直後、何とも言えない名残惜しさが生まれる。
もう1度、胸や手の柔らかさを堪能したいと願ってしまう。
「だが、次は譲らないからな。あたしだけが白中と一緒に帰る」
「私もそのつもりだから」
2人とも目が笑ってないが、笑い声を上げた。
晴斗にとって彼女達の行動は奇行だった。