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「自分の影」哲学小説

鳥海 智也は、自分の影に悩んでいた。彼の影は、彼が思っていることや感じていることを口に出してしまうのだ。それは、彼が小さい頃からずっとそうだった。彼は、自分の影が他人に聞こえないように、常に口を押さえていた。しかし、それでも時々、影が彼の本心を暴露してしまうことがあった。

例えば、中学校の時、彼は好きな女の子に告白しようとした。しかし、その瞬間、影が「本当は怖いんだろう?断られたらどうするんだろう?」と言ってしまった。女の子は驚いて逃げてしまい、彼は恥ずかしさと悔しさで泣いた。

また、高校の時、彼はサッカー部に入った。彼はサッカーが好きだったし、仲間と一緒にプレーするのも楽しかった。しかし、試合の時、影が「本当は下手くそだろう?ボールを取られるんじゃないか?失敗したら笑われるんじゃないか?」と言ってしまった。彼はプレッシャーに負けてミスを連発し、チームメイトから非難された。

そんな風に、影は彼の人生を台無しにしてきた。彼は自分の影を憎んだ。彼は自分の影を消したかった。しかし、どうやっても消せなかった。

ある日、彼は大学の授業で哲学を学んだ。哲学とは、人間や世界や存在について考える学問だった。授業では、様々な哲学者の考え方や主張を紹介された。その中で、彼はプラトンという古代ギリシャの哲学者に興味を持った。

プラトンは、「洞窟の比喩」という有名な話を残している。「洞窟の比喩」とは、こんな話だ。

洞窟に住む人々がいる。彼らは生まれた時から洞窟の中で縛られており、外の世界を見ることができない。彼らが見ることができるのは、洞窟の壁に映る影だけだ。洞窟の外では火が燃えており、火の光で物や人が影になって洞窟の壁に映るのだ。洞窟に住む人々は、その影が現実だと思っている。しかし、実際には現実は外の世界にあり、影は現実の一部分を歪めて映したものに過ぎない。

ある日、一人の人間が洞窟から脱出することに成功する。彼は外の世界を見て驚く。そこには色とりどりの花や木や動物があり、太陽や月や星が輝いていた。彼は自分が今まで見てきた影が現実ではなかったことに気づく。そして、洞窟に住む仲間たちにも外の世界を見せようと思う。

彼は洞窟に戻って仲間たちに話す。しかし、仲間たちは彼の話を信じない。彼らは、彼が外に出て目が悪くなったと思う。彼らは、彼を狂人だと罵る。彼らは、彼を殺そうとする。

鳥海 智也は、この話に感動した。彼は自分も洞窟に住む人間の一人だと思った。彼は自分の影が現実ではなく、外の世界に本当の自分があると思った。彼は自分の影に縛られていることに気づいた。

彼は自分の影を解放しようと決心した。彼は自分の影に向かって言った。

「もう黙ってろ。お前は俺じゃない。お前は俺の一部分を歪めて映したものに過ぎない。俺はお前に支配されない。俺は自分の本当の姿を見つけるんだ」

すると、不思議なことが起こった。彼の影が消えたのだ。彼は驚いて足元を見たが、影はどこにもなかった。彼は周りを見回したが、影はどこにもなかった。

彼は自由になったことを感じた。彼は喜んだ。彼は外の世界へと走り出した。

END


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