「逃げるが勝ち」
アメリカに留学したとき、とてもワクワク、ドキドキでフワフワしていました。大学のカフェテリアでランチをしに席に着いた瞬間、「あなた中国人?どこからきたの?」と声をかけてきた金髪美女のスーザン。
「あの。。。日本人です。。。」と私。
「へぇ~、珍しい!何の勉強しに来たの?」と矢継ぎ早に質問攻めにされ、
あっけにとられた私。
スーザンはそんな私を見て、夕食時にまた学校の'カフェテリアで会いましょうと言って去って行きました。
当時19歳の私が留学に選んだ場所はテキサス州にある女子大学でした。
またテキサス州には東洋人が少なく、珍しい存在でした。
買い物でモールに行くと小さな子が双眼鏡で私を見てきたり、すれ違い様に「アチョー」とブルースリーだかジャッキー・チェンだかよく分からないものまねをしてくるようなところでした。
そんなテキサスで初めてできた友人、スーザン。
私に色んなことを教えてくれました。
・アメリカの現実
・悪い男の子の見分け方
・アメリカ文化
・大学での楽しみ方
ある日スーザンとドライブに行き、「見て、これがアメリカの現実よ。」とスーザンが私をある地域に連れて行ってくれました。そこはアメリカとメキシコの境界付近にある住宅街でした。「左を見て。とても綺麗で立派な家ばかりでしょ。庭も綺麗に手入れしてるでしょ。でも反対側を見て。石で出来た小さな家。中にはキッチンが入らないから外で料理しているの。これがアメリカの現実」
石でできた家にはメキシコからの移住者が住んでいて、酷い扱いを受けており、道路一本挟んだ向かい側にはアメリカ人が素敵な家に住んでいる。
この事実を目の当たりにした当時19歳の私にはショックでした。
同じ地域でこんなに貧富の差があるなんて。。。と思いました。
スーザンはアメリカは移民の国だけれど、移民してきた人種にとって普通の暮らしをすることが難しく、また働き口も低賃金で問題なんだと熱く語ってくれました。
また別の日、スーザンが私を部屋に招いてくれた時のこと。
スーザンが急にアメリカが日本に原子爆弾を落とした話をし始めたのです。『あ~、あれって先に日本がアメリカ攻撃したからだっけ?謝っておこう』そう思った瞬間スーザンが「アメリカが日本にしたこと、本当にごめんなさい。残念でならない。」と泣きながら謝ってきたのです。
私も泣きながら「こっちこそごめんなさい。」とお互いに大泣きしながら、謝りあっていました。戦争を実際体験したワケではないですが、心は無意識のうちに傷ついていたんだなと感じました。
アメリカを攻撃して多くの命を奪ったこと、そして日本のために命を落とした多くの人たち。。。。二度とこんなことがないように平和な世界が続いて欲しいと願いました。
それから8年後、私はワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。
そこで韓国人の女性(ヒョンジュ)と知り合いました。私たちには共通の英語の家庭教師がいました。ある日先生よりヒョンジュと私で家に遊びに来るよう言われました。先生宅でランチを食べ、色々話しをしているとヒョンジュが戦争の話を持ち出してきました。そして「日本は韓国に酷いことをした!」と責めてきました。正直、『またか~』と思いました。アメリカでも韓国人の友人が戦争の話を持ち出し、責めてきたからです。それも何人もです。
韓国での教育がより一層反日感情を高めているという話も聞いていたので、韓国の教育に問題があるんだろう、くらいに思っていました。
ヒョンジュがまだ戦争の話をしているので、「大げさに言いすぎ。」と
私が言った一言に、彼女の怒りが爆発してしまい、先生が「落ち着いて」と慌てて仲裁に入ってきました。
私はふとアメリカのスーザンのことを思い出しました。
そしてスーザンのまねをして「私たちがあなたの国にしたこと、本当にごめんなさい。」と謝ったのです。するとヒョンジュは泣き出して「私こそごめんなさい。」と言ってきたのです。
戦争は終わっても、まだまだ人の心は傷ついたままなんだなぁとまた実感しました。
スーザンのお陰で、戦わずに逃げる(一歩退く)ことも大事だなぁと学びました。まずは相手の痛みを受け入れることで、その痛みを共感、共有することで痛みを和らげることができ、人間関係も上手くいくことを学びました。
そして戦争により未だに多くの人が心を痛めているのだなぁと知り、戦争のない平和な世の中が続いて欲しいと願いました。
因みにヒョンジュと和解した後、ヒョンジュがトイレに行き、
その間オーストラリア人の先生と私の二人きりになり、先生が”You are
so beautiful!"(外見ではなくヒョンジュに謝った行動に対して)とブチュッとキスしてきたのです!先生は70代のおじいちゃん。石で頭を殴られたくらいショックでした。しかもその後「おれ、まだまだ行けるよ!」とベッドに誘われた時には、どん引きして、トイレから出てきたヒョンジュに速攻「帰ろう!」と先生の家をあとにしました。
もちろん家庭教師の契約も解除しました。