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午前3時と午後八時の夏

銀色に輝く月がみたかったんだけど、こたびの晩は幾重かに薄い幕が張ったようなまた円でも欠けでもない風流と言えば風流なような
(わたしの記憶では琳派のような美しさであったがだれもそんなこと気にもとめない様子で実はそこに驚いてしまう)

翔子はその月が、まだ暮れきっていないのかとおぼしき闇いろの間から明るい闇いろがそこだけ透明感のあるコバルトブルー色になっていて
対比かのように金色ジャガイモスライスをカラリと上げたあの菓子のようなそれでいて明日はあめなのかと気をもまさんばかりのうすいベール二枚ほどかけた(ベールのお陰でさらにキラキラがちりばまっている)金月をながめていた

みな通りすがりのもはあぶない酔っぱらいが空を見上げてフラフラしているさまはたまた得たいの知れない者を避けたいかのように
きっと脳裏ではヤベちょっと面倒なひとのようなものがみえる
触らぬ神に祟りなし、で通りすぎようとしているに違いない。


そこにうまい具あいに差し込む下駄の音とおぼしきガチャガチャの足音はしごく嫉妬でいじわるくいじをはって出た行動にちがいないその狂いが生じて自分が追い出して後家になったであろう元清吉のつまお和だった。

あんなにやさしかったのに翔子はお和が今やただの雉になりちゅうやかまわず
嫉妬に明け暮れ365にち干された布団を叩き続けるお和のなんのために干してあるのかわからないようなその布団。ただのドラの代わりでしかなくなっている煎餅布団

翔子はそのお和のふとん銅鑼の音でさえ風流なその景色がうみだした作品のように感ずられたのだった。


めんめこひんじ


呪文を唱えたその呪文は
魔除けのじゅもんだったので残念ながら魔がきえてしまったのでした。



おしまい。

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