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青天の霹靂43(廉が解けなかった謎)

廉夏と冬眞が犯人を警察に引き渡したことを言ったとき、観月は廉に抱き付き、ようやく泣けた。
やはり、泣かないように堪えていたらしい。
観月の涙につられるように、また廉夏も泣いた。
それに、男たちは微笑んだ。
「でも、お前、相手のトップさんに、凄い難問を出したな」
「えっ、何が?」
「導くか。簡単に言ってくれる。それは、私にも、出来なかった難問だぞ」
廉は眠った観月を、膝に抱きながら言う。
「ねぇ、廉兄の昔話聞かせてよ」
廉夏の急な問いかけに廉は驚く。
「あれは、俺が中学生の頃だ」
「ふ~ん、廉兄の中学生の頃、なんて想像出来ん」
「俺には、3人のその当時仲間がいた。潤(ジュン)と勝人(マサト)と俺って言うな。それでグループを作っていた」
「えっ、日向じゃなく?」
廉夏は驚く。
「ああ、あいつはその頃、警察学校を目指してもう勉強してた。だから、別だ」
「そっかぁ、夢へとまっしぐらだね」
「それに対して、俺はだめだめだったな。でも、その頃、ある組織にも属していたよ。その組織を作った人は、じい様のかつての仲間だったよ」
「組織?」
「ああ。その組織で、さっきお前が言った、平等について組織内でも、揉めてな。今の時代なら、頑張れば何とでもなると言う者と、頑張れないときも有るって言う者で別れた。で、どこまでを助けるかで、だいぶ揉めてな」
「で、どうなった?」
「その答えが出る前に俺は組織を抜けているから、分からない」
「嘘だ。廉兄なら、調べているはずだよ」
「いや、その頃、俺もじい様から学ぶので忙しく本当に調べてない」 
「そっかぁ。廉兄も、ある意味夢にまっしぐらだったんだ」
「そうだな」
廉は笑う。
「で、後から、聞いた話では潤が勝人とその頃揉めてたらしい」
「何で?」
「二人の考え方の違いかな?」
「考え方?」
「そう。グループも大きくなった。で、もう時代に合わななくなったと、潤とグループを作った人はグループを解体させようとした矢先、勝人がそれに反発した」
「どう?」
廉夏が聞くと、廉は悩みながら、口にする。
「あいつには、誰が、一番とか無かよ、たぶん、あいつは一握りの人が幸せを掴むのではなく、みな平等を目指したんだ」
廉夏は、それに首を傾げる。
「その考えは立派かもしれないけど、幸せになろうと努力している人と、幸せに誰かがしてくれるだろうと他人に任せきりの受動的な人と同じなんて、本当にそれが平等っていえるのかな?」
廉夏には分からない。
何を持って平等とするのかが、分からないのだ。
それは、それだけ子供と言うことかって廉夏が思ったら、廉も笑って言う。
「俺も未だに、分からないよ。だから、導くって、難しい問いだと言ったんだ」
廉は苦笑いする。
「これは難しい問いかもな。確かに最低限の保証をっていうが、何もしない、生きるとは言わない奴らを、頑張っている人が支えなければいけないものかってね。それが、本当に平等と、言えるのか? ってね」
「難しいね。でも頑張れない立場に追い込まれているのも、辛いよ」
「そうだな。諦めるしかなかったんだからな」
「そう、なぜ、そんな立場におい落とされたのかは、みんな違う。だけど、皆これだけは一緒。はい上がりたいと望む気持ちは。ただ、今はその人達には休息が必要なだけ。いずれ、はい上がるわ」
「そうかもな」
「でも、こう考えると、廉兄って、潤さんよりだね」
「ああ、そういわれれば、俺はどちらかというと、この場合、勝人より潤よりだな。だって、助けるのにも限界があるだろう? どっかで仕切を付けなきゃな」
「でも、廉兄って、友として、潤さんと勝人さんとの間に明確な差を付けていたよね。勝人さんもそれが、分かって、キツかったよね」
廉夏に、思ってもいなかったことを言れ、廉は廉夏を驚いたように見る。
「そうでしょ? 勝人さんは苦しくても悲鳴を上げる場所がなかったんでしょ?」
「そうだな、その通りだ。お前に言われるまで気づかなかったよ。勝人、お前はずっと前から、悲鳴を上げてたんだな。すまない。今、それに気づいたよ」
廉は、今気づいたように言う。
「でも、確かに全員を助けることは、無理だけど、潤さんと思いが重なりそうなのに」
「潤はそこは譲らなかった。幸せになろうとしてない人に手を差し伸べたりもしない。幸せになろうと、足掻いている人にこそ、僕は手を差し伸べるっと、言っていたよ。それに対して勝人は怒った。人には、頑張れないときもあると。これは、お前と一緒だな。こう考えると、お前は勝人よりかもな。面白いな」
廉は、本当におかしそうに笑う。
「そうだよ。でも、全部持ち上げてあげるわけじゃないよ。この点では、潤さんたちよりかな? だから、助言だけ。道標だけして上げれば、後は自分で歩けるよ。でも、道標だけね」
廉は廉夏が言おうとしていることが、分からず首を傾げる。
そうすると、廉夏は言葉を足そうとする。
「う~ん、そうだな? こういう時なんて言えばいいんだろう」
それに、冬眞は付け足す。
「つまり、人は、道を誤っても気づかない人が多いから、だから、進むべき道を示して上げるだけで良いと言うことでしょう。誰もそれ以上のことなんて求めてないんです。だって、人はそんなに弱くない。だけど、そんなに強くもありえない。だから道標だけはしてあげないと、自分が何処に行けば良いのか分からなくなる。だけど、それ、以上やると、なし崩しに頑張ることを忘れて、甘えてしまいます。結果、自分で立てなくなる。それは、助けるとは言わない」
うんうん廉夏は頷く。
廉は何かを考え、冬眞の言葉に納得する。
「そうだな」
「うん、だから少しでいいんだよ。求められていることは以外に少ないと思う」
「そうかもな」 
「無限にある道だから、かえって、わからなくなった人も多い。でも、逆にこうも言える。どの道にもいつでも挑戦はできると」
「だが、その道が見つけられない奴は?」
それに面白そうに、冬眞が聞く。
「いろいろ試してみて、自分に合う道を探せばいい。それでも、駄目だったら、休息の時間なんだよ。そう言うときは、無理に何かやらなくても良いと思う。何も考えず休むときなんだよ。ただ、それが、当然って思うのは間違い。終わりは必ず来るわ。以外に、その時間は短いよ。それを、心得なきゃ駄目」
「そうかもな。でも一度甘えると難しいだろう」
「そこなんだよね、どうやって分からせるべきか。う~ん、難しいけど突き放すしかないのかな?」
「突き放された方は傷を負うぞ」
「傷ですめば、めっけもの。突き放す方も、同じくらいの傷を負うもの。負ってもらわなきゃ、困る」
「ふ~ん、そんなものかね?」
「いつまでも逃げ場があっちゃ行けないの。ある程度、休んだら、自分から動かなきゃね。その子の為にも」
甘さのない、言葉を力強く言う。
「意外と厳しいな」
廉は笑う。
廉夏は、ツーンとそっぽを向きながら、言う。
「甘えられるのは、ほんの一時よ。ずっと甘えられたら、迷惑よ。甘えるのは、もう許されないと、いい加減知るべき時なのね」
「甘さはないな」
「甘さなんて必要ない。そこで、甘くなれば、その子は一生、自分の足で立てなくなるわ。それを考えたら、厳しくいかなきゃ。一人で立てるようになるのが、重要だし、本人の喜びにつながるって、いずれわかるはずよ。そうでしょ? それに、突き放す方も傷を負うわ」
「そうかもな」
「潤も勝人に対抗できるだけの力はあったが、あいつ仲間を撃てなかった」
「そっか~」
「あいつは、勝人は、潤の願いを叶えたよ。でも、俺たちの中で一番繊細だった勝人がこれに耐えられるわけ無い。本当に、すまない。お前に耐えられるわけ無いのに、俺は、全然気づかない振りをした。まだ、間に合うか勝人?」
廉は言った。
「間に合うかじゃない。間に合わせるのよ。廉兄」
廉が勝人を終わらせてあげようと思っていることに廉夏は気付く。
だから、止めたかった。
「それは、勝人さんに会ったときに決めなよ。たぶん、廉兄の話を聞いている限り、そんなこと、友達に絶対させないと思うよ。だから、廉兄のやるべきことは、ただ一つ。勝人さんに
道を印してあげることだよ」
廉夏がにっこり笑って言えば、廉は弾かれたように、廉夏を見る。
「そうだな。それは、俺がしなければ・・・」
「そうそう」
廉夏は、満足そうに頷いた。
「勝人さんを助けてあげて」
「ああ」

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