青天の霹靂40(日向の家族殺される2)
早速、廉夏の家に帰った。みんなは家に帰ると、廉夏はまるで食いつくかの様に聞く。
「何か分かった、冬眞の方は?」
その廉夏の食いつきに、冬眞は笑う。
「『ただいま』が、先でしょ? って、その子は?」
寝ている観月を指し言う。
「観月ちゃん、日向の姪っ子」
「そんなこと、如何でも良いわよ。で、如何だった?」
「取り敢えず、目星いのはなかったと思いますよ。まだ、事件が起こってから時間が経っていないので、情報待ちですね」
それを聞き、廉夏は肩を落とす。
「そっかぁ」
廉夏の返事に冬眞は何かに気付き、「廉夏、ちょっと」と言って、観月を布団のある部屋で寝かせると、廉夏を部屋に連れて行く。
冬眞は廉夏の手を引く。
「う~ん、何? 別に逃げないよ」
「ちょっと、良いですか?」
「何?」
自分達の部屋へ行った廉夏を待っていたのは、予想外のことだった。冬眞が廉夏を抱きしめ言う。
「泣いて下さい。涙を堪えないで下さい」
「バカ~」と言って、廉夏は泣く。
「泣かないようにしてたのに。冬眞の馬鹿。責任取りなさいよ、あんた」
冬眞は笑って言う。
「取りますよ。僕でよければ。何時でもね。本当は泣きたいのでしょう? それは、生きている者にしか出来ないことです。だから、こらえないで下さい」
「でも、私が泣くわけいかない。観月ちゃんも泣いてないんだから、泣くのは、犯人が捕まってからにする」
そう言って、廉夏は涙を拭(ヌグ)い、強く戦うモードになる。
「その時は、冬眞は付き合いなさいよ」
冬眞は「はい」と笑いながら、答える。
「そのためにも、今は犯人探さなきゃね」
「そうですね。探しましょう。それが、日向さんの家族の供養になりますからね」
「供養か? そうかもね。供養したいしね」
「ええ。その後、泣きましょう? 心行くまで。その時はおつきあい致します」
「有り難う」
そこに、廉が帰って来る。
帰って来て、開口一番に聞いたのは、観月のことだった。
「観月の安否は?」
珍しく廉が焦っている。
「廉兄、落ち着いて。今は、寝てる。日向が、付いてる」
それを聞いて、廉はホッとひと安心する。
「良かった」
それに、冬眞は何故だか違和感を覚えた。
確かに、友人の姪だが、ここまで安心するのも、ちょっと変だ。
廉夏も不思議がる。
「でも、廉兄。いつも、観月ちゃんに近付かないのに、今回は不思議だね」
「今回は置かれた状況が違うだろ」
真面目な顔で廉が言う。
「それに、私は、あの子が、ちょっと苦手なんだ」
「何で?」
「魂の色が母さんと同じなんだ」
言いにくそうに言う。
似てるじゃなく、廉は同じとはっきり言い切った。
冬眞は「だからか」と納得するが、納得出来ない者もいた。
それを聞いた廉夏は、怒鳴る。
「同じだから、何だと言うの。あの子は、観月ちゃんと言う別の女の子よ。母さんじゃないわ」
廉夏も、ようやく廉が近づかなかったわけを知る。
それに、ハッとしたように廉は廉夏を見る。
「何、鳩が豆鉄砲くらったような顔をしているの? いくら魂の色が同じでも、別人なのよ。あれは、母さんじゃないわ。観月ちゃんって言う5歳の女の子なのよ。以前の人生では、自分が殺され、今回は家族が殺されるシーンを観るなんて辛すぎるでしょう」
「そうだな」
そう言い、廉も観月の眠る部屋へ行く。
廉が行くと、観月はぐずり始める。
「大丈夫かい?」
廉が優しくそう聞くと、観月は廉に飛び付いて来る。
男性はダメだったのに、不思議なものである。
「おっと」
と後ろに手を付いて、廉は受け止める。
「どうした?」
観月は廉に飛び付くと、何も言わない。
ただ、肩口に自分の頭を押し付け、首を横に振るばかりだ。
廉は観月を抱き締めると言う。
「お前のことは、これから俺が守るよ」
そう言われた観月は、嬉しそうに廉にさらに抱き付く。
「おいおい、保護者の前でプロポーズか? まだ、早くないか?」
そう日向が言うと、観月はプーッと膨れて日向を睨んだ。
「あんまり、妬くなよ」
日向はいじけたように言う。
「うっせぇ~」
ちょっと涙目になっている。
「おじちゃん、ごめんね。観月、このお兄ちゃんのものになる」
そう言われ、廉も驚いた。
「責任取れよ」
日向が、笑いながら言った。
「責任取ってね」
観月も可笑しそうに言う。
ガシガシと頭を掻くと言う。
「お前の気持ちが変わらなければな」
「うん。きっとだよ」
「どちらかに好きな人が出来たら、その時は、相手を祝福すること。出来るか?」
「やる」
「よし、約束だ」
「うん。でも、観月、廉兄ちゃんをもう放さないから」
「それは、恐いな」