気まぐれな賽は投げられた
(前回からの続き)
トライアル施設での物販は、原則禁止。事前に了解を得て家主サイドがOKしたモノなら売っていいというが、かかる時間と手続きを考えればなんともまどろっこしい。
だいたい施設の場所が幹線道路から外れていて、地元以外の車や人の往来がない。見かけたからちょっと寄ってみるか、というわけにはいかないのだ。本来が、モノを売る場所には向いていない。
30㎡の空間とは言っても、その半分はオーバーハング屋根(2階部分が1階よりも外側へ張り出した形状)で、実質的には屋外になる。屋内に限れば5坪程度の、さらに限られたスペースしかない。
その一角に事務作業する場所を設ける必要もあり、ものを売るにはますます不向きだ。
近隣の町からわざわざ車で買いに来たくなるほど魅力的な商品など、思いつくはずもない。というわけで物販は、候補から外した。
この日の会議では、オープンカフェでいくかと一応の結論を見る。
オーバーハング屋根を活用すれば、ペットをお散歩中のご近所さんなどが寄ってくれる可能性がある。ワンちゃんと一緒にコーヒーを飲める店はざらにないから、口コミで広まればそこそこ集客も望めるんじゃなかろうか。
この場所とこの条件で、間違っても利益を生む事業など考えられない。目的は「道の駅」に向けたトライアルだから、行政が求める実績も、売上ではなく施設の稼働率ということになる。
カフェにしたってそんなに多くの人数を詰め込めるはずもなく、お客さんの入りをパーセント表示の稼働率にすれば、ホレこのとおり利用されていますよとの実績は示せる。
なんたって向かいにあるのが、「ちゅ~るスタジアム清水(清水庵原球場)」である。
(今は商品より不祥事が全国的に話題の)ペットフードのメーカーがネーミングライツを取得しているし、場合によっては提携できる可能性だってあるだろう。一般の来店が難しければ、ペット同伴というように対象を絞ったニッチな設定でも悪くないはずだ。
市としてはこの提案に乗り気だったが、家主側から難色を示された。「ペット同伴」をうたって、いろいろな動物を持ち込まれても困るというわけだ。そういえば1月のフェスでも、フクロウ連れてきた人いたよなぁ。過去、イグアナをペットにしていた知人もいたし。
結果として、屋根のある外側で、犬を連れたお客さんが憩うまでダメと言はわないが、それをうたい文句の集客はトラブルになりそうでやめてほしいという。
全国的な組織だから、うかつにリスクを冒せないという慎重姿勢は理解できる。一方で、いかに集客するかを考える立場は先方も一緒だろう。今後何度か協議を重ね、合意点を探る必要がある。
直近で最大の課題は、市議会で補正予算が成立する9月である。
ここを通すためには7月半ばまでに、予算額とその根拠が示されていなければならない。
え?2日後には6月になっちゃうじゃん。あとひと月半のうちにオープンカフェの企画をして、予算取りの根拠をつくれってこと?
「イスが何脚で、テーブルがいくつで…」あ、そこまで。
お役所もさんざん待たせておいて、いきなりの追い込み大サービスしてくれるじゃないの。気まぐれなこったぜ。
というわけで、全ては走りながら考えようということになった。補正が組まれれば最短で、年末か年始の開業も不可能ではない。
小さいとはいえ、水回りの改修や駐車場の確保、人件費・光熱費・什器・消耗品・車両管理費など、積み上げればそれなりの予算になる。どこまで大盤振る舞いしてくれるかは不明だが、額が大きくなるほど行政も後戻りしにくくなるはずで、ここが最初の山場だ。ひとまず、うーんと盛っちゃおう。
突然話は変わるが、ペドロ&カプリシャスはリーダーの「ペドロ梅村」と「カプリシャス(気まぐれ)」という意味らしい。
気まぐれか。
気まぐれ、楽しいよねぇ。
気まぐれに20代でやっていた客の来ないジャズ喫茶の再現を、60過ぎた今、ここでやってみるか。
月曜は懐かしの歌謡曲、火曜日はハードロック特集とか、日替わりメニューにするのも悪くないな。今週は「チャーリー・マリアーノ強化週間」で攻めるとか。市民の血税を使って、オリジナル盤を買い集めるのだ。
客、来ないぞー。
いかん。実現に向け動かねればならん時に、妄想の方が大きくなりだしてる。
でも、税金でウェスタンエレクトリックのスピーカー仕入れて鳴らせるとしたら、最上級の文化事業ではなかろうか。
ターンテーブルは真鍮削り出しのベルトドライブで決まり。針はSTAXがいいんだけど、いま無いだろうなぁ。
超電導リニアで下げた静岡の評価を、MC(ムーヴィングコイル)カートリッジで取り戻すのだ。こっちの方が世界的評価を受けるかもしれんぞ。
オレいったい、何言ってるんだろう。
イラスト hanami🛸|ω・)و
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