おひまなら来てね
昨日は2か月ぶりに「清水いはらマルシェ」を開催した。9月は台風騒動(実際には影響なかったのだが)で、初の中止とせざるを得なかったからだ。
毎月開催していたものが1か月ブランクとなり、客足が遠のくのではないかと危ぶむ。前日まで続けて雨空だったし。
ふたを開けると日曜は好天、秋風涼しい行楽日和だ。まずまずの来場者数となった。
逆に出店数が減ったのは、この日は他所でもさまざまなイベントが開催され、これまでレギュラーだった店の幾つかがそちらに流れたためだ。
別に年間契約しているわけじゃないし、それぞれの判断で河岸を変えるのに何の文句もない。
逆に今回が初出店というところも2店あり、新陳代謝という意味からも出店者が固定されていないのは、悪いことでないはずだ。
そうはいっても、ブース代を収入源にしている主催者の立場からすれば、毎回参加してくれるお店というのは、やはりありがたい。
ここで得た利益が毎年1回開催される「清水いはらフェス」の軍資金(100万円程度)となり、とくにキッチンカーなど飲食関係は、相当な純益を生む。マルシェ1回の集客が500人程度なのに対し、フェスは10倍の5,000人規模になるためだ。
別に規約があるわけじゃないがそこは人情で、マルシェ参加者を優先してフェスに呼びたいと思うようになる。一見さんより馴染みの客を大事にしたくなるわけだ。
実際、原資のないフェス実現のため協力してくれているのが、マルシェに出店してくれている皆さんであるのも確かだからだ。
マルシェ開催中にお店を回ると、そのうちの一つから同様の話が聞けた。レザーバッグのワークショップ(体験型)販売をしている2人組の女性たちだ。
「私たちね、毎月いろいろ催しがあっても、ここ1本でやって行こうって決めてるの。年1回いはらフェスやってるでしょう?アレ、どうやったら参加できるんだろうって、私たちの周りでも話題になってるのよね。ここで実績積めば、そのままフェスにも参加させてもらえるんじゃないかって思ってるのよ」
そうなのか。フェスがそこまで有名になっているとは知らなかったが、それを目的に他所に浮気せず毎回出店してくれていたとなると、両者の思いは一緒になる。お互いさま、Win-Winの関係というわけだ。
「それだけじゃなくね、毎回やってると、ファンになってくれるお客さんも増えていくわけ。また来ました~って自分だけのオリジナル・バッグ購入してくれるようになるまで、私たちの商売って、時間がかかるじゃない。ここに来れば必ずやってるっていうのが、お客さんにとって大きい事なのよね」
はじめのうちは興味がなかったものでも、何度も見たり聞いたりするうち次第に良い感情が芽生えてくる心理状態を、ザイオンス効果(単純接触効果)と呼ぶ。
たとえば、初めて聴く曲よりも、何度が聴いた方が愛着が持てる。
最初は違和感を覚えたポスターや看板を、毎日目にするうちいつの間にか馴染んでしまったり、好きになったりしている。
朝のテレビ番組で新コーナーが始まったとき、最初のうち「この人、誰?」と思っていたはずが、そのうちお馴染みの「いつもの人」へと認識が変わっている。
新しい街へ引っ越して、最初は馴染みがなかった場所が頻繁に通ううち次第に愛着が湧いてくるのも、全てザイオンス効果によるものだ。
初対面の相手に対しては、自身の心の中に「防御の姿勢」が生まれる。毎日顔を合わせている人には、仲間意識が生まれる。
昔いた会社で上司から受けた教育は、営業は用事がなくてもお客さまを訪問することが大事な仕事だというものだった。
高い頻度で顔を出し、 顧客に親近感を抱いてもらうことが目的である。そうすることで実際に何かニーズが生まれたとき、顧客から相談を受けることができ、自社の商品・サービスの受注に繋がるという考え方だ。
ザイオンス効果は、単純な接触回数だけでなく、様々な心理的な影響をもたらす。
まず、繰り返し接触することで対象に対する「好意度」が上昇する。
たとえば消費者は、初めて見た商品やサービスよりも、何度も目にする機会があった商品やサービスの方を、好ましく感じる傾向がある。
繰り返し接触することによって親しみや安心感が生まれ、好意に繋がるためと考えられている。
繰り返し接触することで、対象に対してより深い「安心感」「親近感」を感じやすくなる。対象に対する理解が深まり、未知の不安が解消されることで親近感が高まるためだ。
たとえば、よく行くカフェの店員さんや頻繁に会う職場の同僚など、繰り返し顔を合わせることで親近感が芽生える経験を、誰もが持っているはずだ。
特定の対象や刺激に対して、強い印象や反応が形成される「刷り込み」現象。
たとえば、幼少期に特定の動物と頻繁に接していた場合、その動物に対して強い親しみや愛情を感じるなど、「刷り込み」によって対象への感情や行動パターンが強く形成されたりする。
このようにザイオンス効果は、単に好意度を高めるだけでなく、親近感や刷り込みなど様々な心理的影響を与え、人間の行動や思考に大きな影響力を持つわけだ。
そういう仕組みに見事ハマり(?)、来年の「清水いはらフェス」には彼女たちを始めとしたマルシェの常連さんを、優先的に招待したいと考えているところである。来年2月2日は、たくさん儲けてください。
(次回に続く)
イラスト Atelier hanami@はなのす
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