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もそっと振り返る

七五三を撮った動画のDVDを、参加者と当日の協力者に渡した翌月、近所のおじさんの訪問を受けた。地元広報紙の編集委員のお一人で、僕もそこの委員にならないかとのお誘いだ。

班長さんが月の半ばに郵便受けに入れてくれるから、広報紙の存在は知っている。というか、われて原稿を書いたこともある。
しかしこれまで、自分の地区の情報になどまるで関心がなく、ほとんど中身に目を通さないままゴミ箱にポイしていた(すんません💦)。それが今後は、読ませる側にならないかと口説かれているのだ。

今となっては、こちらにとってもありがたい勧誘である。
定期的に地区のお宅に取材に伺えば、僕が目指す「名士」への道も早まりそうだ。更にそこで動画が撮れれば、格好の練習になろうし一石二鳥である。二つ返事で承諾し、編集会議が開かれる月初げっしょの夜7時、自治会館に向かった。

初顔合わせとなったその場で図々しく、取材の動画撮らせてとお願いする。すると賛成の人もいれば、それをYouTubeに上げたいとする僕の希望に慎重な考えの人もいた。今の世の中、映像に映る背景だけで場所が容易に特定されてしまう。一人暮らしの老人宅など、狙われる対象になりかねないというのだ。
この懸念はごもっともで、解決案としてYouTubeの「限定公開」の仕組みを提案する。
「限定公開」であればURL(インターネットの膨大な情報の中から目的の情報を見つけ出すための「住所」のようなもの)にアクセス出来ない人間は閲覧えつらんが不能で、これをQRコード化して紙面に掲載する。
QRからスマホに読み込んでもらい、広報を配布した地区の人だけが見れるようにしようというものだ。

この方式は今も続いているが、ご本人の許可を頂いたものは「一般公開」の形に移行している。七五三等、児童や幼児を映したものは一切「一般公開」しないが、ペットやお庭の動画などは普通に見れるようになった。

取材を受けた側が知人に見てもらいたいと思っても、「限定公開」では映像にたどり着けない。
URLをコピペして、メールなりLINEなり添付すれば送れるが、そういうノウハウをご存じの方がほとんどいない。もっと言えば、スマホを持っている住民自体が、それほど多くない。
「井戸端会議」のレギュラーの皆さんも、固定電話か、あってガラケー。ガラケーって言っても、いま中身はスマホなんですけどね。

見る人が極力限られているのになぜ今も続けているかと言えば、それがそのまま、地区の記録として残っていくからだ。
YouTubeが永遠に続く保証はないものの、しばらくは終わる心配をしないでいい。だったら個人が管理するより、YouTubeに上げておいた方が安全性は高い(もっとも情報の内容によっては、YouTube側が勝手に公開を止めてしまう場合もあるが)。

4年近く続けていると、物故した高齢者がちらほら出てくるようになった。
公開された映像の中でなら、すでにこの世にはいないお爺ちゃん・お婆ちゃんが元気に語る姿に、いつでも接することができる。
最初の七五三に参加した男の子は、いま小学三年生だ。もちろん両親ともスマホ世代だから、ご自分たちで我が子の成長記録を写真や映像に収めているだろう。ただ、撮りっぱなしで管理されていない世帯も少なくないと聞く。デジタルデータはアナログと違い、消える時は一瞬で消え元には戻らないから、管理しないでいるのは実にリスキーだ。

YouTubeに動画を積み上げていく価値は、年を経るごとに増していくだろうと思う。それは作品の出来不出来に関わらず、見れる事それだけで、一つの価値になるはずだ。

こうして編集委員となった僕は望み通り取材を続け、動画を撮って編集することで地力をつけていくことができた。
そして一昨年の秋、編集委員のお一人が、僕に近々企画しているイベントのスタッフにならないかと声をかけてくる。
長年、道の駅を地元に誘致しようと活動している組織で、今度それに関連した催しを開くという。ついては次回の話し合いに、オブザーバーとして参加してはどうかというのだ。
(明日に続く)

イラスト Atelier hanami@はなのす

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