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二度あることは
「清水いはらマルシェ」を終えて、さっき帰宅した。遅い昼食をとって関係先にメールを送り、さてnoteやるかと思ったら、すっかり寝落ちしていた。
月1度、マルシェ開催の日は5時起きになる。
今年3月から始め、本格的な冬を迎えたのはこの日が最初だ。夜が明けない寒い時間に床から出るのは、結構つらい。これが夏だと、勝手に目が覚めるものだが。
これまでで最高の35出店となり、うち屋内が27、キッチンカーやテント販売など屋外の限られたスペースに8業者が並ぶ。それを見ただけで、これまでにない賑わいを感じる。
問題は我が庵原地域が本日「地域防災の日」にあたり、これがお街だと「そんなの出たことあらへん」の方が圧倒的に多いようだが、後ろに山を背負っている田舎で災害は、他人事にあらずなのだ。
メンバーには現自治会長やら特別養護老人ホーム理事長やらと、訓練を抜けるどころか主催する側の立場の人も複数いて、手が足りなくなるのが不安だった。思わぬ応援をもらい、何とか切り抜けられたのはありがたい限りである。
最近、マルシェによく出店してくれるオジサンがいる。具体的な商品名を紹介するのは控えるが、あるシンプルな料理一品のみのお店で、実演販売をしている。
何度も地元テレビ局から取材を受けている割とこの辺では有名人で、固定ファンも多い。
ところがこのオジサン、何かと危なっかしいのである。動きもしゃべりも、健康な人にはとても見えない。
実演販売で火を使うから、軽トラにはカセットボンベが積まれている。業務用コンロも、けっこう重たそうだ。
先月の搬入時、見かねて降ろすのを手伝うと「去年、脳梗塞やっちまって」なんて、穏やかじゃない事おっしゃる。
「運転、大丈夫なの?」「いやぁもう治まったから」
マルシェが終わり片付けを手伝うと、「脳梗塞2回もやったからねぇ」などと、さっきより回数が増えている。いやな常習者である。
無理しない方がいいよと、あまりプライベートにも踏み込めないからそう挨拶して、その日は終わった。
昨日の土曜日、そのオジサンからメールが入る。
「沢山の病気したため… 脳梗塞2回救急搬送。ここ5年で食道癌・大腸癌の手術、入院2か月。バイク事故3回、2回は当てられ転倒し怪我。肺炎。蓄膿を計6回、うち手術3回。静脈瘤手術1回等々、身体大変なので」駐車するのは、近くにしてほしいというお願いである。
お借りしている花市場は200台の駐車スペースがあるが、来場者優先で出店者は遠くの方に駐めてもらう。そこから歩いて会場まで戻る100数10メートルの距離が、辛いというわけだ。
それを伝えんがために、憐憫の情でも誘おうとしたかこれだけ病気と事故のオンパレードを羅列された受け手側としては、近くに駐めるのはいいけど、それ以前に来ないでよという気持ちになるわけである。
運転中に脳梗塞、運転中に静脈瘤破裂なんて、想像しただけで背筋が寒くなるじゃないの。
「くれぐれも無理しないように」「キャンセル料はかからないから」「御身第一にされて」など、遠回しに「来ないでね」の返事を送ったつもりが間髪入れず、
「お世話になってます。明日は宜しくお願い申し上げます。病気入院多数。麻痺がかなり酷いので、P車はなるべく近くでお願い申し上げます。わがまま言って御免なさい。宜しくお願い致します」
と、こちらの思惑の斜め上を行く逆襲をうけるのであった。
もう、知らんわ。
こわいなーこわいなー思いながら今朝を迎えると、オジサン先月と打って変わり、思いのほか溌溂としながら7時過ぎに現れた。
「大丈夫なの?」「あーもう何ともありませんから」って、言われた方は何ともあるから、積み荷の上げ下ろしまで全て引き受ける。わしゃキミの従業員かい。
どうにか無事終わり、「来年1月はどうするの?」「5日だと、まだ納品しなくちゃならいところあるから…また相談します」
そうだねー、そっちを優先した方がいいよ、こっちはもう全然!後回しで良いからと、本音は大人しくしてて頂戴の別れ際、「これ食べて」と自慢の一品手渡された。
さっき食べたけど、うまいじゃん。味加減が絶妙だ。
三度目が起きる前にこの味伝承しておいた方がいいんじゃないのと、不謹慎な思いがふと頭をよぎるのだった。
オジサン、無理すんなよ。
イラスト Atelier hanami@はなのす