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奥の舗装道

今年度から、「静岡市オクシズ地域おこし計画推進協議会」委員というのになった。
名称が長すぎて、今でも覚えられない。「オクシズ協議会」くらいに縮めてくれないもんだろうか。
昨日その初会合があるというので、静岡市林業センターまで出かけた。

経緯は知らないが、担当部署の中山間地振興課は市役所の中でなく、安倍川沿いの、それこそオクシズの入り口のようなところにある。
同じ静岡市とはいえ、遠いところ(井川あたり)だと片道4時間近くかかる場所もあるから、少しでも近くにという配慮だろうか。

平成22(2010)年4月19日に設置され、その目的は「 静岡市オクシズ地域おこし計画の進捗状況を評価し、計画における各事業の進行を管理し、及び計画の推進に係る市民の意見要望等を把握することにより計画の円滑な推進を図る」となっている。
要はすでに計画されている各事業の進捗状況を、中山間地という名の僻地へきち代表18名が、市民という立場から確認・協議していきましょうという会になる。

それだけだと、行政のやっていることをただ追認するアリバイ的な組織と思われそうだが、場の雰囲気は必ずしもなごやかばかりではない。
皆さんに共通する切実な課題が、幾つもあるためだ。

年度予算は10億円。いくら政令指定市とはいえ、数字だけからしても市の本気度がうかがえる。キレイごとを並べたって、絵にかいた餅で腹はふくれない。金を使うとは、質はどうあれ確実に経済効果を生む行為だ。
発足から14年目を迎え事業の練度も上がり、各所で小さな成功事例も生まれてきている。課題の根本は、全く解決されないままであるとしても。

のちに触れるが事業内容も、他の部署と横ぐしの通った計画が少なからずある。う~ん、どっかのアレとは、ずいぶん熱気も実行力も違うなぁ。
何しろ担当職員の大半がオクシズ出身者で、今もそこに暮らしている人が少なくない。
これはいい。決して他人事に陥らず、住民と問題意識を共有できそうだ。

そもそも、オクシズとは何か。

静岡市は、南北83.1kmに渡る広大な面積を有しますが、市街地の面積は20%程度に過ぎず、80%は、豊かな自然が残る山間の地域です。
この豊かな自然環境は、清流や良質な農作物、木材を産み出すとともに、治山治水の面からも都市の生活基盤を支えています。
本市では、この地域に愛着をもっていただけるよう、愛称として奥静岡「オクシズ」と呼んでいます。
「オクシズ」には、地域特有の風習や祭事などの文化や、わさびやお茶など人の手と心で作られた作物と加工品の数々、棚田や茶畑といった美しい景観など、素晴らしい地域資源に溢れています。
各地に点在する温泉は、泉質がよく、やすらぎと癒しを与えてくれます。
市街地から少し足をのばせば、都市では決して味わえない魅力ある生活と環境、そして「オクシズ」に住む人たちがあなたを温かく迎えてくれます。

オクシズとは? 静岡市役所 経済局 農林水産部 中山間地振興課

この紹介文から分かるように、オクシズは市外や全国からの誘客を目指していない。もっぱら静岡の街に暮らす人をターゲットに、情報を発信している。
これには賛否あるだろう。
今風いまふうに考えれば、なぜ大都市圏にもっとアピールしないのか、なぜインバウンドを狙わないのか、もどかしい思いの当事者がおられるかもしれない。

実際に行ってみると分かるが、まず、そこまで道が整備されていない。
観光バスなど、大型車両が通行できない地点がそこかしこにある。団体ではなく、あくまで地元ファミリー向けの観光地とならざるを得ないのだ。そして、観光以外に頼る産業が無くなってきているのも、中山間地の大きな課題だろう。

逆に言えば、オクシズは現在に至るまで、外来の観光客に荒らされることなく済んでいる。奥の細道は未舗装ゆえに、味わいもまた深まるのだ。
神奈川から越してきた僕にとっては、箱根などより数段魅力ある場所になる。(明日に続く)

イラスト Atelier hanami@はなのす


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