見出し画像

キミらが変わると 未来が変わる

知り合いが、「青少年就労支援ネットワーク静岡」というNPOに勤めている。

「働きたくても働けない…」、「どうやって就職活動をしたらいいのかわからない…」、「コミュニケーションが苦手で働く自信がない…」、「就労の悩みを一人で抱えている…」
こうした、働くことに悩みを抱えている若者をこれまでに「若者就労支援セミナー」を通して800名以上支援してきました。「静岡方式 個別伴走型支援」では地域のボランティアさんが若者一人ひとりに寄り添いながら、本人の希望を尊重しながら、就労をサポートしていきます。

青少年就労支援ネットワーク静岡

「静岡方式」とは「どんな人でも働ける」ことを信念に掲げた、若者就労支援の方法を指す。
「働くことで人は変わる。仕事に人をつなげ、その人を変えていくのは地域、つまり人のつながりです」(津富宏つとみひとし理事長)

津富つとみ理事長は、法務教官(少年院の教官)を務めた経験がある。
「働けるか働けないか、それが再犯率に大きく影響していました。少年たちにいろいろ言っても、全部をやってもらうのは難しい。けれども、仕事だけはがんばろう。そうやって一つに絞ると、若者たちはがんばれる」
「仕事にはいろいろな要素があります。人間関係、生活リズム、お金の管理、仕事への誇り。私は仕事を〈完全栄養〉と呼んでいます。働くことで、若者の人生は変わっていくのです」

「静岡方式」は、伴走型ばんそうがた支援が特徴だ。支援を受ける若者1人に対して、担当サポーター(ボランティア)が2~3人つく。
担当サポーターは若者の相談にのったり、就労体験先を紹介したり、メールで励ましたり、仕事の体験談を話したりする。

担当の割り振りは、住んでいる地域で決められる。近所に住む同士、ときにお互いの自宅を行き来して、相談に応じたり、雑談したりすることもある。セミナーやフォローアップミーティングに参加して、若者の話し相手になったり、就労体験先を紹介したりするだけの人もいて、関わり方は自由だ。
サポーターは若者たちと交流しながら、彼・彼女たちのやりたいことに導くための手伝いをする。

先日、津富つとみ理事長の講演を聴いた。就労支援セミナーの冒頭に、1時間程度のプログラムが組まれていたのだ。
下手なギャグの連発で時どき空回りするものの、この方のNPOにかける熱は充分伝わり、何より実績を生んできているのだから、大したものだと思う。

この日、何の予備知識なしに参加した僕に、悩み事で訪れた人の相談を受けろという。どんなこと言うか分らん奴に、発言一つで人生を左右するかもしれない重大な局面をゆだねようというアバウトさ、嫌いじゃない。
もちろん、一人の相手に対し4人のサポーターが付くというから、僕の勝手な暴走は止められる。
「初めてだし、黙ってますね」
実際にその場に臨めば、黙っていられる性分しょうぶんじゃないが。

6つのグループに分かれ、それぞれ訪れた相談者を囲むように(というより相談者も輪の中の一人といったイメージで)対面する。
僕たちグループの所には、ご本人でなく、24歳の一人娘をもつお母さんが来られた。

娘さんは大学を出られる前後に小さなつまずきがあったらしく、就職をせず、ほとんど家で過ごされているという。
ここであまり具体的な内容は避けるが、母子おやこの関係は決して悪くなく、日常会話程度であれば普通に交わす仲だ。
ただ、昼間は仕事に出られるお母さんと、夜に活動し朝に寝るお嬢さんでは生活時間帯が合わず、込み入った話はなかなか出来ない現状らしい。

相談者がご本人でない以上、はなから具体的なアクションを起こそうなんて考えは持たずに済む。
まずはこれまでひとりで悩みを抱えてきたお母さんの胸の内を吐き出してもらい、一度すっきりしたところで娘さんと接して頂くべきだろう。

面白いのは相談者の一人で、20代後半の男子。
後で知ったがご本人も引きこもり当事者だったそうで、こちらのNPOに通ううち、逆の立場で起用されたらしい。しかもサポーターの立場としては、この日がデビュー戦だったそうだ。
彼の場合、相談員として相応のトレーニングは積んでいるはずだが、当ぜん社会性には乏しく、経験も浅い。

ひたすら来月のセミナーに参加するよう誘導するのがみえみえで、僕からみると手順を一つ二つ飛ばしている。強引に過ぎると、宗教の勧誘あたりと勘違いされるぞ。
「お母さん、無理に就職しないでも、婚活という手もありますよ」となかば本気で申し上げたら「いや、婚活は冗談としまして」と27歳クン、速攻で否定しやがんの(笑)。なんで婚活はアカンねん。

この国の傾向として、年寄りには何かと手厚くいろいろな機会を提供するが、一度でもつまずいた若い世代に対しては、かなり冷たい。
選挙に行かず票にならない若年層を相手にするより、笑顔と握手で一票入れてくれるおじいちゃん・おばあちゃんを大事にしたい気持ちもわかるが、日本の未来は若い世代の働きにかかっているんだぞ。

総じて未完成な印象の「青少年就労支援ネットワーク静岡」に対し、逆に今後の大いなる可能性を感じる。
僕らのプロジェクトと、うまくリンクしていくようにしたいものだ。

イラスト Atelier hanami@はなのす



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?