見出し画像

映らんデス

6月2日(日)、「清水いはらマルシェ」を開催した。無償で会場をお借りしている花卸売市場との取り決めから、5月を除く第1日曜日に実施している。

今回は3回目で、出店希望者も回を追うごと増えている。一度参加したところは他所よそで事前の予定がない限り、次の参加を希望するところがほとんどだ。
おかげ様で屋外のキッチンカーは別として、屋内での出店のキャパは、ほぼ限界に達しかけている。今のところ順調な推移だ。

開催に先立ち、プレスリリースでメディア関係者に情報を発信している。
ただ、マルシェなんて今どき珍しくもないだろうし、これまで取材に来たところはない。今回だってなんの期待もせず当日の朝を迎えたら、飛び込みで2社もやって来た。あわわ、なんちゅう間の悪さだ。

たまたまプロジェクトの代表が、今年は地区の自治会長も兼任していて、年に1度の環境整備の主役であるため不在である。これまでマスコミ対応は(元市会議員の)代表に一任だったのに、この日は事務局の僕が応対せざるを得なくなった。

それでも新聞社の方は、現場の写真1枚を添えた囲み記事くらいだろうし、質問に答えておけばそれで済む。問題は、テレビ局の方だ。

身勝手な話だが、人のインタビュー動画を撮るなら慣れたもんでも、自分がインタビューされる側になるって、好きくない。そもそもテレビが嫌いで、一切とらんし。
だからって代わりはいないし、立場上拒否するわけにもいかんし、仕方なく人生初のテレビ出演をする羽目になった。

取材するのは30代の薄い不精髭のにいちゃんで、インタビューからカメラにマイクと、一人で全部掛け持ちしている。「今どきのテレビ局は大変だねぇ」と振れば、「慣れてますから」。割に平然と返してきた。

意外と勉強になったのは、動きに無駄がないこと。
事前の打ち合わせでは、自分が理解したと納得するまで質問を続ける。初対面の相手に、短時間で欲しい情報を引き出す技術はさすがプロである。
撮影は彼でも、編集作業は本社に控える専門チームの仕事だ。
録画したデータをその場で送り、原稿を作ってこれも送信し、昼のニュースに間に合わせるという。8時過ぎに会場にやってきて、1時間ほどで全工程を仕上げる効率的な作業に感心させられた。

一通り撮り終わってそのまま帰るのかと思ったら、しばらく経って再びやって来た。
「さっきの話ですなんがね、コレ、記事にするわけじゃなくて個人的な興味なんですけど」とくる。

インタビューでは今後のプロジェクトの動きに関し、具体的な部分はぼかした表現にせざるを得なかった。
我々に関連する行政や地権者の立場もあり、特定の場所や名称を口にはできない。
そこのところを彼は、自分だけの情報として知っておきたいというのだ。

正直、驚いた。
いくらネタがないからってこんなローカルで内々の話、時間を割いてまで訊きたいと思うもんだろうか。
「テレビって、(出来事が)表に出たときはもう遅いんですよ。公表された瞬間、事前にこういう動きがあったんだという裏付けをとっておくのがきもなんです」

そうか、それじゃあ「道の駅」が出来た時の舞台裏はお宅だけのスクープになるねと、半分笑いながら話せる範囲のことは伝えておいた。
片や新聞社の、さらに若そうな青年はイベント終了間際にやってきて、こちらが通り一遍の取材で帰社したのとは、熱量が格段に違う。

べつに新聞社の彼をおとしめるつもりはなく、それが普通の対応だ。僕が新聞をとっていないと知ると、切り抜きをメールで送りますという。本当に今朝、挨拶文を添えて送ってくれた。丁寧で誠実な姿勢だと思う。

しかし僕は、ウザい不精髭のテレビマンの方にこそ親近感がわくのだ。
あの執拗な食い下がり方。むしろこっちで、「そこまで大層な情報でもあるまいに」とひるんでしまうほどのねちっこさこそ、報道する人間の姿勢として筋が通っている気がする。
ありがとう。取材の勉強、させてもらいました。

ちなみに同日の昼と夕方、2回放送されたうちの後の方を視たが、「オレって老けてるなぁ」としみじみ感じ入った。やっぱこういうの、見たくないなぁ。
僕なんぞは映るよりも、誰かを映していた方がよほど世のためになるのだ。

イラスト hanami🛸|ω・)و


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?