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星に願いを

たまに観光で訪れるならいいトコいっぱいのオクシズであるが、そこで生活するとなると、話はがらりと変わる。
「静岡市オクシズ地域おこし計画推進協議会(長いので以下、「オクシズ協議会」と勝手に略す)」に集まった各地区代表の挨拶からは、少子高齢化が
加速する将来への不安と、命に係わる害獣被害の懸念が、異口同音に聞かれた。

とくにクマの頻繁な出没は深刻で、この日も数日前に遭遇したという参加者からの報告がある。
今年に入り、環境省が設置した専門家による検討会は、クマを「指定管理鳥獣」に追加し、生息状況を適切にモニタリングした上で捕獲することを国が支援すべきだとする対策方針を提言している。
ただしクマは繁殖力が低いため、分布や個体数などについてモニタリングを定期的に実施し、目的を明確にして過度な捕獲はせず、限定的にする必要があるともしている。

現地に住む人からすれば、「どっちやねん」となる。「限定的」ちゅう事は、見つけたら危険なので即座に駆除せよというニュアンスには受け取れない。
日本の防衛政策同様、相手から攻撃されたら、初めてやり返していいという事なのか? それじゃあ猟友会の人も、危険な思いしてまで関わりたくないわな。
「なんでクマさん殺すんだ、悪いのは人間の方なのにぃ!」とか文句つける”善意あふれる”人々が、世の中に必ず一定数いるわけだから。

「捕獲したとして、その後駆除はしてるんですか? 山に帰しているという話も聞きますが?」
これに対する役所の返事も、キレが悪い。
「一応、静岡でクマは保護の対象になっていまして… 必ず駆除するという風には、あの、ひとまず現段階で山に帰すことが相応ふさわしくないと判断してですね… あの、ですから”今”は駆除しています、ハイ」

これは役人じゃなくて、国の施策が悪いんだよな。
「今後はですねぇ、ドングリなどの木の実がならないような植林を(人とクマとの)緩衝地帯かんしょうちたいで進めてですね、それ以上降りてこないようにといった工夫も検討しておりまして…」
おいおい、それって逆効果じゃないの? ま、黙ってましたけど。

「ウチ(の集落)はちょっと小高い山間やまあいに、200世帯ほど住んでます。若い連中がどんどんいなくなって、一人住まいが増えてます。若い世代の移住を呼び込みたいですが、それにはまず実際に宿泊してもらって、ここの良さを知ってもらうのがいいと思うんですがね。そんな立派にせんでいいので、(簡易な)民宿やりたいって提案があったら、相談に乗ってくれんもんですかね。そういったことが簡単にできるもんなのか、そうじゃないのか、それだけでも教えてください」

素朴を絵にかいたような村のおさらしきご老人から、質問が上る。
この方の頭の中には、たとえば一人暮らしのお婆ちゃんが若い人を泊めて、地産地消の手作り料理でも振る舞ったら、そこの暮らしが気に入って移住したい人も出てくるんじゃないかという目算らしい。

「簡単か簡単じゃないか、で言うとですね。旅館業法とか住宅宿泊事業法(民泊新法)とかありましてね、そう簡単にはいかないんですよ」
このご老人、終わった後も食い下がってた。「ただ泊めてあげるだけなんですよ、そんなややこしい法律いらんのじゃないですか?」

そうだ、そうだ!
一部外国人によるダークそのものな民泊より、よっぽどいいじゃないか。
とは思ってみても、ちゃんとやろうとすると日本って、やたらと法の縛りがキツイんだよなぁ。こんなお年寄りの試み、行政でバックアップしてやったって罰は当たらんと思うが。ダメもとで、一緒に知恵を絞っちゃやれまいか。

ちなみに僕は、ある意味潤沢じゅんたくなオクシズ協議会(=中山間地課)の事業予算を狙っている。
実はオクシズって、旧静岡市だけの名称と去年まで思っていた。
清水区の一部がそれに該当していて、役所も軽んじてるわけじゃないんだろうが、我が集落に於いて過去に予算がついたことはないんである。それなら新たな提案を通して、こっちにもカネを回してもらおうじゃないかという魂胆なのだ。

ちょうど「滝のお掃除し隊」も始まったことだし、このところタイミング、何かと合ってきてるねぇ。
ここはひとつ道の駅プロジェクトとリンクさせて、あっちこっちに小さな拠点を作るんだぜぃ。ド田舎のラスボスに、オレはなる!

などと一人、妄想の翼を拡げておるのでした。

イラスト Atelier hanami@はなのす




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