好奇心の魔法
「面白さ」とは、知的欲求が心地良く満たされること、そこから快感を得ることだ。
何かを知りたい、何かが気になる。そんな欲求を満たしたとき訪れる快感こそが、「面白さ」の正体だ。
人間が「面白さ」を感じるためには、知的欲求が刺激されなければならない。知的欲求が刺激されやすい心理状態のことを「知的好奇心(好奇心)」と呼ぶ。
好奇心の分類には、様々な手法がある。ここでは代表的な好奇心の分類法として、「拡散的好奇心」「特殊的好奇心」の2つの種類に分けてみる。
拡散的好奇心は、特定の目標を定めず、自分の知らない情報を幅広く探し求める状態と定義される。
具体的には「新しいことに挑戦するのが好きだ」「新しいアイデアをあれこれ考える」「何事に対しても興味・関心が高い」。
たとえば、時間があれば本を読もうとする・スマートフォンでネットを何気なく見るなどの行動は、「拡散的好奇心」に該当する。
このような状態を、拡散的好奇心が刺激されていると言う。
次に特殊的好奇心とは、特定の目標を定め、対象となる情報を深く掘り下げていく状態と定義される。
具体的には「1つの学問を究める」「疑問に思うことは調べ尽くす」「表面的な理解ではものたりない」などが当てはまる。
たとえば、ネット上で見つけた情報の真偽について、確証を得るためさらに調べる行動は「特殊的好奇心」に該当する。この傾向が強い場合、矛盾点をなくすことをめざして、知識や情報の継続的な獲得を行うようになる。
いろいろな対象に興味を持つ「拡散的好奇心」が探究への入り口となり、そこから膨らませ、深めていくのが「特殊的好奇心」というわけだ。
好奇心を高めたいなら、「とりあえず調べる(訊く)」クセをつけることから始めてみる。
スマホを持っているほとんどの人は、食事に行くとき熱心にグルメサイトや口コミを調べるし、地元の知り合いに訊くなどして情報を収集するだろう。
調べる手段や基本的なスキルは持っているのに、なぜか仕事や勉強のことになると、スマホを一度検索すればわかるようなことでも案外調べない。
すぐ調べる人は信頼できる情報を手に入れ、問題を解決する力が身に付いていく。
時間が経てば経つほど、「調べる人」と「調べない人」の間に決定的な差が付いてしまうのが、今の世の中だ。
心理学の世界では、初頭効果(初めの印象がずっと響くという効果)という言葉がある。一般的に口にされる「人は第一印象で決まる」というのも、この初頭効果を表した言葉になる。
最初に持った印象がずっと継続する「初頭効果」を最大限活用するために、以下の意識づけは有効だ。
好奇心が旺盛な人は、とりあえず知らない話題が出たとき「面白そう!」
「興味あります!」といった反応を示す。
本心で言っている人もいれば、口癖になっている場合もあるはずだ。とりあえず「面白そう!」を宣言しておくと、人は面白い部分を探そうと必死に努力するようになる。
このとき「つまらなそう」「知らない、興味ない」と(自分に)印象付けてしまえば、面白い部分を探そうとしないモードに入ってしまう。
脳の構造は、全人類の99%が変わりない。
同じような脳を持っている他者が興味を抱いている事柄なら、「ちゃんと理解すれば自分にもきっと楽しめる要素がある」と、楽観的に考えることだ。
知らないことが出てきても最初の段階で意識をシャットダウンさせず、「とりあえず面白そう!」を心がけ、自分の好奇心を刺激するようにすればいい。
「知らない話題や知識を得て、実際に得をした」という体験が大事だ。
知らない話題を耳にしたら、その知識を拝借して知人との会話に使わせてもらう。知らない知識を吸収したら、思い切って友人に話してみてもいい。
未知の情報を得たことで、生活が豊かになったと実感することだ。
見たり聞いたり調べたりするのは楽しいと、体感的に理解できるようになる。
好奇心は自分にとって「意味がある」と感じられなければ、働きにくい性質がある。普段から全く関心が無い事や、知らない事には働かない。
そうかといって、知識を増やすため全く関心のないことを知ろうとする必要はない。知識とは、発展させていくものだからだ。
そのためには、普段興味を持っている物事を、違う面から見てみようと意識するのがいい。
僕が「こうであるに違いない」「当然だ」と思っているのは、あくまでも僕にとっての常識に過ぎない。
異なる視点で物事を捉えれば、自分の立ち位置から離れ、違う人間や立場から新たな目線で物事を見ることになる。「これはこの状態で当然だ」という固定観念から、解放されるのだ。
そのためにはたとえ小さなことでも、日常を少し崩して暮らしに「違和感」を与えるのが、ひとつ有効な手立てだ。
過ごす場所は大きく変わらなくても、生活のリズムを少し変えることで目に入るものが変わったり、「快」「不快」といった感覚に敏感になり、違った目線で物事を捉えるきっかけを手に入れられるかもしれない。
人より多くのことを面白いと感じられる人は、他の人が何も感じない物事から、秘めた面白さを引き出せる可能性を持っている。
多くの物事から面白さを感じられるようになることは、面白さを生み出す以前に、その人自身の日々の生活を豊かにしてくれる。
この世の物事は全て、工夫次第で面白くなる可能性を秘めていると思っていればいい。
そのとき僕たちの周囲に在る灰色の日常は、あらゆる未来の可能性を秘めた「面白い」世界へと変貌しているはずだから。
イラスト Atelier hanami@はなのす
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