おいしい水
目が覚めると、まずは蛇口をひねって水を飲む。冬の水は冷たく、のど越しがとてもいい。
蛇口をひねれば安全な水が飲める。当たり前すぎて、それがいかにありがたいことかまで思い至らない。
一昨年9月、台風15号による大規模な水害から、静岡市清水区で6万戸以上が断水した。(時間雨量110ミリを超える)記録的短時間大雨情報が8回も出される、猛烈な雨の影響からだ。
どうやら僕の住んでいる一角だけ貯水する場所が違っていたらしく、断水の難は逃れた。それでも確かな情報が皆無の中、いつ水が止まってしまうか、おびえながらの日々を過ごす。市販のペットボトルがまったく手に入らない状態で、半日以上かけ県外まで買い出しに行く人もいた。
この時、前市長のあまりの対応の鈍さが仇となり、地元住民は挙って憤慨した。翌年の市長選には立候補すらできず、引退に追い込まれている。
2018年国土交通省の調査によると、世界で安全に水道水を利用できる国は、9ヶ国と2都市のみとなる。
データによって11ヶ国、12ヶ国など統一の見解は為されていないが、(世界約200ヶ国中)水道水を安全に利用できる国・約5%の国の一つであることは間違いない。
アジアに限れば、水道水を飲める国は、日本と(最近飲めるようになった)アラブ首長国連邦(UAE)のみになる。それでも後者は、日本人が飲んで全く安心とは言い切れないレベルのようだ。2004年の国土交通省の調査によると、水道水を安全に飲める国は15ヶ国となっていたが、2018年の調査時にアラブ首長国連邦(UAE)はここからはじかれている。
アジアの他の国やアフリカの乾燥地域では、水源を確保することが難しく、水道水の整備までとても手が回らない。技術や知識、資金が行き渡らず、発展途上国には水道自体がないことも珍しくないのだ。
この一点のみをとっても、恵まれた国に生まれた幸福に感謝せずにはおれない。衣類や食器を洗うことにも難儀する人たちが、世界中に多くいるのだ。水を無駄にしてはいけない。
では、この恵まれた環境は今後も続くのだろうか。いま極めて深刻な事態を迎えていることを、国民の大半が知らないままであある。
水道水は川から浄水場の取水塔に、水を取り入れところから始まる。
沈砂池(取水した水に混ざっている砂や泥を沈める) → 導水ポンプで浄水場に水を送り → 水のにごりを固める薬品(凝集剤)を入れ → 薬品の加えられた水をかきまぜ、水のにごりを小さなかたまり(フロック)にしてこれを沈めて取り除く
さらにきれいにするため、こまかいにごりを砂や砂利の層で濾し → オゾンと活性炭による高度浄水処理をおこない → 分解されたにおいの素を活性炭に吸着させ、消毒のため塩素を注入
すっかりきれいになった水を貯めておき → 配水塔・給水場から送られてきた浄水を貯留し、水の圧力や量を調整して家庭などに水を送っている
これだけ見ても、安全な水が提供されるまで途方もない技術と労力が費やされているのが分かる。
問題は給水場から一般家庭までをつなぐライフライン、水道管の老朽化だ。
昭和40年代以降、高度経済成長期を中心に整備された水道の全国普及率は97.9%(平成28年度)。
その水道管の老朽化(中には明治時代に敷設されたものもある)が、深刻な問題となっている。耐用年数を超えて使用していることで引き起こされる事故が、全国各地で相次いでいるのだ。
明日に続く
イラスト hanami🛸|ω・)و