静岡で小さなスタジオを営んでいるミュージシャンと、知り合いになった。
もう4年も前の話だ。
それより少し前に知り合った、やはり地元の女性シンガーが彼のスタジオでレコーディングすることになり、3日間の音入れに立ち会うことになった。
一つの楽曲が生成されていくプロセスを間近にするなど、生まれて初めての得難い経験だ。何度もテイクを重ねていく彼らのやり取りが実にいい。
音の表現を色や感情、波のうねりや風のささやきにたとえアドバイスしていくのは、彼自身がミュージシャンだからである。
ホームページのブログに、当時の心境が記されている。
意気投合した彼と、一緒に事業を始めようと打ち合わせを重ねた。
せっかくあるスタジオをフル活用して、収益化を図ろうじゃないか。相手はミュージシャンに限定しなくてもいい。
まずはご近所にチラシを配布し、いろいろなプランを提示する。
たとえばカラオケ大好きなのに(当時の流行り病から)店で歌えないおとうさん・おかあさんの”名唱”を、ミュージック・ビデオにしちゃうのだ。
クロマキー合成を使えば背景をスタジオから玄界灘にも変えられるし、AKGのマイクを通した最高の音質で記録が残せる。口コミで広がれば、ビジネスチャンスは充分あるんじゃないか。
実現したら、どんな展開になっていただろう。
どっちも商売気ないからうまくいかず違う事を始めていた気もするし、でも楽しい付き合いは、きっと続いていただろう。
まずは彼自身のパフォーマンスを映像におさめ、専用のYouTubeチャンネルを立ち上げようと動き始めた。
それが2021年6月のこと。その翌月、僕たちの計画は水泡に帰してしまう。
イラスト hanami🛸|ω・)و