ブラックコーヒー
夫婦2人で、1日7~8杯分のコーヒーを消費する。
朝の一杯、遅い朝食時に一杯、夕食前のウトウトするころに一杯。ちなみに緑茶も合間々々に飲むから、水分補給は結構な量になる。
会社を辞めてから収入は不安定で、市販のコーヒー豆など買える身分ではない。まして今、ちょっといいヤツだと100g500円とか1,000円とか平気でする。こんなの、論外なのである。
だからと、インスタントにしようとは考えない。極力ローコストに、可能な限りの贅沢を追求する。なんたって時間だけは、売るほどあるんである。
自分で焙煎して挽きたて淹れたてを飲めば、安くておいしいコーヒーライフが過ごせるんじゃないか。
生豆も街の専門店だと、ロースト済の豆とさほど価格差はない。流通の過程でいくつか中間業者が絡むだろうし、高くなっても仕方ないところだ。
そこでネットの直販から、卸に近い価格の店を探す。
豆の種類にもよるが、5キロ5,000円前後から取り寄せられるところを発見。電子決済やカードなどなく、清算は現金引換えのみ。これも実に、僕好みだ。
100グラム100円の目安となるのだから、超格安。10キロごと発注してはいろいろな豆を試し、もう3年ほどのお付き合いになる。
最初に買ったのは、数杯分の生豆をセットしスイッチONすれば自動で仕上げてくれる、小型の電気式焙煎機だ。行程中のガー!音は賑やかだが、コーヒーチャフ(生豆の表面についている茶色い薄皮)も分離してくれて、とても重宝なのである。
それが、半年ほどで作動しなくなった。
さすがはC国製、実にもろい耐久性である。
保証期間だったのでメーカーに連絡すると、修理するので現物を送れという。こんなの、直すより新品よこすしかないだろうと思っていると案の定、新しいのになって戻ってきた。
そして次の半年後、律儀にも保証期間を過ぎたあたりで再び動かなくなり、そこであきらめた。いまネットで見ると、当該製品は売られていない。輸入販売元には、どれほどのクレームがあったことだろう。
次に、(カセットコンロを熱源にした)ガスタイプの家庭用焙煎機を購入した。ガラスのドラムに数100gの生豆をいれ、電気でドラムを回転させながら、下からの高温直火で豆を煎りつける。さすがにこちらはシンプルで、しっかりした構造である。長く頑張ってくれそうだ。
一度に1週間分の豆が煎れて便利なのだが、(多すぎるとドラムから飛び出してしまう)豆の分量がどれほどか、火の加減をどうするか、どの段階で火を止めたらいいかなど、全て経験則から決めなければならない。
同じ豆でも「浅炒り」「深炒り」によって味が全く変わるので、好みに合ったポイントを見つけるのに苦労する。タイミングを誤り「深炒り」し過ぎて焦がしてしまい、その回は情けない味で我慢したこともある。
どうやら、バチバチはぜる音の大きさや回数と、立ち上る煙の薫りから、だいたいの仕上がり具合が分かるようになった。
こんなのも勤めたままなら、やらずに人生終わっていただろう。
今なら、300gの珈琲キャニスターに詰め、コーヒー好きでお付き合いある方におすそ分けできる程度には上達している。
挽きたて淹れたての一杯で始まるいつもの朝、あとは収入がついてくれば(ついてこないのでチと困るのだが)、文句ない隠遁生活である。
さて、今日の気分はペギー・リー?それともジュリー・ロンドン。
デューク・ピアソンの、じわじわくるピアノも捨てがたい。
やっぱ適度なコクと味わいの、ソニー・クリスのブラック・コーヒーでいくか。
イラスト hanami AI魔術師の弟子
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