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田舎のスマホ需要

僕の地元で、スマートフォンの教室を開きたいという2児のお母さんにお会いした。
話しの内容から察するに、仲間3人と副業的なイメージで始めたいようだ。

そのため、スマートフォン・モバイル実務検定に認定されたという。
この検定は消費者保護の観点から、スマートフォン等のモバイル端末やサービスを扱う販売員に必要な基礎知識(実務知識/法知識/技術知識)の習熟度を検定することで、ケータイ販売業界の健全な発展に寄与することが目的だ。

彼女によれば、今後は公的手続きにもスマホが必須の時代になってくる。
一方で販売店は縮小傾向にあり、お年寄りなど不慣れな人がスマホの扱いに困っても、相談に行く場所がなくなっていくケースが想定される。
たとえばNTTドコモは、全国に約2300店舗ある販売店「ドコモショップ」に関し、2025年度ごろまでに3割程度(約700店舗)減るとの見通しを立てているそうだ。

仮にお店で購入する際も、一度も使わない余分なオプションプランまで加入させられ、高い月額料金を負担させられたりもする。
情報弱者が泣きを見るケースが後を絶たないのは、たまたま居合わせたご近所さんのところで出くわした一件で、僕にも実感がある。

2年近く前だが「いっぺー(一杯)やんべーよ」とお誘いを受け、その方のお宅でもてなしを受けていると、隣町に住む妹さんから電話が入る。スマホを買い換えるよう、販売員から勧められたという内容だ。

(おそらくは70歳以上になる)この妹さん、少し前に光回線をご自宅に入れたらしい。「アイツ、光なんて1回も使ってないんだよな。ネットが何なのか、知らないで契約させられてんだよ」と、お兄さんが苦い顔で話された。
必要ない事わかっていながら販売するのって、質的に詐欺さぎと変わんないじゃないの?と思う。

どうもこの妹さんが相談のていでお兄さんに電話してくるときは、すでに契約してしまった後のことらしい。どうしてそういう心理状態になるのかわからないが、身内に追認してもらうことで、自己正当化を図りたいのだろうか。

この時は2年使っているスマホが経年劣化し、電池の減りは早いし電波が弱くなってきたので、買い換えを勧められたというものだった。

「バカ(この人の口癖で悪意はこもっていない)! 2年ばっかしで性能そんなに落ちるワケねぇだろ。だいたいアンタ、スマホなんて使ってるのかよ」
ちなみにこの妹さんがかけてきたのは、固定電話からである。スマホは持っているだけのようで、操作の仕方もわからないらしい。だけど販売員からそう言われると、「確かに電波が弱い気がした」んだそうだ。

お兄さんの受け答えしか聴こえないものの、契約はとりあえず止めさせた方がいいよと小声で訴える。電波が弱いのはスマホのせい、なんてオカルト話はこのとき初めて聞いた。
「なに?もう契約しちまったのかよ。じゃあ、オレんとこかけてきたってしょんねぇじゃん。もう切るからな!」それで通話を打ち切ったお兄さん、「困ったもんだよ」とため息をついた。

こうなると、つぼ布団ふとんを高額で売るのとどこが違うねん、って話になる。消費者センターに相談したらと自分なりにアドバイスはしたものの、妹さんが気づかない限りそのままだろう。
業者からすれば妹さんはいいかもで、ぜったい手放せない上得意だ。

これは極端な事例だが、使いもしない光回線を契約したお宅なら、ご近所に何軒もある。あたかもそれが必要不可欠との印象操作で、我が家にも営業に来ていた時期があるからだ。
こちら方面の業界は相当にブラックであると、常々認識していた。

スマートフォンの教室を始めたい2児の母、すべて手探りのため、まずは生涯学習交流館に相談に行く。ところがこちらの使用用途は、あくまで非営利に限る。主催者が講師になるのも不可のため、「スマホ勉強会」として11月に申し込んだという。まずは経験を積むこと、そう割り切ることにしたそうだ。

いくら世のため人のためとはいえ、お金にならなければ事業も続かない。どうしたもんだろうと思っていたところに、来年2月開設の「いはラボ」と、話しが繋がったわけだ。
こちらであれば、営利を目的に教室が開ける。そこで受講料をとってもいいわけだが、彼女の話を聞くうち違う展開もアリじゃないかと思った。

教室というのはせいぜい1回2時間が限度で、教える内容はあくまで一般的にならざるを得ない。悪徳業者にだまされず、契約額を最低限に抑えながらスマホを楽しめるノウハウなら、その場で伝えられるだろう。
ところが使い手の用途は千差万別だし、困りごとというのはいつ発生するかわからないから、教室だけでは物足りなくなるはずだ。

彼女自身が代理店契約をしているため、その会社と契約した方には、無償で出張対応するつもりでいたらしい。
ならばメーカーにこだわらず、1回いくらの出張費をきちんともらうビジネスモデルにしてはどうだろう。
この先、販売店が減少していくならユーザーにとってありがたい話だし、そもそも運転できない田舎のお年寄りにとって、救世主のような存在にもなり得る。家電であれば、出張修理に料金が発生するのは当たり前だ。スマホが例外のはずもない。

「いはラボ」で定期的に教室を開き、生徒さんやそこからの広がりで、出張対応を主力商品にしてはどうだろう。「スマホ110番」「スマホドクター」とか名乗っちゃったりして。
思い付きで言ったら、今晩もう少し相談したいとなった。なんか、楽しくなってきそうだ。
「いはラボ」としては彼女のグループが、第1号の顧客になるかもしれないぞ。

イラスト Atelier hanami@はなのす



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