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SPY×FAMILYとヴァイオレットと愛国心と

半年ぶりにSPY×FAMILYのアニメを見た。 1話目からヨルが殺しをおこなっていて思ったが、フォージャー家の中で殺し屋がスパイ、エスパーよりも頭抜けていると思った。ロイドも作中で描かれないだけで人を殺しているのかもしれないが、あまりにもヨルの方法は残虐であるし殺人マシンである。後々にメンタルを病まないか心配になる。もちろん、SPY×FAMILYの作風上そういう展開はあり得ないと思うが、淡々と任務をこなしていくヨルにいささか不安を覚えるのである。 私がこのような懸念を抱い

    • アリスとテレスのまぼろし工場の感想

      岡田麿里の最新作を見たので感想を記す。「君の名は。」、「すずめの戸締まり」、「夏へのトンネル、さよならの出口」、「GRIDMAN UNIVERSE」、「怪物」など最近の映画を思い起こさせる内容だったが、別に大きく影響を受けているというよりは、相互なもので、時代の潮流のようなものなのだろう。 最初、製鉄所が爆発し、町の時間が止まる点やそれによって永遠に子供が生まれない場面はチェルノブイリ原発事故(あるいは福島原発事故)を想起させた。しかし、そういう点もあるのかもしれないが、よ

      • メモ:ゴールデンカムイ・杉元佐一のモデルについて

        ゴールデンカムイの杉元佐一のモデルが野田サトルの曽祖父の杉本佐一だとは聞いていたが、ふと思い立って最近便利になった国立国会図書館のデジタルコレクションで調べてみた。官報に載っていた徴兵の記録などあるが、最も詳しく杉本佐一について記載していたのは『湧別兵村誌』である。同姓同名の可能性もあるが、北海道出身ということで可能性はかなり高いだろう。 君ハ明治十二年九月一日岐阜県本巣郡東根尾村ニ生ル。屯田兵トナリ三十年五月二十九日南湧別兵村第一区ニ移住。三十三年一等卒ニ進ミ三十六年三月

        • 書評:藤田直哉『新海誠論』と古代

           藤田直哉『新海誠論』というそのものズバリの本が出版されていた。昨年出た榎本正樹の書籍が新海誠の映画の細部に分け入り準拠作品との丁寧な比較をおこなって新海誠を論じていたので、期待をして開いてみたが榎本の著書や同時期に出た土居伸彰の新書に比べて議論が雑だなと思ったのでメモ程度に批判的書評を記す。これは藤田に限らず、新海誠を論じる際の民俗学的モチーフや考古学的モチーフに対する安易な引用への危惧からでもある。新海誠はある時から神話や古典、民俗学をモチーフにしており、そうした方面から

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        • アリスとテレスのまぼろし工場の感想

        • メモ:ゴールデンカムイ・杉元佐一のモデルについて

        • 書評:藤田直哉『新海誠論』と古代

          すずめの戸締まりとナショナルなもの

           新海誠監督の「すずめの戸締まり」を見て民俗学っぽいという感想が多く散見されている気がする。それは「君の名は。」や「天気の子」が公開された時も同様であった。「言の葉の庭」以前から新海誠は古典作品の引用をおこなってはいるが、「君の名は。」にはじまる三部作ではより具体的に民俗学的なスピリチュアル要素を押し出して描くようになっていった。では、そうした描写は新海映画にとってどのような意味を持っているのかということを「すずめの戸締まり」の感想を交えながら備忘録的にメモしていく。  「

          すずめの戸締まりとナショナルなもの