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AIR RACE X 渋谷デジタルラウンド参戦のパイロット8名が公開

 2023年10月15日に決勝トーナメントが開催される「AIR RACE X 渋谷デジタルラウンド」。7月に行われた開催発表では、発起人の3名(室屋義秀選手、マット・ホール選手、ピート・マクロード選手)以外の参戦パイロットは後日発表とされていたが、9月27日に残る5名が公表され、8名が出揃った。1人ずつプロフィールを紹介していこう。



■ 全員がレッドブル・エアレース参戦経験あり

 今回発表された8名の参戦パイロットは、全員が2003年~2019年に開催されていた「レッドブル・エアレース」に参戦経験がある。重ねて、豊富な曲技飛行(エアロバティック)のキャリアを持つ者たちだ。AIR RACE Xはレッドブル・エアレースのレースフォーマットを下敷きにしているだけに、経験のないパイロットが参戦するにはハードルが高く、まずは順当な顔ぶれといえるだろう。

AIR RACE X 渋谷デジタルラウンド参戦パイロット
AIR RACE X 渋谷デジタルラウンドに参戦するパイロット(画像:エアレース エックス実行委員会)

 各パイロットには、それぞれが選んだゼッケンナンバーがある。これはレッドブル・エアレース参戦時に使用していたものを踏襲しており、その順に人物紹介をしていこう。

#8 マルティン・ソンカ選手(チェコ)- レッドブル・チーム・ソンカ

マルティン・ソンカ選手(チェコ)
マルティン・ソンカ選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 チェコ語での発音は「マルティン・ションカ」が近いのだが、レッドブル・エアレース時代と同じ、英語的な発音表記で紹介しよう。元チェコ空軍の戦闘機パイロットで、JAS39グリペン戦闘機を駆って祖国の空を守ると同時に曲技飛行競技にも参加。現在は空軍を退役し、プロの曲技飛行パイロットとして国内外のエアショウで飛行しているほか、曲技飛行競技大会にも積極的に参戦している。

マルティン・ソンカ選手のレース機(画像:エアレース エックス実行委員会)

 レッドブル・エアレースには2010年シーズンより参戦。2018年にはワールドチャンピオンになっている。2023年9月3日~16日、イタリアのエミリア=ロマーニャ州モデナ県にあるパヴッロ・ネル・フリニャーノで開催された第22回曲技飛行ヨーロッパ選手権では、個人の部で総合5位、団体の部で総合2位に輝いた。

#11 ミカ・ブラジョー選手(フランス)- 11レーシング

ミカ・ブラジョー選手(フランス)
ミカ・ブラジョー選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 フルネームは「ミカエル・ブラジョー」で「ミカ」は愛称。フランス曲技飛行界では若き天才として知られ、11歳で飛行訓練を開始し、21歳でフランスの曲技飛行代表チームに選出された経歴を持つ。2023年9月3日~16日に開催された第22回曲技飛行ヨーロッパ選手権では、個人総合3位の成績をおさめた。

ミカ・ブラジョー選手のレース機
ミカ・ブラジョー選手のレース機MXS-R(画像:エアレース エックス実行委員会)

 レッドブル・エアレースには2014年シーズンより、新設されたチャレンジャークラスに参戦。2015年にシリーズ王者に輝き、2016年シーズンは「メンタープログラム」の対象者となって、1年を通して2014年ワールドチャンピオンであるナイジェル・ラム選手(イギリス)の薫陶を受けた。翌2017年から引退したラム選手に代わり、愛機のMXS-Rを受け継いでマスタークラスに参戦。最高成績は2018年ブダペスト大会での2位。

#18 ペトル・コプシュタイン選手(チェコ)- コプシュタイン・レーシング

ペトル・コプシュタイン選手(チェコ)
ペトル・コプシュタイン選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 チェコのプラハ大学大学院で経済学を学び、現在は中東欧地域で会計事務所を経営しているコプシュタイン選手は、大学時代に曲技飛行にのめり込み、競技会に参加するようになった。2007年にチェコの曲技飛行チームに参加し、最高カテゴリーのアンリミテッドを含む4つのカテゴリーでチェコの国内チャンピオンを獲得している。

ペトル・コプシュタイン選手のレース機
ペトル・コプシュタイン選手のレース機(画像:エアレース エックス実行委員会)

 レッドブル・エアレースには2014年シーズンよりチャレンジャークラスに参戦し、チャレンジャークラスの初代シリーズチャンピオンに輝いた。2016年シーズンからマスタークラスにステップアップしたのちは、2年目の2017年に総合6位を獲得。早くから才能を見せつけた。室屋選手と同じく、レクサス(チェコ現地法人)のサポートを受けている点でも注目だ。

#26 フアン・ベラルデ選手(スペイン)- チーム・ベラルデ

フアン・ベラルデ選手(スペイン)
フアン・ベラルデ選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 スペインを代表する航空会社、イベリア航空でA330の機長を務めるベラルデ選手。プライベートでは15歳でグライダーの操縦を始め、16歳で初の単独飛行を経験した。曲技飛行の世界には1999年から参加し、2007年の曲技飛行世界選手権ではスペインチームの一員として、団体2位の成績に貢献している。

フアン・ベラルデ選手のレース機
フアン・ベラルデ選手のレース機(画像:エアレース エックス実行委員会)

 レッドブル・エアレースには2014年シーズンよりチャレンジャークラスに参戦し、翌2015年にはマスタークラスに昇格。最高順位は2017年アブダビ大会の2位だが、それ以外に予選1位を獲得しており、一発の速さには定評がある。現在乗っているエッジ540V2は、レッドブル・エアレースで3度のワールドチャンピオンに輝き、歴代最多勝を誇る偉大なパイロット、ポール・ボノム選手(イギリス)から譲られたもの。

#31 室屋義秀選手(日本)- レクサス・パスファインダー・レーシング

室屋義秀選手(日本)
室屋義秀選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 このAIR RACE Xの生みの親といっていい室屋選手については、日本が誇る航空界のヒーローとして、知っている方も多いだろう。中央大学の航空部でグライダーの操縦から始まった室屋選手のパイロット人生は、但馬空港で開催された曲技飛行大会を見たことで大きな転機を迎える。単身渡米して故ランディ・ガニエ氏(1997年死去)の門を叩き、曲技飛行パイロットとなったのちは、国内でのエアショウや海外の曲技飛行大会で人々を魅了してきた。

室屋義秀選手のレース機
室屋義秀選手のレース機(画像:エアレース エックス実行委員会)

 2009年からは、アジア人初のパイロットとしてレッドブル・エアレースに参戦。当初は苦しむことも多かったが、エッジ540V3を手にした2015年以降は成績が向上し、2016年の千葉大会で劇的な初勝利を挙げた。その勢いのまま2017年シーズンのワールドチャンピオンとなったが、これは日本人のモータースポーツ選手が初めてトップカテゴリーで手にした年間世界王座でもある。

#77 パトリック・デビッドソン選手(南アフリカ)- チーム77

パトリック・デビッドソン選手(南アフリカ)
パトリック・デビッドソン選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 「パット」の愛称で親しまれているデビッドソン選手は、12歳の時にパイロットの父のもと飛行機の操縦を始め、その年に参加した飛行コンテストでセイフティー・パイロット賞を受賞するなど、早くから才能を開花させた。17歳で単独飛行を経験すると曲技飛行の訓練も始め、これまでに6回もの南アフリカ国内チャンピオンに輝いている。2017年からはレッドブル・アスリートの一員に加わった。

パトリック・デビッドソン選手のレース機
パトリック・デビッドソン選手のレース機(画像:エアレース エックス実行委員会)

 レッドブル・エアレースには2018年よりチャレンジャークラスに参戦。チャレンジャークラスにおける最高成績は2019年カザン(ロシア)大会における2位で、今回の参戦パイロット中唯一、マスタークラス経験はない。しかしながら2022年の曲技飛行南アフリカ選手権で6回目の優勝を果たしており、その操縦技術には定評がある。

#84 ピート・マクロード選手(カナダ)-ピート・マクロード・レーシング

ピート・マクロード選手(カナダ)
ピート・マクロード選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 室屋選手、ホール選手と共にAIR RACE Xの発起人として名を連ねるマクロード選手は、カナダを代表する曲技飛行パイロット。3歳の頃に父親の膝に乗って飛行機の操縦を体験し、16歳でパイロットライセンスを取得した後は不整地に離着陸するブッシュ・パイロットとなり、18歳で曲技飛行の訓練を始めるとわずか1年でインストラクターの資格を取得した。

 レッドブル・エアレースには2009年、史上最年少の25歳で参戦。室屋選手をはじめ3名のワールドチャンピオンを輩出した優秀な「2009年組」の中でも、真っ先に優勝を手にしたのはマクロード選手(2014年ラスベガス大会 *決勝は悪天候で中止され予選成績で順位決定)だ。

#95 マット・ホール選手(オーストラリア)- マット・ホール・レーシング

マット・ホール選手(オーストラリア)
マット・ホール選手(画像:エアレース エックス実行委員会)

 室屋選手、マクロード選手と共にAIR RACE Xの発起人となったホール選手(フルネームはマシュー・デビッド・ホール)は、祖父、父と続くパイロット一家の生まれ。15歳でグライダーの操縦を始めたのち、18歳でパイロットライセンスを取得する。オーストラリア空軍入隊後はF/A-18の戦技教官(トップガン)になり、将校交換プログラムでアメリカ空軍に出向時は、F-15Eのパイロットとして中東での実戦に参加している。アメリカ空軍時代に曲技飛行競技に出会い、2007年にはオーストラリア曲技飛行選手権アンリミテッドクラスで優勝した。

マット・ホール選手のレース機
マット・ホール選手のレース機はMXS-Rかエッジ540V3か不明(画像:エアレース エックス実行委員会)

 空軍中佐として退役後、有名な「2009年組」の一員としてレッドブル・エアレースに参戦したホール選手は、デビューシーズンのポルト(ポルトガル)大会で3位に入賞し、年間総合3位となるなど早くから才能を開花させた。その後も各シーズンで表彰台に登り、2015年のシュピールベルク大会で初優勝。2015年、2016年と連続で年間総合2位となり、最終シーズンである2019年に悲願のワールドチャンピオンに輝いた。現在も「現役のFAI認定エアレースワールドチャンピオン」である。

■ ハイレベルの操縦技術がデジタルでどう発揮されるか注目

 各パイロットはハイレベルの操縦技術を持ち、飛行機を思うままコントロールすることができるが、デジタル空間でのエアレースは初めて。しかも同一の場所ではなく、お互い離れた場所でのフライトデータを持ち寄って優劣を決めるため、勝敗については未知数な要素が大きい。

 それぞれベストと思える条件でフライトし、最速のタイムを競う訳だが、どれだけ正確にレーストラックと相手をシミュレーションできるかが勝負の鍵となるだろう。誰が最初の王者となるか、プロフィールを頭に入れて観戦しよう。

画像提供:エアレース エックス実行委員会

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