テロップ研究記
テロップ模写と観察。それは楽しいです。
どことなく漂う海外製アプリの概要感を横目に、ひたすらテロップを模写し、分析していく記事を書いてみます。画像を拡大しながら観察すると、引きで見るのとはまた見え方が変わって面白いと思います。ここで「テロップ」というのは、バラエティ番組のテロップを想定しています。
普段何げなく見ていて、スルーされがちなテロップに注目していきましょう!
【注】
・コメントフォロー(演者が喋っている内容を表示するテロップ)を対象とします。
・ここで掲載する画像は、あくまで再現です。文言も見たままではなく、変更しています。境界線のサイズなど、厳密には若干異なる場合もあると思いますが、雰囲気で楽しんでください。
・映像に載せるテロップの用途を鑑みて、背景はあえてごちゃつかせています。
・こちらの手元にないフォントは、持っている物で代用して示すとともに、本家のフォント名を併記しています。別に困る人はいないと思いますが、間違っていたらすみません。
・フォント名についている「A-OTF」や「FOT」は、どこのメーカーのフォントかを表します。よく分からない人は無視でOKです。「AP」版とか「stdN」とかの区別は細かすぎて伝わらないので表記上端折ります。
テレビ朝日 『アメトーーク!』
フォント、装飾いずれをとっても、とにかくバリエーションに富んでいます。
この番組は、主にインパクトのある発言に限定してテロップを表示するスタンスのため、基本が派手です。使用フォントについても、モリサワ、フォントワークス、ダイナフォントを制覇。(ダイナフォントは私の手元にないため、再現画像では代用しています。)
使用フォントの種類はトップクラスではないかと個人的には思います。
日本テレビ 『月曜から夜ふかし』
上3つはスタジオトーク、一番下はVTRで出ていたテロップです。VTRは基本的には「ロダン」というゴシック体に有彩色シャドウを重ねるシンプルなもので統一されています。見た感じちょっと長体(※縦に引き伸ばす変形)強めかな…。もちろん、VTRのコメントフォローのバリエーションはこれ以外にもありましたが、いずれもシャドウ系で、比較的シンプル寄りな印象を受けました。対して、スタジオトークは凝りまくり。上から3つ目のものに至っては、実際にはここからさらに映像でキラキラエフェクトが足されていました。それにしても、「マティスEB」万能すぎです。
関西テレビ 『土曜はナニする!?』
上3つに関しては、実は文字色が違うだけで、他の装飾は基本一緒。実質的には同じものです。全くパターンが異なるのは1番下の画像だけ。比較的まったりした旅コーナーのため、柔らかい印象のフォントと、シャドーの掛け方がなされています。下線にしれっと加えられたストライプのパターンがいいアクセントです。上3つが実質1パターンと考えると、なんだかバリエーションが少ない印象を受けますが、違います。前2番組が多すぎるのです。
ちなみに、1つ目の画像で使用されているのはフリーフォントです。
テレビ東京 『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』
恐ろしいほどシンプル…。
コメントフォローは、基本このスタイル1本です。強調部については、文字サイズを大きくすることによって周りと対比させています。また、漢数字の「一(いち)」と、伸ばし棒の「ー」について、漢数字の「一(いち)」をわざわざ別書体に置き換えて混植することで区別されています。細かい配慮ですね。
ちなみに、番組を観ると分かるのですが、この番組は言い間違えも含めてほぼ全部文字起こししています。テロップ編集だけでもめちゃくちゃキツそうです。
中京テレビ 『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』
大きく2種類あるように見えて、装飾としては実はほぼ1種類のパターンです。強調するとき(2番目の画像)に白シャドウが若干かけられていますが、それ以外の縁取りはほぼ変わっていません。パワフルな人たちが数多く出ることもあり、スーラ(丸ゴシック)もマティス(明朝体)も、いずれもウエイトは最大の「UB」。強調部分とかではなく、デフォルトがスーラUBなのは結構攻めていると個人的には感じます。
TBS 『櫻井・有吉THE夜会』
上2つはVTR用のテロップスタイルです。ここで再現したもの以外にもたくさんパターンはありましたが、代表的な基本形は上に示したようなものだと思います。
上から3つ目のテロップ(※スタジオトークにて使用)に関しては、装飾がシンプルな代わりにフォントが特徴的だったのですが、私の手元にそのフォントがないのでいまいち雰囲気が出ませんでした。ちなみに一番下の画像についても、持っているフォントで代替しています。
ところで、これは偏見かもしれませんが、上2つのテロップで使用されているようなパキッとした(色同士の境界がわかりやすい)グラデーションの使い方、めっちゃTBSって感じがします。
まとめ
…と言っても、別にこれといった結論を出したい訳でもないので、まとめることなどないのですが。いくつかの番組テロップについて再現&感想を載せていきました。何の番組を取り上げるかについては、コメントフォローテロップの「種類が多い」とか「テロップ自体のデザインや表記が面白い」とか、ある程度の基準はありますが、結局は完全に主観で、特に深い意味はありません。局はなるべくバラけるように心がけましたが、結果的にフジテレビとNHKはカバーできていませんでしたね。カンテレはフジ系列の局なので、ニアピンではありますが。とはいえ、フジテレビとNHKを扱っていないことについても、別に深い意味はないので、そこは悪しからず。
また、Photoshopやテキスト装飾の機能が豊富な動画編集ソフトをお持ちの場合は、自分でも番組を見ながらテロップ模写をやってみるのも楽しいかもしれません。番組のテロップを再現することを通して、自分で作るテロップのクオリティを高めることもできるでしょう。もちろん、個人の動画くらいの規模だと、そんな華やかなテロップを使うほど派手な出来事は起こらないとは思いますが…。いざというとき(どんな時よ?)、役立つかもしれません。
ソフトは何でも良いですが、
・縁取り
・ドロップシャドウ
・立体効果(ベベル)
・グラデーション
に相当する機能は最低限必要かと思われます。
ちなみに、当記事に使用した画像は、全てPhotoshopで作成しています。
本来はテロップ用のソフトではないので、実は少しだけ不便な点もありはしますが、クオリティの高いテロップを作ることができます。テロップ専用のソフトを扱う法人でない限り、高度なテロップ制作ができるソフトといえばPhotoshopの名が上がることが多い印象です。
より具体的で詳しい話を以降に書きますが、Adobeソフトの使用経験がないと伝わらない話になります。
ここで読むのを終える方は、ここまで読んでいただきありがとうございました!
続きも読んでやっても良いという方、ここから実質の後半戦です。
よろしくお願いします。
Photoshopでのテロップ制作について(※Adobeソフト経験者向け)
Photoshopでテロップ制作をする場合、レイヤースタイルを使用することで、基本は1レイヤーのテキスト加工のみで作ることができます。ただし、ものによっては1レイヤーで完結しない場合や、加工のために形式の変換が必要になる場合もあります。本文中で、Photoshopでテロップ制作をするのは「実は少しだけ不便」と述べたわけはこれです。具体的には、Photoshopの場合、1レイヤーのスタイルだけでは
・文の一部(強調部分など)のみ装飾を変えることができない
・ドロップシャドウにグラデーションをかけられない
・境界線をマイター結合にできない
からです。
したがって、場合によってレイヤーを複製して、別の効果をかけて上に乗せる or 下に敷く という操作を行う必要があります。
これくらいならまだ良いのですが、より煩雑な手順が必要になる場合もあります。無理やり1レイヤーで完結しようとした場合は、基本的に「ラスタライズ」という、テキスト以外の形式に変換する操作が伴います。しかし、ラスタライズをしてしまうと、内容の打ち替えが出来なくなって困ることも多いです。色々な方法があるとは思いますが、私は別レイヤーに複製したものを加工して乗っけるという、極めて単純な方法に落ち着きました。
ちなみに、先ほどPhotoshopの1レイヤー単体では出来ないこととして書いた
・文の一部(強調部分など)のみ装飾を変えることができない
・ドロップシャドウにグラデーションがかけられない
・境界線をマイター結合にできない
は、プレミアプロの「エッセンシャルグラフィックス」を使えば1レイヤーで全部できます。こちらは動画編集ソフトということもあり、最初からテロップ作成を想定して機能が実装されているのでしょう。
動画上に直接テロップを入れられるという点も考えると、プレミアプロの方が圧倒的に効率が良いと言えそうです。
…とはいえ、逆にプレミアプロでは
・シャドウ(内側)
・ベベルとエンボス
に相当する処理がサクッと出来ません。立体効果は「ベベルアルファ」というエフェクトを使えばかけることも出来ますが、Photoshopと比較すると細かい設定が出来ず、扱いづらい印象です。
シャドウ(内側)に至っては、私の知る限りでは代替機能すらありません。そもそもの話、別にシャドウ(内側)は無くても良いと思う人もいるかもしれませんが、これが意外と重要です。
上の画像、シャドウ(内側)の有無以外は全て同じです。しかし、印象は結構違うかと思います。スマホでご覧の方は拡大すると分かりやすいです。シャドウ(内側)がある方が、見やすく深みがあるのではないでしょうか。早い話、シャドウ(内側)を入れるとプロ感が増すのです。一般に「見にくい」とされる、明るい文字色×白色の縁取りの組み合わせでさえも見やすく出来るので、かなり強い…!
……というシャドウ(内側)に相当する機能がプレミアプロに一切ないのは、地味に痛いです。
結果、Photoshopとプレミアプロ、一長一短ですね。普通はプレミアプロのエッセンシャルグラフィックスを使えば十分で、こだわり所だけPhotoshopで作るという使い分けをするのが良さそうです。
※さらにマニアックな補足※
ここまでPhotoshopの話をしてきましたが、実際にはテロップ専用のソフトが存在します。それに関連した話ですが、テレビの制作会社でも使われる、テロップ専用ソフトとして代表的な「TFX-Artist」が、2023年に年額サブスク化したようです。今までは、買い切り+公式サイトに値段の表記もない状態で、完全に法人との取引しかしない感じが出ていましたが、それがついにサブスク化。年間約15万円とのことです。別で動画編集ソフトが必要であることを考えると、依然として個人にはキツい印象はありますが、元が法人向けのソフトなのでそこは仕方ないでしょう。ただ少なくとも、以前よりは明らかに個人へ向けた門戸が開かれた感じはします。法人にとっては、買い切りなら一発で百ウン十万したであろうソフトが年15万円から導入できるので、かなり魅力的ですね。
セールストークみたいな雰囲気が出てしまいましたが、企業の回し者ではありません。特定の製品名を出した上で「魅力的ですね」なんて書いたので紛らわしすぎますが、本当です。
…長すぎた番外編コーナーもここまで!
以上、意外と奥が深いテロップの世界でした。
番外編まで含めると、「まとめ」が一番長いというワケの分からない状態になってしまいましたが、何はともあれ、最後まで読んで頂きありがとうございました!