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ファゴットの話

2020-07-18 06:52:54

ファゴットは「無駄の多い楽器」である。使う頻度の少ない「Low F」より低い音を出すために大きくて重くて大仰な部分がくっついている。

バス楽器としての特徴はルネサンス時代のドルシアンの時代から顕著だ。まず、F管であるのに低音域を拡大するために折り返してE、D、Cまで下がることができる構造になった。ここまでは明晰な音色を維持しつつ延長部分のおかげで「甘美な音色」を持っていた。

フランスのオトテール がルイ14世の楽団のためにベルを延長し、最低音がB♭になった。ここで柔らかい音色はさらに洗練されたがやや鼻にかかったように感じられる音域もあり、現在まで続くバソンにも受け継がれた。

にも関わらず、ファゴットで奏される主要なパッセージの7割以上が延長部分を必要としない音域である。

それもそれでいいのだ。ここから先は好みの問題である。

何が言いたいかというと、楽器のどの部分を鳴らすのかという話になる。

その不要で大げさな部分は確かに唐突で荒々しい音色を柔らかくする効果もあるが、通気性を著しく損なうことでファゴットの音の到達力を損ねている。

現在の機能的に完成されたファゴットはその部分の質量が重すぎる、そしてその部分も含めて「音色の均一化」を追求するがために必要以上に暗く、太く、重い音色になってしまう。その結果、テナー音域以上で「甘美」な音色が損なわれている。

自分の好みではテナージョイントと下のFまでの部分(つまり折り返し前)がファゴットの主要部分と思っているので、テナー音域を吹いた時にイメージとしては延長部分を無視している(実際は関係しているが。。)あくまで付け足し部分。と割り切る。

奏者による音色の違いはこんなことが原因なのではなかろうか。

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