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深夜のソコ
大学生の息子のところに一晩泊めてもらった。
いつものことだが、寝場所だけ貸してくれと頼んで、あとは持ち込んだシュラフで寝るだけ。
ショバ代として夕飯ぐらいは奢るのだけど、その日はサークルの仲間と食べてくるので帰りも遅くなるらしい。ホントに部屋の片隅を借りるだけ。まあ、気楽なもんだ。
男同士なので、あまり気を遣うこともない。息子のほうは多少の気遣いはあるのだろうが、自分は寝場所があれば、あとは構わないでもらいたい人間なので、こういう場所があることがありがたい。
まあ、それでも数ヵ月ぶりに会うので、とりあえず自分の近況などを取り留めもなく話す。息子は自分のことを自分から話したりしないし、それも昔から。親に言いたくないことは言わなくてよろしい。ただ、たまに伝えてもらわないといけないことまで話さないこともあるので、そこは話してよ…と、父は思うのだよ…頼むから。
しばらくすると寝息が聞こえてきた。そのあたりは妻に似たらしい。寝るときは、あっという間(笑)
さっきまで話してたのに…と思うこともしばしば。
自分も疲れたので寝る。
カタ……
物音が聞こえる。他にも住人がいるので物音ぐらいはするだろう…と思って寝ようとすると、また
カタ……
ん?なんだろう?
カタ……カタ……カタ……カタ……
一定のリズムで何かが聞こえる。
そのうち
キッ……キッ……キッ……キッ……
生木を擦り合わせるような音が混じる。何か漏れてる?それとも地震?揺れは感じないけど、最近地震も多いからなぁ…少し心配になり始めた。
息子は寝ている。一度寝ると起きない。耳のそばでアラームが鳴っても起きない。
この図太さは誰譲りなのだ?
キシッ……キシッ……キシッ……キシッ……
建物が軋む音がし始めた。大きな地震の前触れ?
思わず身構える。
そのとき…
ァあ…ァァ…ん…ゥッ……アッ……
隣の部屋かららしい…甘い吐息の漏れる音とともに、囁くような艶かしい声が微かに聞こえる…
しばらくすると、辺りに再び静寂が訪れた。
若いって…いいよね…老境に差し掛かった身として、しみじみとそう思うのであった。