大好きな貴方がくれる 大好きだった優しい言葉たちが 容赦なくえぐるのだ もう取り繕い方も忘れて 剥き出しで じゅくじゅくに膿んだ僕のこの心には 貴方の美しさも正しさも 痛すぎる だからもう 何も言わないで 僕は猫を抱えて ここで眠るから いつか目が覚めたら まっさきに貴方のところに会いに行くから たぶん行くから
知っているような 見知らぬような どこまでも続く広い駅の構内に立っていた 私には 行かなければいけないところがあったから こんなところに立ち止まってはいられない お化け屋敷みたいで 遊園地みたいで ダンジョンみたいで 知り合いがいたり 見失ったり 階段登って降りて 何時間も彷徨い歩いて 探しているのは出口だったか それともどこかに行く電車に乗るのだっけ 同じところをぐるぐるしているような 全く見知らぬ通路を歩いているような ぐるぐるぐるぐる いい加減疲れ果てて もうう
暗闇に蹲る貴方に かける言葉が見つからないのだ もうずっと暗闇しか見つめない貴方の目が 少しでも光を思い出してくれるなら 貴方を救う言葉を求め 夜の海を彷徨い続ける そして今日も鴉が鳴いた 終わりのない闇に貴方を残して 今日も抜け殻は朝を行く (ワタシモココニイルヨ)
朝、台所に立つ 立ち昇る生臭さが おまえはナニモノなのだと 今日も僕を詰る きっと綺麗にピカピカに 苛性ソーダならにおいもなくなる 魔法のようにまっさらに 生まれ変わってまっさらに あ 詰まった 部屋中に 僕の悪夢が 溢れ出る
腕時計を気にしながら 階段を急ぎ足でくだる 地下鉄の生温かい風がふく 一段降りるごとに薄暗くなる 一段一段 ぬるりとした闇の中を いちだんいちだん 腕時計が闇に溶けていく はて この先に なにかあったのだろうか 私は なにを降りているのだろうか
灰色の世界で 君の後ろ姿だけが色鮮やかに 君を彩る蝶が ひらひらと舞う ああ とても とても会いたかったのだよ だのに 生温かい絶望が 喉の奥にずるりと張り付いて 声が出ないのだよ 君はパッと それこそ魔法のように パッと消えてしまうのだ 君はもうどこにもいないのだった
一歩が その一歩が たとえ僕に 地球から飛び出すほどの勇気が あったとしても あったとしても 踏み出せないんだ その一歩が とてつもなく とてつもなく 僕の足はもう動かないのだよ 僕はもう息ができないのだよ こぼれ落ちるあなたの涙を僕は こぼれ落ちるダレカのナニカを僕は ボクハココニイル
ぽっかりと 取り残された静寂のなかで ただ寒さに凍えるようなこの世界で 瞼が重たい 目を瞑ってしまおうか ぼんやりと願う私のすぐ横を ついっと魚が 通り過ぎていく 頬にざらりとした痛みを感じた 指先が触れた頬が 赤く赤く熱をもつ