脳腫瘍の愛猫との1年間のお話 17
一通り病状の説明が終わった。隣に座っている主人は冷静に話を聞いていたが、動揺は十分に伝わってきた。しかし、技術者である彼は物事を分析し、その解決に向けて最適解を出すという私には無いスキルを持っている。冷静にこの状況を分析しているのだろう。とはいっても相手は機械ではない。愛猫だ。決して平静ではなかっただろう。
今後の治療へと話しが移った。まずは、前頭葉の腫瘍。これは場所的に外科手術で取り除くことが可能であり、猫の手術の中ではリスクも低く予後も良い。が、問題は残り2つの腫瘍だ。
前頭葉の腫瘍を99%取り除いたとしても、残り2つの腫瘍がいつ暴れだしどんな症状がいつ出現するかはわからない。3か月後かもしれない。半年後かもしれない。1年後かもしれない。腫瘍の正体が分からないためそれは誰にも分からなかった。
その時点でのべべの状況はというと、前頭葉の腫瘍があまりにも大きいために脳内の他の臓器が圧迫され、小脳が喉元付近まで押し出されたことにより、窒息する危機にあった。もっと言えば、担当医の説明を聞いている間に窒息死してもおかしくない状況であった。
ぞっとした。昨日までべべを抱きしめたり、頭部を撫ぜたり、自分で高度医療センターにべべを運んだのだ。窒息死しかかっていたなんて。。