強制連行された子供 -セルヒー（２）
ウクライナへの連絡
携帯電話に位置情報アプリを強制的にインストールされ、一定時間しか会話できず、養親に行動をコントロールされていてコミュニケーションをとる時間はあまりなかった
それでも、セルヒーの言葉に迷いは無かった
「ウクライナに帰りたいんです
助けてくれる？
お願いします」
祖国を爆撃し、祖国の言葉を敵視し、彼らが全てを決定し、セルヒーはそれを喜ぶべきだと、なぜか信じている外国人たちに囲まれた異国の地で毎朝目覚めながら、少年の言葉はいつも希望を失っていなかった
「すぐに『出て行く』と伝えました
『どうしてだ、何が嫌なんだ』と言われた」とセルヒーは振り返る
その家庭には、すでに3人の子供と1人の里子がいた
それで、セルヒーは５番目の子供だった
この家族は信心深く、よく教会に行き、電話を使う時間をコントロールしていた
「ウクライナの話ばかりするのが嫌でした
やめて欲しいと言っても、彼らは気にせず、座ったとたんに話し始めました
いつもです
私が家にいるときは必ず話すのです
『ナチスがウクライナにいる』
そればかりです
私はただ黙って、彼らと話しませんでした」
セルヒーは、その新しい「家族」についての完成したビデオを見ていない
「見たくありません
そんなもの見たくない
嫌なんです」
セルヒーの物語のもう一つの転換点にパスポートに関する話がある
すでにロシアの「家族」になっていたセルヒーに、それは強制的に発行されたのだ
「マリア・ルボヴァ＝ベロヴァが主導してやったことだ」とセルヒーは言う
しかし、「養親」はすぐに彼のパスポートを取り上げた
「養子縁組のため」と言われているが、実際は、どこにも旅行できないようにするためだとセルヒーは考えている
なにしろ、ロシアの法律では、パスポートを持つ子どもは自由に国内を旅行することができるからだ
「チャンスを待っています」「いつウクライナに帰れるだろう…」と、我々との会話でセルヒーはいつも聞いていた
この間、セルヒーは、ずっと、ウクライナには自分を必要としている人がいる、自分はここで待っている、見捨てられることはない、と辛抱強く、望みを捨てなかった
助けは本当に来ると信じ、決して諦めなかった
「連れて行ってくれとメールを書いたよ」とセルヒーは言う
私たちも一緒に日数を数えた
ウクライナは彼を待っていた
誰もが待っていた
帰還
セルヒーは、適切な場所にメールを出すことで、自ら脱出を始めたと言えるだろう
彼とはインターネットとファーストネームでつながっていた
彼を待つ間、毎日が最大限に大変だった
そして、数日間の沈黙が訪れた
ある時、突然のメッセージが来た
短い文章だった
"Щойно в'їхав в Україну. Зі святим Миколаєм вас😊"
「ウクライナ に今入ったよ。ハッピー・セント・ニコラス...😊」
注：12月7日はウクライナ正教会の祝日「聖ニコラスの日」である。
それは間違いなく、私たち全員にとって最高の贈り物でした
その旅は、とてつもなく大変なものでした
そして12月20日、ウクライナのオンブズマン、ドミトリー・ルビネッツ事務所から、セルヒーがウクライナに帰国したことが正式に報告された
セルヒーとのミーティングは機密事項だった
さらに、ウクライナとの国境でセルヒーに会ったという
公開された写真の中で、セルヒーはウクライナの国旗を持っている
倫理的・安全上の理由から、顔は隠してある
「私がすでに遠くにいたとき、その 『家族』は私にメールを書きました
彼らは、（旅費を）あげるから戻ってきなさい、さもなければ問題が起きる、と言ったのです
それは、おそらく、要するに、彼らが大事にするということでしょう」
もしかしたら、この人たちは本当に「問題」を抱えてしまうかもしれない
しかし、その里親はウクライナから強制送還された子供を自宅に引き取った
そして、彼らのプロパガンダがロシア人の耳に何を流し込もうとも、そんな「親」は犯罪の共犯者なのである
しかも、単なる犯罪ではなく、ローマ規程第6条にあるように、「ジェノサイド」、つまり「ある集団の子どもを他の集団に強制的に移送すること」は要件の一つとなっている
この犯罪は国際刑事裁判所の直接の管轄下にあり、本案件の一部として捜査されることになる
犯罪に参加した者は特定される
ウクライナから強制送還された子供たちを家族のもとに連れて行くロシア人たちは、どんなに理解のある人たちであっても、遅かれ早かれ必ず裁かれることになる
セルヒーにはウクライナに親族がいることが分かっており、その親族が面倒を見ることになっている
そして、すでにセルヒーはウクライナでの計画を立てている
将来は整備士になるのが夢だ
すべての悪いことは、もう過去の事だ
また、セルヒーはもうウクライナのパスポートを受け取っている
セルヒーはそれを楽しみにしていた
しかし、まだロシアには、強制送還された他の何千人ものウクライナの子供たちがいます
セルヒーほど年長の子供ばかりではありません
すべての子供が助けを求めることができるわけではありません
「ロシアの子供たちのオンブズマンであるマリア・ルボヴァ＝ベロヴァは、プロパガンダメディア用のカメラで『楽しいおしゃべり』のために子供たちを訪問し、セルヒーや他の追放されたウクライナの子供たちの運命、ロシアの家庭に養子に出されること、を決めた」とドミトリー・ルビネツは言う
ドミトリー・ルビネツは、オンブズマンが特別報告書の中で、ロシアのこの「同僚」が犯罪を隠すつもりが無いことを指摘する
「ロシア大統領代理のリボヴァ＝ベローヴァは、公式サイトで、自らウクライナの子供たちを連れ出し、それに参加し（注：マリウポリの子供を自分の養子にしている。）、彼女の言葉を借りれば、ウクライナの子供たちは『とてもひどい仕打ちを受けている』のだという
ウクライナの歌を歌い、『ウクライナに栄光あれ』と言うのが『とてもひどい仕打ち』だというのです
そして、彼女は『大丈夫、再教育します』と言っている
私たちは、このことに世界中の人々の注意するよう呼びかけます
そして、子どもの強制連行に関し、国際法廷レベルの新たな手続きを求めます」
子どもの強制連行を調査したEastern Human Rights Group と the International Institute for Strategic Studiesの研究によれば、マニュアル、占領地内のいわゆる「収容所」の組織化、段階的な強制送還計画など、あらかじめ準備されたシステムで計画的に行われたものであった
人権活動家たちは、ロシア人が孤児を強制送還するだけでなく、親から子供と引き離し、権利を奪う機会を探し、子供たちを強制連行していることを突き止めている
調査の結果、強制的なパスポート配布、新しいロシア人の養親に対する正しいイデオロギー教育についての試験、名前と姓の変更、国外への拉致は、ウクライナ人に対するジェノサイドの直接的な兆候であると結論付けている
ウクライナ国家情報局によると、2022年2月24日から11月1日までの期間に拉致された人々（ウクライナ領からロシア連邦領またはクリミア自治共和国とセヴァストポリ市に強制連行された者）は、大人37,855人、子ども8,140人を含む45,995人であることが判明している
しかも、これはあくまでウクライナが確認できたデータである
これは、少なく見積もった数であるということに他なりません
ロシア側では、自分たちが連れ去ったウクライナの子どもたちを約70万人と発表しています
（終わり）
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