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実践的Webインフラ構築: インフラエンジニアのための環境構築とチューニング

はじめに

現代のWebアプリケーション開発において、インフラエンジニアの役割は急速に変化し、その重要性が増しています。本書では、三層アーキテクチャを基本としたWebアプリケーション環境の構築から最適化までを、実践的に学んでいきます。

本書の対象読者

  • 基本的なLinuxコマンドを理解しているインフラエンジニア

  • Webアプリケーションのインフラ構築に興味がある方

  • 開発者との協業をより効果的に行いたい方

本書の構成

  1. Webアプリケーションアーキテクチャの基礎

  2. 仮想環境でのUbuntuセットアップ

  3. Webサーバー(Apache)の構築と最適化

  4. ポートの設定と接続

  5. アプリケーションサーバー(Tomcat)の導入とチューニング

  6. データベース(MySQL)のセットアップとセキュリティ強化

  7. 三層アーキテクチャの統合と動作確認

  8. パフォーマンスチューニングとトラブルシューティング

  9. セキュリティ強化とベストプラクティス

  10. 監視とログ管理の実装

  11. Infrastructure as Codeへの発展

各章は、概念説明、実践手順、最適化のヒント、そして発展的なトピックで構成されています。

第1章 Webアプリケーションアーキテクチャの基礎

1.1 Webアプリケーションの進化

Webアプリケーションアーキテクチャは時代と共に進化してきました。ここでは、主要なアーキテクチャパターンを比較し、それぞれの特徴を理解します。

二層アーキテクチャ

  • 構成:クライアント層とサーバー層

  • 特徴:シンプルで実装が容易、スケーラビリティに課題

  • 例:デスクトップデータベースアプリケーション

三層アーキテクチャ

  • 構成:プレゼンテーション層、アプリケーション層、データ層

  • 特徴:スケーラビリティと保守性が高い、実装がやや複雑

  • 例:多くの企業向けWebアプリケーション

マイクロサービスアーキテクチャ

  • 構成:独立した小さなサービスの集合

  • 特徴:高い柔軟性とスケーラビリティ、運用の複雑さ

  • 例:大規模なクラウドネイティブアプリケーション

1.2 三層アーキテクチャの詳細

本書で扱う三層アーキテクチャについて、各層の役割と相互作用を詳しく見ていきます。

  1. プレゼンテーション層(Apache)

    • 役割:ユーザーインターフェースの提供、リクエストの受付

    • 主要コンポーネント:Webサーバー(Apache)

  2. アプリケーション層(Tomcat)

    • 役割:ビジネスロジックの処理、データの加工

    • 主要コンポーネント:アプリケーションサーバー(Tomcat)、JSP、サーブレット

  3. データ層(MySQL)

    • 役割:データの保存、取得、管理

    • 主要コンポーネント:データベースサーバー(MySQL)

1.3 インフラエンジニアの役割

現代のWebアプリケーション開発におけるインフラエンジニアの重要性と、開発者との協業ポイントについて解説します。

  • 環境構築と最適化

  • パフォーマンスチューニング

  • セキュリティ強化

  • スケーラビリティ設計

  • 監視とログ管理

  • 自動化とInfrastructure as Code

演習

  1. 三層アーキテクチャの各層の役割と、それぞれの層で使用される代表的な技術を3つずつ挙げてください。

  2. インフラエンジニアが開発者と協業する上で重要なポイントを3つ考え、それぞれについて簡単に説明してください。

第2章 仮想環境でのUbuntuセットアップ

2.1 仮想化技術の選択

仮想化技術の選択は、開発環境と本番環境の一貫性を保つ上で重要です。主要な仮想化技術の特徴を比較します。

  • VirtualBox: オープンソース、クロスプラットフォーム対応

  • VMware: 高性能、エンタープライズ向け機能が充実

  • KVM: Linuxカーネル統合、高いパフォーマンス

仮想化のメリット:

  • 環境の分離と管理の容易さ

  • スナップショットによる状態管理

  • リソースの効率的な利用

デメリット:

  • オーバーヘッドによるパフォーマンスの低下

  • 複雑な設定が必要な場合がある

2.2 Ubuntu LTSのインストール

Ubuntu Long Term Support (LTS) バージョンを使用することで、長期的な安定性とセキュリティアップデートが保証されます。

# ISOイメージのダウンロード
wget https://releases.ubuntu.com/22.04/ubuntu-22.04-live-server-amd64.iso

# 仮想マシンの作成とOSのインストール手順
# (仮想化ソフトウェア特有の手順は省略)

# インストール後の初期設定
sudo apt update
sudo apt upgrade -y

2.3 初期設定とセキュリティ強化

基本的なセキュリティ設定を行い、システムを安全な状態に保ちます。

# ファイアウォールの設定
sudo ufw enable
sudo ufw allow ssh

# SSHの設定強化
sudo vi /etc/ssh/sshd_config
# 以下の行を変更または追加
PermitRootLogin no
PasswordAuthentication no

# SSHサービスの再起動
sudo systemctl restart sshd

# 自動アップデートの設定
sudo apt install unattended-upgrades
sudo dpkg-reconfigure --priority=low unattended-upgrades

演習

  1. VirtualBoxまたはVMwareを使用して、Ubuntu 22.04 LTS Serverをインストールしてください。

  2. インストールしたUbuntuに対して、以下の設定を行ってください:

    • システムを最新の状態に更新

    • SSHでのルートログインを無効化

    • ファイアウォールを有効にし、SSHのみ許可

    • 自動アップデートを有効化

  3. 設定後、別のマシンからSSH接続ができることを確認してください。

第3章 Webサーバー(Apache)の構築と最適化

3.1 Apacheのインストールと基本設定

Apache HTTP Serverは、最も広く使用されているWebサーバーの一つです。ここでは、Apacheのインストールと基本的な設定方法を学びます。

# Apacheのインストール
sudo apt install apache2 -y

# Apacheの起動と自動起動の設定
sudo systemctl start apache2
sudo systemctl enable apache2

# ステータスの確認
sudo systemctl status apache2

3.2 バーチャルホストの設定

バーチャルホストを使用することで、1台のサーバーで複数のウェブサイトをホストできます。

# バーチャルホスト設定ファイルの作成
sudo vi /etc/apache2/sites-available/example.com.conf

# 以下の内容を追加
<VirtualHost *:80>
    ServerName example.com
    ServerAlias www.example.com
    DocumentRoot /var/www/example.com
    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_error.log
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_access.log combined
</VirtualHost>

# バーチャルホストの有効化
sudo a2ensite example.com.conf

# Apache設定のテストと再読み込み
sudo apache2ctl configtest
sudo systemctl reload apache2

3.3 モジュールの管理と最適化

Apacheの機能はモジュールによって拡張できます。必要なモジュールを有効化し、不要なモジュールを無効化することで、パフォーマンスと安全性を向上させることができます。

# モジュールの有効化(例:mod_rewrite)
sudo a2enmod rewrite

# モジュールの無効化(例:不要なモジュール)
sudo a2dismod status

# 変更の適用
sudo systemctl restart apache2

3.4 パフォーマンスチューニング

ApacheのMPM(Multi-Processing Module)設定を調整して、パフォーマンスを最適化します。

# MPM設定ファイルの編集
sudo vi /etc/apache2/mods-available/mpm_prefork.conf

# 以下のような設定を追加または調整
<IfModule mpm_prefork_module>
    StartServers            5
    MinSpareServers         5
    MaxSpareServers         10
    MaxRequestWorkers       150
    MaxConnectionsPerChild  0
</IfModule>

# 設定の再読み込み
sudo systemctl reload apache2

演習

  1. Apacheをインストールし、デフォルトページが表示されることを確認してください。

  2. 新しいバーチャルホスト「mysite.local」を作成し、カスタムHTMLページを表示させてください。

  3. mod_rewriteモジュールを有効にし、.htaccessファイルを用いて全てのリクエストをindex.phpにリダイレクトする設定を行ってください。

  4. ApacheBenchを使用して、デフォルト設定と調整後の設定でパフォーマンステストを行い、結果を比較してください。

第4章 ポートの設定と接続

本章では、Webアプリケーションインフラで使用する主要なポートとその設定方法について説明します。この理解は、後続の章でのアプリケーションサーバーやデータベースの設定に不可欠です。

4.1 主要ポートの概要

この環境で使用する主要なポートは以下の通りです:

| サービス | ポート | プロトコル | 説明 |
|---------|-------|-----------|------|
| Apache | 80 | HTTP | クライアントからのWeb要求を受け付ける |
| Apache | 443 | HTTPS | クライアントからの暗号化されたWeb要求を受け付ける |
| Tomcat | 8009 | AJP | ApacheとTomcat間の通信に使用(mod_jk使用時) |
| MySQL | 3306 | TCP | データベース接続に使用 |


4.2 システムアーキテクチャ図

以下は、これらのポートを使用したシステムの基本的なアーキテクチャ図です:

クライアント
    |
    | HTTP(80)/HTTPS(443)
    |
+---v-------------------+
|      Apache (80,443)  |
+---|-----------------|-+
    |
    | AJP(8009)
    |
+---v-------------------+
|     Tomcat (8009)     |
+---|-----------------|-+
    |
    | JDBC(3306)
    |
+---v-------------------+
|      MySQL (3306)     |
+-----------------------+

4.3 各サービスのポート設定

4.3.1 Apache

sudo vi /etc/apache2/ports.conf

以下の行があることを確認:

Listen 80
<IfModule ssl_module>
    Listen 443
</IfModule>

4.3.2 Tomcat

sudo vi /etc/tomcat9/server.xml

以下の行を確認または追加:

<Connector protocol="AJP/1.3"
           address="127.0.0.1"
           port="8009"
           redirectPort="8443" />

4.3.3 MySQL

sudo vi /etc/mysql/mysql.conf.d/mysqld.cnf

以下の行があることを確認:

port = 3306

4.4 Apache と Tomcat の連携設定

  1. mod_jkのインストール:

sudo apt install libapache2-mod-jk
  1. Apache設定ファイルの編集:

sudo vi /etc/apache2/sites-available/000-default.conf

以下を追加:

<VirtualHost *:80>
    ...
    JkMount /your_app_name/* worker1
    ...
</VirtualHost>
  1. workers.propertiesファイルの作成:

sudo vi /etc/apache2/workers.properties

以下の内容を追加:

worker.list=worker1
worker.worker1.type=ajp13
worker.worker1.host=localhost
worker.worker1.port=8009

演習

  1. 上記の設定を実際に行い、各サービス(Apache、Tomcat、MySQL)が正しいポートで動作していることを確認してください。

  2. `netstat` または `ss` コマンドを使用して、各ポートがリッスンしている状態を確認してください。

  3. ApacheとTomcatの連携が正しく機能しているか、テストWebアプリケーションを使用して確認してください。

第5章 アプリケーションサーバー(Tomcat)の導入とチューニング

5.1 Javaのインストール

Tomcatを実行するためには、まずJavaをインストールする必要があります。

# JDKのインストール
sudo apt update
sudo apt install default-jdk -y

# Javaバージョンの確認
java -version
javac -version

5.2 Tomcatのインストールと初期設定

Javaのインストールが完了したら、Tomcatをインストールします。

# Tomcatのインストール
sudo apt install tomcat9 -y

# Tomcatの起動と自動起動の設定
sudo systemctl start tomcat9
sudo systemctl enable tomcat9

# ステータスの確認
sudo systemctl status tomcat9

5.3 Tomcatの設定ファイル

Tomcatの主要な設定ファイルについて解説します。

  • `/etc/tomcat9/server.xml`: メインの設定ファイル

  • `/etc/tomcat9/web.xml`: Webアプリケーションのデフォルト設定

  • `/etc/tomcat9/context.xml`: アプリケーションコンテキストの設定

5.4 JVMチューニング

Tomcatのパフォーマンスは、Java Virtual Machine (JVM)の設定に大きく依存します。

# JAVA_OPTS設定の編集
sudo vi /etc/default/tomcat9

# 以下のような設定を追加または調整
JAVA_OPTS="-Xms512m -Xmx1024m -XX:MaxPermSize=256m"

5.5 Tomcatとの連携

ApacheとTomcatを連携させることで、静的コンテンツと動的コンテンツを効率的に処理できます。

# mod_jkのインストール
sudo apt install libapache2-mod-jk -y

# mod_jkの設定
sudo vi /etc/apache2/mods-available/jk.conf

# 以下の内容を追加
<IfModule jk_module>
    JkWorkersFile /etc/apache2/workers.properties
    JkLogFile /var/log/apache2/mod_jk.log
    JkLogLevel info
    JkLogStampFormat "[%a %b %d %H:%M:%S %Y]"
    JkOptions +ForwardKeySize +ForwardURICompat -ForwardDirectories
    JkRequestLogFormat "%w %V %T"
    JkMount /*.jsp worker1
    JkMount /servlet/* worker1
</IfModule>

# workers.propertiesの作成
sudo vi /etc/apache2/workers.properties

# 以下の内容を追加
worker.list=worker1
worker.worker1.type=ajp13
worker.worker1.host=localhost
worker.worker1.port=8009

5.6 負荷テストツール(Jmeter)の導入

アプリケーションサーバーのパフォーマンスを評価するために、Apache Jmeterを使用します。

# Jmeterのインストール
sudo apt update
sudo apt install jmeter -y

# Jmeterのバージョン確認
jmeter --version

5.7 Jmeterを使用した負荷テスト

Jmeterを使用して、Tomcatのパフォーマンスを測定します。

  1. テストプランの作成:

    • スレッドグループの追加

    • HTTPリクエストの設定

    • リスナーの追加(結果ツリー、集計レポートなど)

  2. テストの実行と結果の分析

演習

  1. OpenJDK 11をインストールし、バージョンを確認してください。

  2. Tomcat9をインストールし、デフォルトページが表示されることを確認してください。

  3. JVMのヒープサイズを1GBに設定し、Tomcatを再起動してください。

  4. ApacheとTomcatを連携させ、JSPファイルへのリクエストがTomcatで処理されることを確認してください。

  5. Jmeterをインストールし、以下の条件で負荷テストを実施してください:

    • 同時ユーザー数: 100

    • ランプアップ期間: 30秒

    • ループ回数: 10

  6. 負荷テストの結果を分析し、Tomcatの設定(server.xml, JVMオプション)を調整して、レスポンスタイムを10%以上改善してください。

5.8 パフォーマンスチューニングのベストプラクティス

これらの設定を適用し、再度Jmeterで負荷テストを行うことで、パフォーマンスの改善を確認できます。

第6章 データベース(MySQL)のセットアップとセキュリティ強化

6.1 MySQLのインストールと初期設定

MySQLは広く使用されているオープンソースのリレーショナルデータベース管理システムです。

# MySQLのインストール
sudo apt install mysql-server -y

# MySQLの起動と自動起動の設定
sudo systemctl start mysql
sudo systemctl enable mysql

# 初期セキュリティ設定
sudo mysql_secure_installation

6.2 ユーザーとデータベースの作成

アプリケーション用のデータベースとユーザーを作成します。

# MySQLにrootでログイン
sudo mysql

# データベースの作成
CREATE DATABASE myapp;

# ユーザーの作成と権限付与
CREATE USER 'myappuser'@'localhost' IDENTIFIED BY 'password';
GRANT ALL PRIVILEGES ON myapp.* TO 'myappuser'@'localhost';
FLUSH PRIVILEGES;

# 設定の確認
SHOW GRANTS FOR 'myappuser'@'localhost';

6.3 MySQLのパフォーマンスチューニング

MySQLの設定ファイル(my.cnf)を調整してパフォーマンスを最適化します。

# 設定ファイルの編集
sudo vi /etc/mysql/mysql.conf.d/mysqld.cnf

# 以下のような設定を追加または調整
innodb_buffer_pool_size = 1G
innodb_log_file_size = 256M
innodb_flush_log_at_trx_commit = 2
innodb_flush_method = O_DIRECT

# MySQLの再起動
sudo systemctl restart mysql

6.4 MySQLのバックアップと復元

定期的なバックアップは重要なタスクです。

# データベースのバックアップ
mysqldump -u root -p --all-databases > all_databases_backup.sql

# 特定のデータベースのバックアップ
mysqldump -u root -p myapp > myapp_backup.sql

# バックアップからの復元
mysql -u root -p myapp < myapp_backup.sql

演習

  1. MySQLをインストールし、セキュリティ設定を行ってください。

  2. アプリケーション用のデータベースとユーザーを作成してください。

  3. MySQLのパフォーマンス設定を調整し、mysqltunerを使用して設定を評価してください。

  4. データベースのバックアップを作成し、新しいデータベースに復元してください。

第7章 三層アーキテクチャの統合と動作確認

7.1 アプリケーションのデプロイ

Tomcatにサンプルアプリケーションをデプロイします。

# サンプルWARファイルのダウンロード
wget https://tomcat.apache.org/tomcat-9.0-doc/appdev/sample/sample.war

# Tomcatのwebappsディレクトリにコピー
sudo cp sample.war /var/lib/tomcat9/webapps/

# Tomcatの再起動
sudo systemctl restart tomcat9

7.2 接続テスト

各層の接続を確認します。

  1. ApacheからTomcatへの接続確認

  2. TomcatからMySQLへの接続確認

7.3 ログの確認と解析

各コンポーネントのログを確認し、問題がないか確認します。

# Apacheのログ
sudo tail -f /var/log/apache2/access.log
sudo tail -f /var/log/apache2/error.log

# Tomcatのログ
sudo tail -f /var/log/tomcat9/catalina.out

# MySQLのログ
sudo tail -f /var/log/mysql/error.log

演習

  1. サンプルJSPアプリケーションをTomcatにデプロイしてください。

  2. ApacheからTomcat、そしてMySQLまでの接続が正常に機能していることを確認してください。

  3. 各コンポーネントのログを分析し、潜在的な問題や最適化の余地を特定してください。

第8章 パフォーマンスチューニングとトラブルシューティング

8.1 システムリソースの監視

# topコマンドでリソース使用状況を確認
top

# ディスクI/Oの監視
iostat -x 1

# ネットワークトラフィックの監視
iftop

8.2 ボトルネックの特定と解決

よくあるボトルネックとその解決方法:

  1. CPU使用率が高い

    • プロセスの優先度調整

    • コード最適化

  2. メモリ不足

    • スワップ使用の最小化

    • メモリリークの特定と修正

  3. ディスクI/O

    • SSDへの移行

    • RAID構成の最適化

  4. ネットワーク遅延

    • CDNの利用

    • ネットワーク機器のアップグレード

8.3 総合的な負荷テストと分析

第4章で導入したApache JMeterを使用して、システム全体の負荷テストを実施します。

  1. テストシナリオの作成

    • ユーザー登録

    • ログイン

    • 商品検索

    • 商品詳細表示

    • 注文処理

  2. 段階的な負荷増加テスト

    • 同時ユーザー数: 10 → 50 → 100 → 500

    • 各段階で5分間の持続負荷

  3. 結果の分析

    • レスポンスタイム

    • スループット

    • エラー率

    • サーバーリソース使用率(CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワーク)

  4. ボトルネックの特定

    • 各コンポーネント(Apache、Tomcat、MySQL)のパフォーマンス指標を比較

    • 最も負荷が高いコンポーネントを特定

  5. 最適化

    • 特定されたボトルネックに基づいて、該当コンポーネントの設定を調整

    • Apache: MPM設定、KeepAlive設定

    • Tomcat: スレッドプール設定、JVMメモリ設定

    • MySQL: クエリキャッシュ、インデックス最適化

  6. 再テストと結果比較

    • 最適化後に同じテストシナリオを実行

    • 最適化前後のパフォーマンスを比較し、改善度を評価

演習

  1. 上記の手順に従って、総合的な負荷テストを実施してください。

  2. テスト結果を分析し、主要なボトルネックを3つ以上特定してください。

  3. 特定したボトルネックに対する最適化案を提案し、実装してください。

  4. 最適化前後のパフォーマンスを比較し、改善率を計算してください。

  5. 負荷テストと最適化のプロセスをレポートにまとめ、今後の改善点を提案してください。

第9章 基本的なセキュリティ設定

本章では、Webインフラにおける基本的なセキュリティ設定として、ファイアウォールの設定と自動更新の設定に焦点を当てます。

9.1 ファイアウォールの設定

Ubuntu では、UFW (Uncomplicated Firewall) を使用してファイアウォールを簡単に設定できます。

# UFWのインストール(通常はデフォルトでインストールされています)
sudo apt install ufw

# UFWの有効化
sudo ufw enable

# デフォルトポリシーの設定
sudo ufw default deny incoming
sudo ufw default allow outgoing

# SSHを許可(必要に応じてポート番号を変更)
sudo ufw allow 22/tcp

# HTTPとHTTPSを許可
sudo ufw allow 80/tcp
sudo ufw allow 443/tcp

# ファイアウォールのステータス確認
sudo ufw status verbose

注意: SSHを許可する前にUFWを有効化すると、現在のSSH接続が切断される可能性があります。SSHを許可してからUFWを有効化するようにしてください。

9.2 自動更新の設定

Ubuntu の unattended-upgrades パッケージを使用して、システムの自動更新を設定します。

# unattended-upgradesのインストール
sudo apt install unattended-upgrades

# 自動更新の設定
sudo dpkg-reconfigure --priority=low unattended-upgrades

設定ファイルをより詳細に調整したい場合は、以下のファイルを編集します:

sudo vi /etc/apt/apt.conf.d/50unattended-upgrades

主な設定オプション:

  • `Unattended-Upgrade::Allowed-Origins`: 更新を許可するソースの指定

  • `Unattended-Upgrade::Package-Blacklist`: 自動更新しないパッケージの指定

  • `Unattended-Upgrade::AutoFixInterruptedDpkg`: 中断されたアップグレードの自動修復

  • `Unattended-Upgrade::MinimalSteps`: 最小ステップでの更新実行

自動更新の動作確認:

sudo unattended-upgrades --dry-run --debug

演習

  1. UFWを使用して、以下の条件でファイアウォールを設定してください:

    • SSHは特定のIPアドレス範囲からのみ許可

    • HTTP, HTTPSは全てのIPアドレスから許可

    • その他全ての受信トラフィックをブロック

  2. unattended-upgradesを設定し、以下の条件を満たすようにしてください:

    • セキュリティアップデートのみを自動的にインストール

    • アップデート後に自動的に再起動しない

    • 更新ログを特定のファイルに出力する

  3. 設定後、ファイアウォールのルールと自動更新の設定を確認し、レポートを作成してください。

これらの基本的なセキュリティ設定により、システムの安全性が向上し、最新のセキュリティパッチが適用されるようになります。ただし、これらは包括的なセキュリティ対策の一部に過ぎません。実際の運用環境では、さらに高度なセキュリティ対策が必要となる場合があります。

第10章 監視とログ管理の実装

この章では、システムの監視とログ管理の重要性について学び、実際に監視ツールとログ管理システムを実装します。

10.1 Prometheus + Grafanaによるシステム監視

  1. Prometheusのインストールと設定

  2. Grafanaのインストールとダッシュボードの作成

  3. アラートルールの設定

10.2 ELKスタックによるログ管理

  1. Elasticsearchのインストールと設定

  2. Logstashの設定とログの収集

  3. Kibanaを使用したログの可視化と分析

10.3 アラート設定

  1. Prometheusアラートマネージャーの設定

  2. Slackやメールへのアラート通知の実装

演習

  1. Prometheus + Grafanaを使用して、システムリソース(CPU、メモリ、ディスク、ネットワーク)の監視ダッシュボードを作成してください。

  2. ELKスタックを使用して、Apache、Tomcat、MySQLのログを集中管理するシステムを構築してください。

  3. 特定の条件(例:高CPU使用率、エラーログの急増)でアラートが発生するように設定し、テストしてください。

第11章 Infrastructure as Codeへの発展

この章では、Infrastructure as Code (IaC) の概念と利点を学び、実際にAnsibleを使用してインフラストラクチャの自動化を行います。

11.1 Ansibleの基本

  1. Ansibleのインストールと設定

  2. インベントリファイルの作成

  3. 基本的なPlaybookの作成と実行

11.2 Playbookを使用したWebサーバーの自動構築

  1. Apache、Tomcat、MySQLのインストールと設定を自動化するPlaybookの作成

  2. セキュリティ設定の自動化

11.3 継続的インフラストラクチャ(CI for Infrastructure)

  1. GitLabを使用したPlaybookのバージョン管理

  2. CI/CDパイプラインの構築

演習

  1. これまでの章で手動で行った設定を自動化するAnsible Playbookを作成してください。

  2. GitLabを使用してPlaybookのバージョン管理を行い、変更をプッシュした際に自動的にテスト環境に適用されるCI/CDパイプラインを構築してください。

  3. 作成したPlaybookを使用して、新しい仮想マシンに完全な環境を自動でセットアップし、動作確認を行ってください。

結論

本書を通じて、Webインフラの構築からチューニング、セキュリティ強化、監視、そして自動化まで、インフラエンジニアとして必要な幅広いスキルを学びました。これらの知識とスキルを実際のプロジェクトに適用し、継続的に学習と改善を重ねることで、より強固で効率的なWebインフラを構築・運用できるようになるでしょう。

技術の進化は速いため、常に新しい技術やベストプラクティスをキャッチアップし、adaptableな姿勢を持ち続けることが重要です。インフラエンジニアとしての旅は、ここからが本当の始まりです。頑張ってください!

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