森山未來
以前から存じていました。シャープでアンニュイな雰囲気を纏う彼は俗に言う実力派俳優なんだろうという認識でした。しかしここに来て、自分の中の尺度が変わって未来さんのことをより知りました。俳優とダンサーの大きな両輪を駆る、とんでもない人でした。
お母様がダンススタジオを運営されていて、その影響もあってか5歳からダンスを学び始め、15歳の頃に本格的に舞台デビューしたそうです。そこからどんどんと俳優の道へ。その後は多くの人が知るところかと思います。ダンサーとしても東京オリンピックで舞われています。なんというか、経歴だけで人を見るのは愚者であるのを承知の上で、圧倒されます。彼のしていることは私のロールモデルとも言えることですが、今から私が彼のいる場所へ行くことは難しいと感じざるを得ません。それほど俳優としてもダンサーとしても大成しているんです。やるせなさと羨望と希望で織りなすルサンチマン的感情を抱きつつ、どうにもやるしかないような気もしてくるんです。
そして目を惹かれたのは彼のプロフィールです。「関係値から立ち上がる身体的表現」、「領域横断」、「ポスト舞踏派」のようにとても"アーティスト"的だなと感じたんです。もちろん俳優という職業が表現者であることに疑いの余地はありませんが、一般にも知られていてポップカルチャーに登場している方がこのようなプロフィールを載せていることに感動に似た気持ちを覚えました。以前テレビで携帯を持っていないと言っていて、(持っていることに起因する出来事による)「時間がもったいない」から持たないそう。役作りでも、ボクサーならボクサーと同じ食生活を徹底したり、無人島が舞台なら撮影前に単身無人島で過ごしたり。自分をしっかり持って貫くその姿勢はめちゃくちゃかっこいいですし、めちゃくちゃ尊敬します。
憧れの人にはなれなくても、憧れられるような人になることはできる。そもそも他人を気にしていたらそんな人になれないと思いますが。自分が持っていること、やりたいこと、武器と言えるものを使ってグローバルに縛り付けられた現代を生き抜いていきたいと、未来さんはそう思わせてくれる兄貴です。