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mizutama_blue
万年筆
私の彼は
万年筆が好き
物欲があまり無く
ものを欲しがらない彼だけれど
万年筆は
欲しいと言う
ときどき
美しい文字の
お手紙をくれる
いつか
プレゼントしたいなと
ずっと
思ってはいたけれど
好みや
書き味もあり
なかなか
難しい
ふたりで
ヴェニスに行ったとき
私は
旅の絵日記を
書くことがあるから
白地のノートを
集めていて
細い
路地を
歩いていると
カーニバル用なのか
革の仮面や
色とりどりの革のカバーをつけた
閉じたノートの側面に
伝統的な手法のマーブル模様が入った
素敵なノートが並ぶお店に
ふと出会った
そこで
美しく深い黄色い樹脂の胴体をした
万年筆を見た
彼に
万年筆をプレゼントしたいから
選んで
と
伝えると
本当にと
喜んで
選び出した
どれが良いかなと
聞く彼に
黄色のを含め
いくつか
候補を提示した
私が
エメラルドグリーンの革に
青や黄色のマーブル模様が入った
ノートを選んでいると
彼が
これに決めた
と
黄色いこを
手にしていた
私がプレゼントしたかった
美しいこを
彼が選んでいたことに
喜びを感じながら
私は
彼に
万年筆を
プレゼントした
ホテルに帰るまで
待ちきれずに
夕食のレストランで
万年筆の書き味を試す彼は
とても
可愛くて
大きな手から
紡ぎ出される文字は
美しくセクシー
私が彼の手によって
様々な姿態を取らされ
嬌声をあげるように
濃いブルーのインクが
紙のうえに
ラインを描き
言葉を奏でる
はやく
シーツの間に
くるまりたい
まだ
こんな時間なのに