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2本の足で立つ
この数週間で母の介護のフェーズが変わった。
認知機能が衰えても、身体はしっかりとしていたのだが、風邪をきっかけにみるみると衰えてしまった。それはもう坂を転げ落ちるようなかんじで。
数日前にできたことが、今日はできない。
日に日にできないことが増えていく。
これまで杖も使わずに歩いていたのに、2本の足で立つことが、だんだん大変になっていく。
それでも生きている限り、食べなければならないし、食べたら出さなければならない。動けなくなっても、身体は決して休んでいるわけではない。
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いつも母と散歩した短い道のりを1人で歩いた。
いつのまにか道端の花も景色も変わっていた。何がおきてもおきなくても、季節は移りすぎていく。
街路樹が、しっかりと大地に根を下ろして立っている姿が、ものすごく力強くみえる。
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ついこの前、うん十年ぶりに粘土を触る機会があった。
粘土で動きのある人の形を作ろうと思ったら、これがとても難しかった。
何が難しいって、立たせることが難しいのだ。
立体を作ることに慣れておらず、なんだかペラペラした薄いものになる。作ってもグニャグニャと立たずに倒れてしまう。
立つ力の弱くなってきた母を思い出した。
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植木鉢の花でさえも、しっかりと自らを立たせている。土に根を張り、茎をまっすぐに天に伸ばしている。
この大地に、2本の足で立つことは、実はすごいことなのだと気づく。
この世に生まれ落ち、グニャグニャだった私は、どうやって1人で立ち上がり、歩くことができるようになったのだろう。
立つことは、大地と繋がっていることなのだ。
そう考えると母は、少しずつ大地との繋がりから離れていっているのかもしれない。自分の足で立つことから、少しずつ解放されているのかもしれない。
これからは天との繋がりが強くなっていくのかな。
ずっと2本の足で立ってきたんだもん。
もう力を抜いてもいいよね。
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