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車椅子でお出かけデビュー

きのうは急遽、母の通院付き添いへ。

通院ではあるが、母が施設に移ってから初めてのお出かけ。私も車椅子の母になってからは、初めての外出付き添いだった。

朝から冷たい大雨で、少し神さまを恨んだが、介護タクシーのお兄さんが優しくてホッとする。神。
母の介護用リクライニングチェアを乗せていただき、私は母の横に座ってレッツゴー。

「お母さん、久しぶりに外出たね!大雨だよー」と母に声をかける。

母は不安そうに「どこ行くの?」「大丈夫?」ばかり繰り返す。私は「病院だよ」「大丈夫だよ」と繰り返す。同じやりとりを繰り返しているうちに病院に着いた。

病院の入口で介護タクシーのお兄さんが行ってしまったら、なんだか急に不安になる自分がいた。

病院の中で、初めて車椅子を押して院内をさまよった。子どものいない私はベビーカーも押した経験がないので本当に初体験。大きな母を運ぶのはなんともいえない気持ちだった。
母が何か言って応えても顔が見えないのが不便。赤ちゃんがママのほうを向いているベビーカーのことを思い出した。でも想像してみて、あればやっぱり小さな赤ちゃんだからよいのだろうなと思ったり。

母が入院していた病院なのに、外来は初めてで、何かと記入する手続きが多い。ようやく受付の手続きをしてヤレヤレ。

その後、長い長い待ち時間を過ごした。
あれこれ母に話しかけてみるけれど、まともな会話にはならないことが多い。
けれど赤ちゃんがいるのを見つけて「みて、あの小さな手」と目を細めていた。赤ちゃんもかわいかったが、母の反応がうれしかった。
院内の掲示物の文字を何度も何度も読み上げたり「頭がかゆい」と言うので、ひたすら頭をかいてあげたり。
待ちくたびれて、母は「来るんじゃなかった」と言い出した。私も「ほんとだね、来ない方がよかったね」とため息をついた。

その後、やっと呼ばれて検査、また待って診察、その後移動して待って診察、再び待って検査と、結局、半日以上の時間がかかってしまった。
母は座ったままとはいえ、介助されながら検査もよく頑張ってくれた。お世話してくれた看護師さん方も皆あたたかく、優しい笑顔で対応してくれた。天使。
体調が落ち着いていたのでなんとかなったが、もしも具合が悪い時はどうなるのかな、と思ったりもした。はーっ。

最後に会計を待っていたら、母が急に「すまないね。こんなに面倒かけて」「お金あるの?」とか言う。こんなふうに、たまに昔の母に戻る瞬間がある。わかっていないようでわかっているのかな。いったりきたりなのかな。

帰りも朝と同じ介護タクシーのお兄さんが来てくれてホッとした。

母は車に乗った後も「タクシー代あるの?」と心配している。「大丈夫だよ」とこたえながら、胸がきゅんとなる。どんなになっても、いつまでたっても、私は幼い娘なのだな。 

車が通りへ出たら、大雨が止んで少し明るくなっていた。「お母さん、晴れたね。よかったね」と言ったら「どしゃぶりだった」と朝のことを覚えていたよう。 

母と外へ出かけたこと。会話ができたこと。一緒に過ごせたこと。嬉しかった。

2人ともよく頑張った。
車椅子でお出かけデビュー、お疲れさま。

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