【感想】YPAM2024 ミーティング・ポイント1 12/5(木)

公共劇場におけるダンスのつくり手支援(劇場、音楽堂等連絡協議会 ダンスワーキンググループ)

請川幸子/彩の国さいたま芸術劇場 事業部参事
小倉由佳子/ロームシアター京都 プログラムディレクター
小野晋司/横浜赤レンガ倉庫1号館 館長

今年始まった彩芸ブロッサムのお話。
https://www.saf.or.jp/arthall/information/detail/101620/

「Noismのような劇場と舞踊団という形がもっと増えると思っていた」という言葉、SPACでも全く同じことを聞いたので、この二つの在り方について、なんだか苦しい気持ちになった。と同時に、一般的になり得ないこの二つの劇場を研究する意義ってあるのだろうかと思ってしまって、ますます苦しい。

アーティストと劇場の対立が話題になったが、劇場はアーティストと対立したいわけではなく、地域とアーティストの間に挟まれてしまうのだろうと思った。だから、アーティストが「その自治体で創作活動を行う意義」「公金を投入される意味」に向き合う必要があるのではないだろうか。助成金はもっと可能性が広がるべきだし、アーティストがやりたいことをやるべきだけれど、それがどのような意義を市民にもたらすか、日本のような国では発信しなければならないし、そのためにアーティストと劇場は一枚岩になるべきではないか。


地域コミュニティと、伝統やコンテンポラリーの関わりについて〜ラオスとカンボジアの実践から〜

日本財団が、YPAMと協力して二つのプロジェクトを行っている。

①5名のアーティストのシンガポール派遣(昨日の発表)
②10名のアーティストを東南アジアから招聘

10名の中から、2名による発表。

ソピアック・ソウンさん


Khmer Art Action (KAA)創設者、ディレクター
https://www.khmerartaction.org

カンボジアのローカルな芸術活動をまとめるような活動が、KAAらしい。
クメール・ルージュを繰り返さないためのアートの活動。アーティストとして幾つかのフェスティバルに招聘されるなど、劇場が発達していないカンボジアでの意義ある取り組み。自らの庭をステージにしたりといった、劇場ができていく過程のような活動を一人のアーティストが行っているということがすごい。

ただ、政府からの検閲によって上演ができないこともあるそう。警察に必ず見守られながらの公演なんて日本では信じられないが、それが日常とのこと。
改めてアートの視点から国を見つめたときに、「政治」の違いによる国ごとの違いに慄きそうになる。

ただ、素晴らしい公演には1000名以上が集まるというのはやはり舞台芸術の力を感じた。
EUからの支援で学校公演を行っているという話も気になった。

ウンラ・パーウドム(KAKA)さん


Fanglao Studio オーナー、 ディレクター

2013年に大きな取り組みを行う。
・共同設立したFanglao Studioをダンスカンパニーとスタジオに分ける
・ラオス・ユース・フェスティバル
  青年を組織しフェスティバルに
・シアターも確立 

ラオスのコンテンポラリーダンスは、伝統的なものがコンテンポラリーな動きになっていくと言った感じ。2010年には、初のコンテンポラリーダンスフェスティバルを開催。ローカルなコミュニティと繋がることの力を感じたとのこと。

F/T19は彼のソロ作品の上演があって、とても嬉しかったとのこと。
https://www.festival-tokyo.jp/media/ft19/fanglao.html

どうやって継続して、橋渡しを続けていけるのか?が課題とのこと。KEXとかはそれに協力しているということなのかな。


インディペンデント・フェスティバル、プラットフォームについて 〜フィリピンとタイの実践から〜

先述の日本財団が招聘する10名の海外アーティストのうちの3名からのお話。

登壇者
・マルコ・ヴィアナ フィリピン
The Virgin Labfest 共同ディレクター/Tanghalang Pilipino アソシエイト・アーティスティックディレクター
・トンチャイ・ピマーパンシー タイ
H0m0Haus フェスティバル プロデューサー/PainKiller ディレクター
・ワリッサラー・ボーカード タイ
Bangkok International Performing Arts Meeting (BIPAM) エグゼクティブディレクター/Bangkok International Children's Theatre Festival (BICT) プロジェクトマネージャー

マルコ・ヴィアナさん


The Virgin Labfest 共同ディレクター/Tanghalang Pilipino アソシエイト・アーティスティックディレクター。

The Virgin Labfestには「我々の時代を定義し、そこに抵抗する」というミッションがあるそう。多様な声を届ける場であるとともに、フィリピンのアートの活動をまとめるような意味も持っていそう。
上演作品については、「フィリピン語の翻訳を含む」という条件とともに、一幕物の作品に上演しているとのこと。これにどんな意味があるのか聞けばよかった!
公式の記録を残すというところについても拘っているそうで、日本のフェスティバルに対する私の問題意識とも繋がってくるところ。
チケットは購入しやすい価格に抑える、というのもポイントだろう。

ワリッサラー・ボーカードさん


Bangkok International Performing Arts Meeting (BIPAM) エグゼクティブディレクター/Bangkok International Children's Theatre Festival (BICT) プロジェクトマネージャー。

BIPAMは5人の女性がコアメンバーとのことで、芸術分野は女性の進出が早いのかもしれない。国の状況が分からないのでなんとも言えないが、アーティストというものの立場が低いから男性はなかなか進出できない、みたいな問題を逆にはらんでいたりもするのか?
「東南アジアのパフォーマンスアートの担い手、集合場所」というキーワードも出てきた。日本の演劇祭にはこのような意識があるところがあるだろうか。

トンチャイ・ピマーパンシーさん


H0m0Haus フェスティバル プロデューサー/PainKiller ディレクター。

パフォーミングアートと市民・社会構造というものを考える場としてのフェスティバルを行っているとのこと。そうなったときに、やはりLGBTQの問題へのアプローチというのは大事になってくるのだろう。

それぞれのフェスティバルの課題について


・まずは、台湾でもフィリピンでもアートマネジメント教育が受けられる機会が少ないこと。日本の「雇用がない」問題もあるけれど、まずは学べる場があることは重要なのだろうと思う。
・次に、人的・金銭的リソースの問題。人的リソースはアートマネジメント教育とも関係しているだろう。どのフェスティバルも、やりたいことがありながら資金がなくてできないこともあったとのこと。リソース不足でビエンナーレになったBIPAMは、持続可能性についても模索中。日本のフェスティバルとの協働の中で解決できる部分があるのかもしれないと思った。


関心あるところまとめ


・F/T、KEX、YPAMのアジアとの協働について。
・EUからアジアの文化活動への支援とは?

おまけ
セーファースペースという言葉について考えるとき、自由と隣り合わせのアートの場は、少なからずルールや気遣いが必要なセーファースペースからは程遠いのではないかと思っている。目指すのはとても素晴らしいことだけど。自由と安全について、アジアのアーティストの検閲のお話を聞きながら、もっと深く考えるべきだろうと思った。
安易に「アジアとの協働」と書きまくってしまったが、私たち日本人はもっと戦前や戦時中の歴史、あるいは今の経済構造について学ばなければならないだろう。そうでなければ彼らとの間での「セーファースペース」構築はありえないとも思う。


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