伝説の詩人歌手『螢』さん。
今からおよそ20年前、1999年頃、音楽雑誌『音楽と人』に、螢、と名乗る少女が載った。
13歳、インディーズデビューライブを終えた
ばかりでの取材だった。
肩で揃えられた、真っ黒な髪、
大きな澄んだ瞳。
街を歩いている所をスカウトされ、モデルをしていたというだけあり、
整った、人を惹きつける顔立ちだった。
神奈川県出身、という事しか分からない、
最後まで、そして現在も、本名は分からない。
そんな彼女が、歌手デビューしたきっかけは、ノートに書き溜めた言葉を、伊織さん(プロデューサー)に見せた事だという。
そこには、独特の言葉遣いで、彼女の
心情が綴られていた。
背景には、集団生活に馴染めず、学校で受けていたひどいいじめと、家庭内での問題がある。
取材中、彼女は、
デビューライブは、MDが壊れるまで練習したこと、
自分の声が好きではないこと(声もいじめの対象だった)、
そして、最後に、好奇心やお金目当てで
近寄ってきた人は、その目を見れば分かる、
と話した。
嫌なことが、いっぱいあったから。
言葉を書き綴った経緯を、そう語る彼女の
音楽に触れ、それを感じた。
インディーズで発売したアルバム『ガラクタ』が、異例のヒット、また、ライブ活動も継続して行った。
ライブハウスではなく、芝居小屋で行う、
独特のスタイル。
真っ暗な中、彼女だけが、スポットライトを浴びて、浮かび上がる。
それでも、毎回、チケットは発売と同時に瞬殺、という状態だった。
そして、満を持して、14歳の時にシングル『ハリガネ』でメジャーデビュー。
メジャーレーベルでは、シングル数枚と、アルバム『わにがらヘビ』、更に、シングルのMV集『マーブルビニィル』を発表。
特に、いじめについて書かれた詞には、
その小さな体に、どれほどの痛みを
抱えているのか、と、こちらが苦しくなった。
彼女の詞は、カタカナと造語が多く、
聞く人を選ぶ。
しかし、一度でも、いじめに遭ったことが
ある方なら、しっくりくると思う。
私が、そのひとりだ。
私は11年間、学校でいじめられていた。
だから、何かに引き寄せられるように、
彼女の音楽に、詞に、反応したのだろう。
朗読+歌、という手法を使い、
囁くように歌われるそれは、
少しずつだが、世間に浸透していった。
映画『東京マリーゴールド』に、
本人役で出演したり、
テレビ、ラジオなどで、彼女の歌が
取り上げられることが増えていった。
彼女自身、ラジオ番組を持った。
しかし、16歳の時、メジャーレーベルとの
契約が切れ、インディーズで活動することになる。
螢舎、という、小さな会社を作り、
そこで音楽を制作していくことを選んだ。
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